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2012世界バレエフェスティバル「ドン・キホーテ」:バレエを通して伝わったもの

7月29日、3年に一度のバレエの祭典、世界バレエフェスティバルが始まりました。
幕開けを飾ったのは、ロホ&マックレーの「ドン・キホーテ」。
本当に、祭りの開幕にふさわしい、思いのこもった、素晴らしい舞台でした。
……なんて言うと、めちゃめちゃありきたりな感じがするんですが、本当に未だに信じられないけど、バレエ以上の何かを見たような気分です。

なんて幸せやハッピーが、ベッタベタな言い方すれば「アイ」がいっぱいいっぱいに満ち溢れた舞台なんだろう、と。
いくらロホ&マックレーとはいえ、まさか東バの舞台でこんな思いを経験するとは予想だにしていなかった。
ホントに、信じられない。

ロホもマックレーも、舞台上のすべてのダンサーも観客もが一体となって一つの世界を作り上げる、その色に満ち溢れる。
舞台の舞台たる、舞台だからこその感動の、究極の形の一つだったんじゃなかろうか。
今日の舞台はそれくらい言います。
だって、いくらドン・キホーテだからって、最後は涙腺崩壊なんてないわ。
まさかドンキで泣くなんて、思っていないよ、いくら私がドンキが好きだって…。

本当に、この舞台は心底行ってよかったと思いますよ。
多分生涯忘れられない舞台の一つになったんじゃなかろうか。

思えば今日は最初から「あれれれ」という感じでした。
いきなりバジルがキホーテじいさんの髭剃りしてる。
東バ、演出変えた??
バルセロナの街はいつにも増して活気があり、なんかすごく気合の入ったオーラが充満している。
もうダンサーたちの一体感バリバリで、この祭典の初日にかける意気込みのようなものがヒシヒシと伝わってきます。
しかも今日のオケはパーカスがやたらと元気で、ただでさえノリのいい、ストーリー感抜群の音楽が一層ノリノリで響いてくる。

さらに、キャストを見るとドン・キホーテに高岸さん、サンチョ・パンサに高橋君、ガマーシュに松下君、エスパーダに木村さんと、結構な名前が並んでいる。

またこれがそれぞれいい。

幕が開いた瞬間、バジルに髭そってもらって、キトリを姫と懸想する高岸キホーテは、えっ!?と思うほどに表情豊かで、終始驚くほどに存在感がある。
やっぱり高岸さんて、東バの親分か。
すごく締まるんだ、立ってるだけで。
びっくりだ!

ロホはさすがの貫禄で、愛らしいしかわいらしいキトリだし、クールなようで表情豊かなマックレーは小粋で軽快な元気な兄ちゃんだ。

松下ガマーシュはチャーミングだし、高橋サンチョ・パンサはどんどんラブリーになっていく。
というより松下ガマーシュも高橋サンチョも、すごく自身でキャラを解釈し、掘り下げているのがよくわかる。
藁人形祭りのシーンで宙に飛ばされるサンチョ・パンサが1度目キャー、2度めヒィ~~、3度目グッタリ…なんてもう、細かいでしょ、芸が。
ガマーシュも結婚式の時はバジルのヴァリでそっぽ向いちゃうし、キトリのヴァリではスタンディング・オベーションしてたりで、「彼なりに、本気でキトリが好きだったんだなぁ…」なんてほろ苦いものを感じたりもしましたよ。

登場人物が隅々までキラキラしているからこそ、舞台は一層活気とエネルギーと、「人」の息吹が感じられるようになるんだなぁと、改めて思いました。

また今回はいつもの東バのドンキと微妙に違うなぁと思い、幕間に慌ててプログラムを確認したらワシーリエフ版とのこと。
大きく違うのは、冒頭バジル&キトリとキホーテのシーンがあり、1幕は一気に森のシーンまで、2幕は狂言自殺と結婚式なのでスピーディー。
エスメラルダ&エスパーダが最後まで登場する、いわば「2つのカップルの物語」でもあり、酒場では2度目の闘牛士の群舞あり。
結婚式のシーンではキューピッドの群れまで登場する。

このキューピッドの群れがまたすごく効果的で、いかに舞台上の世界が祝福に満ち、アイにあふれているか…って象徴みたいで、本当に愛おしかった。

寄り添い合って立つこと。
互いにそこにいること。
ほろ苦いことだってあるけど、でもアナタも仲間だよ。
そして紡ぎ出される、ささやかだけど、大いなるハッピー。
最後はそんな思いが満ち満ちたて、シアワセ気分で一杯になりましたよ。

そしてプロの技、プロとはこれだ!これがプロだよ!と言わんばかりのロホ&マックレーのパフォーマンスも素晴らしい。
木村さんのエスパーダもたっぷり見られて大満足。
闘牛士がいるだけで萌えスイッチが全開になる自分としてはもう、3幕でも闘牛士の踊りがあって、これまた悦でした。

こんなに初日に盛り上がって、明日のオシポワ&ワシーリエフはどうなるんだ、と思ってもしまいますが、でも明日は明日でやはり楽しみなのであります。

というわけで、のっけからスゴイもの見てしまった、世界バレエフェスティバル。
今回はBプロが見られないのですが、ABプロはTV放送もされるとかで、超ラッキーです。
というわけで。
8月16日まで続く熱い夏の始まりです。
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by kababon_s | 2012-07-29 23:45 | Ballet

新国立劇場バレエ「マノン」:“行間”の見えるドラマに拍手を

7月1日の新国立劇場バレエ「マノン」を観てきました。
今回の主演は小野&福岡組で、このペアの演技が素晴らしかったです。
小野さんの化けっぷりがスゴイ!
清楚なイメージのある彼女ですが、小悪魔マノンを見事に表現してくれた。
小野絢子…こわい子…!

ただ、舞台全体の印象としては総じて前回のヒューストン組より一層コンパクトな感じがしないでもないけど、やはり見る私の方も2度目ということもあってか、細部の、後ろで踊ってる方々の動きなんかにも目がいき、すごく密度の濃い時間を過ごさせてもらったと思います。
終わったときは頭が酸欠でクラクラでした。

で、小野さんのマノンですが。
なんか私は前回のヒューストン組よりも、小野マノンの方に魔性というのか、黒い小悪魔的要素を感じました。
なんというか、小野さんのマノンには、彼女なりの、強い意志があるんですよね。
サラ・ウェッブのマノンには強い意志はあまり感じられず、白いままに流されて気がついたら沼地でした、という感じがしたのですが、小野さんは自らの意志で選び、選択し、その時を謳歌し、あるいは享受して、女として目覚め、駆け抜け、その挙げ句が沼地…というのかなぁ。

1幕のデ・グリューとの駆け落ちは、修道院に行くより、その年頃の若い娘らしい情熱的な恋愛の方に魅力を感じたから、というのか。
そして金のない若い男よりも、自分にメロメロな、なんでも与えてくれそうな富豪に傾いていく。
自分の魅力が金になる、ということにも気づいたのかもしれないです。

2幕の娼館パーティーも、彼女はおとなしくムッシューGMに従っているのではなく、その時言い寄ってくる男たちを相手にしながら、享楽的に日々を楽しんでいたんだろうなぁ、という“行間”がかいま見える。
そしてなーんとなく、そんな日々もマンネリ化し、飽きを感じ始めていたところにデ・グリューと再び出会う。
デ・グリューの下心もなにもない、純粋で一途な想いがその時のマノンには却って久々に新鮮に感じられ、また駆け落ち…って感じでしょうか。

その挙げ句、兄はボコられ死亡し自身は流刑地送り。

だからこそ、3幕の波止場から沼地までがとっても濃厚で熱かったのかも。
2幕までのマノンだったら、鬼畜看守でも権力者であれば、なにかしら従い、自分の魅力を駆使して巧みに立ち回ろうとしたかもしれない。

でも小野マノンはひたすらに拒否する。
彼女がデ・グリューへの想いに本当に気づき、心から彼だけを慕っていたのは3幕からだったからこそ、あの沼地のパドドゥが一層切なく迫ってきたのかもしれない。
小野マノンに「マノン」という人間としての意志やメリハリをすごく感じられ、また舞台上では踊られていないけれど、見えない部分――つまり行間が想像あるいは妄想できるようなマノンだっただけに、全体的にすごくお話の説得力があったですよ。

菅野レスコーとマノンの無邪気な(?)画策兄妹っぷりもよかったです。
今回の貝川GMは気の弱そうなおやじで(やはり前回のマイレンGMのインパクトはすごすぎた!)、デ・グリューのいぬ間に、おやじから金を巻き上げようとする兄妹がなんだかナイスコンビネーション。
なもんだから、殺されたレスコーにすがるマノン、迫力ありました。
マノンは兄ちゃんが大好きだったのかなぁなんて、思っちゃいましたね。
昔は仲の良い兄弟だったのかも…。

福岡デ・グリューは、2幕までは「こんなもんかなぁ~」って感じっだったのですよね、正直なとこ。
彼は体格がしっかりしてて、繊細というより、体育会系の雰囲気があって、なんというか、変な言い方ですが、王子というより戦士系?(←RPG的に)

でも3幕で原題の「騎士デ・グリュー」らしい、騎士(ナイト)っぷりが大炸裂。
それまで何もできずに、ただじっと熱い思いを抑え込んでいた溜めが大爆発したって感じでしょうか。

大事そうに、慈しむように、本当にとうとう手にした宝物のようにマノンの肩を抱く波止場の福岡デ・グリュー。
ここからもうもう目頭が熱くなりましたわ。
つい看守を手に掛けてしまい「ああああぁぁぁぁ~っ!」と頭を抱える潔癖さも、これが福岡デ・グリューなんだなぁと。
その熱さと潔癖さが最高潮のままに、沼地へ繋がる。
沼地のパドドゥは本当に締め付けられるような切ない思いがひしひしと伝わって来ましたよ。
またあの大技を大技と思わせない、なめらかさは本当に見事でしたし、ラストシーンはもう、哀れで切なくて…。
あああ、やっぱりデ・グリュー、マノンを失ったルイジアナで、あのあとどうなってしまったんだろう…(爆涙)

娼館のお客にマイレンや厚地さんがいるってのがなんとも豪華過ぎですが、マイレンがまた好色なエロおやじで、つい目がいってしまう(笑)
この人はどんな踊りでもどんな役でも、本当に全力投球で、濃ゆくていいなぁ!
舞台上のマイレンを見るのは、本当に楽しいです。
若い3人のお客の真ん中で踊ってる人も、名前はわからないのですが、なんか今回すごく目を引かれたなぁ。
誰かしら。

今回はまた舞台の後ろの方で踊ってる民衆(笑)の方々も結構注意して観てたのですが、乞食リーダーの八幡君にレスコーが何かとお金を撒いてるんですね。
きっとマノンとデ・グリューの駆け落ち先を捜し当てたのは、あの乞食のリーダーだったに違いない、と思ったりもしましたわ。

とにかく、いろいろ濃かった新国の「マノン」。
今日、会場に行ったら、昇格情報が出てまして、福岡さん、八幡さんがプリンシパルに、厚地さん、菅野さん、福田さん、米沢唯ちゃんがファースト・ソリストに昇格だそうで。
おめでとうございます。
今日の「マノン」で今シーズンの新国の上演も終了ですが、また来シーズンが楽しみです。
ビントレーさん、続けてくれればよかったのになぁ…。
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by kababon_s | 2012-07-02 01:09 | 新国立劇場バレエ