ロシア美術館展(2):最後の、そしてひょっとしたら永遠の皇帝

引き続きロシア美術館展で。

レーピンの絵でもう一つ、強く心に残っているものがあります。
「ニコライ2世の肖像」。
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最後の皇帝ニコライ2世、28歳の時の肖像画です。
この絵を描いた時のレーピンは齢50を過ぎていたとか。

そして、このレーピンの「ニコライ2世」。
飾り気ない、本当に素朴で、人の良さそうな青年といいますか、お兄ちゃんといいますか、あるいは家族大好きなお父さんとでもいうような雰囲気に満ち満ちています。
本人は皇帝になりたくない、なる自信がないと言っていたとか。
ニコライ2世自身の姿は、時代が時代ゆえに写真も数多く残されていますが。
どんな写真より、どんな肖像画よりも、このレーピン肖像画が一番、「人間・ニコライ」の姿に近いような気がしてなりません。

画家は「皇帝」ではなく「人間・ニコライ」と向き合ったのでしょうか。
この絵ができた後、皇帝はモスクワへ送るために複製画を作らせたといいますから、おそらくご本人も相当に気に入ったのでしょう。

そしてこの絵を発表して約20年後に、皇帝一家が史上から抹消されるが如く、むごい殺され方をするとは…。

またさらに60年後。
ペレストロイカ、社会主義崩壊を経て、まっさきに「国家事業」として行われたものの一つに、この皇帝一家の歴代皇帝墓所「ペトロパブロフスキー大聖堂」への埋葬がありました。

私が当の聖堂を訪れた時は、確かこの埋葬が終わってから、もうずいぶん経っていましたが。

皇帝の墓や息子・娘達のプレートの前にはたくさんの花が供えられ、お灯明が飾られていました。
思慕、同情……いずれにしても、愛情を持って迎えられていたのは確かでしょう。
お店には一家のポストカードや本、写真集などもたくさん並んでいました。
家族全員のものはもちろん、息子や4人の娘単独のものなどもあり、なんだか劇場のブロマイド売り場のような印象でした。
この一家、一種の大きな観光素材でもありますが、やはりそれと同時に、激動の歴史・時代の一つのシンボルなんだなぁとつくづく思わせられます。
ピョートル大帝やエカテリーナばあさんのようなパワフルさ・強大さはないにしても、この最後の皇帝は、同時にロシアの“永遠の皇帝”なのかなぁと感じてしまいます。

そして皇帝一家の遺骨が本物か、偽物か、息子が、娘が足りない、足りないのはマリアだ、いやアナスタシアだ…などなど、依然論議は絶えないようで。

時代の流れ・悲劇・ミステリー性…。
後世の人間が持つ思いは人それぞれですが、私的には、この一家を思うと、言葉や理屈では表せない、胸が詰まるような思いを感じてしまうのですが…。
いや、こればっかりは理屈じゃないんですね。
私にもわかりません。

でも、だからこそ、レーピンのこの絵はなんだか一層切なく、同時にどの写真よりも素晴らしいと思ってしまうのです。
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by kababon_s | 2008-02-17 22:51 | Exposition