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NHKバレエの饗宴2015:TV必見の幸せな祝宴

3月28日、NHKバレエの饗宴2015に行ってきました。
最初に言いますとTV放送があります。

4月12日(日)21:00 クラシック音楽館
http://www4.nhk.or.jp/ongakukan/


NHKホールはバレエを見るにはでか過ぎてあまり好きじゃないんですが、今年は新国立劇場バレエ団とNoismが出る。
思えばこの公演は第1回を見て以来、この時期はなにかと出張が入ったりで行けなかったのですが、新国とNoismが出るときに日本にいたっていうのは巡り合わせ。
これは行け、ということだ。

そして、行ってよかった!
実にシアワセでした(*^▽^*)
出演は4団体と少なかったのですが、それでも楽しめましたし、何度もいいますが終わったときにはめちゃめちゃシアワセだったんですよ、特に最後の新国の祝宴が。
あの空気をじかに感じられただけでもう、行った甲斐がありました。

特に「眠れる森の美女」の3幕、宴ですね、結婚式の。
シアワセいっぱいです。
この切り取った舞台を、でも「饗宴」というお祭りプログラムに仕上げ直してきた新国ダンサーさんたちに敬服します。

この「眠り」、2014年秋に新制作された新国版です。
全幕通せばつっこみどころや修正希望箇所(特に宝石の衣装)は多々あるのですが、それでも新国素敵ダンサーさんたちのクオリティが素晴らしく、またレベルが高いということを改めて実感できました。
ファンとして彼らを誇りに思いましたし、ドヤ!(`・∀・´)とばかりに胸を張ってしまいましたね。
この舞台がTV放送され、新国のバレエ、ダンサーさん達をたくさんの人に見てもらえると思うと感無量です。
泣きたいくらいうれしいです。
日本で最高レベルのバレエ団である、これを「知ってもらうこと」はすごく大事ですよ。
というわけで、プログラム順に。

●パキータ/牧阿佐美バレヱ団

主演の青山&菊池さんは良かったです。
パドトロワの男性、清瀧君もあるお教室のゲストで見たときに腹周りがぶよってて結構ショックだったのですが、今回は絞れて、衣装も黒だったのもあっていい感じでした。
やっぱり牧でトップを張っているだけあって、菊池&清瀧君は身体も柔らかく跳躍もきれい。
青山さんの根性がにじみ出るようなグランフェッテも拍手ものでした。

ただ全体的には主演2人とトロワの男性にゲストを呼んだお教室の発表会のようで、「まだおわらないかなー」と思ったのが正直なところです。
きれいに踊るの(だけ)が取り柄の牧なのに、きれいに踊れなくちゃお話しにならんわー。

●Supernova/Noism1

金森さんの新作。
これが(も)見たくて行ったのですが、さすが斜め上の金森クオリティというのかNoismクオリティというのか。

タイトルからしてNoismならではの強靱な身体能力を生かしてアクティブでスピーディーな作品なのかと思ったら、動きはスロー系。
こうくるかー!
しかも真ん中の超新星、井関佐和子さんは頭からすっぽりと白い網タイツをかぶったようなびっくり衣装です。

それでも幕が上がり、次第に浮かび上がる佐和子さんの姿は、立っているだけで「井関佐和子である!!」というオーラと存在感を放ち、それだけでまず「ゴクリ」。

柔らかい暖色のライトが移動する様は新星の膨張でしょうか。
伸縮を繰り返し、しかし強力なエネルギーを内に秘めながら漆黒の宇宙空間で怪しくうごめくような超新星。
黛さんの「G線上のアリア」という、これまたゆったりと、不気味な不協和音をとどろかせる曲が、新星のうごめきにさらにエネルギーと計り知れない力を与えているようです。
宇宙の深遠、太古から変わらずにそこにあるエネルギーのうごめきでしょうか…。

ゆっくりとした動きは、でも逆にこれは鍛え抜かれた身体能力がなければコロン!と転がってしまうわけで、かえってこのカンパニーの力量をひしひしと思い知らされます。
ゆったりと、最後までゆったりと、膨張と伸縮を繰り返す超新星は、人の時間に対する地球の時間、宇宙の時間の果てしなさ、広さすら感じさせます。
じっと息を潜めて見入るような15分間。
しかし実に濃い15分間です。
…こわいカンパニーだ…。

●カルメン(抜粋)/下村由理恵バレエアンサンブル

御年おそらく50歳くらいだろうという下村さんの、渾身のカルメン。
振り付けはご主人である萩原聖一さん。
ゲストとしてドン・ホセに新国でおなじみの山本隆之さんと、その上官に牧の森田健太郎。

抜粋版ゆえ、お話はカルメンに惹かれ翻弄される2人の男性との三角関係が中心です。
そして何者にも束縛されず拘束されず、「己の心のまま」を貫く「カルメン」という女…いや魂か?

純情そうなドン・ホセにふてぶてしい上官。
森田さんは牧で王子(言ってて眩暈)を踊ってた頃より、三銃士のダルタニャン等々キャラ役の方が絶対にいいですね。
しかも昔より今の方が断然いい。

カルメンを巡り山本VS森田…というよりは、山本さんが一方的になぶられるだけのエア殴り合いはドキドキします。
そこでなぜ山本さんのシャツをはだける必要があるんだ(//∇//)…というのはさておき、不敵な笑みを浮かべる女性たちのアンサンブルが場の緊張感を盛り上げ、山本ホセがただ一人、悩み、翻弄されていきます。
何より下村さんの年齢なんて全く感じさせない動き、踊りがまるでエネルギーの固まり。
表現者、演技者ってこれか!と唸らせられるほどに、足の一歩、腕のひと振りで物語がぐいぐいと動きます。

カルメンの衣装が途中から赤から白へ。
愛…というより己の心に忠実な純粋さでしょうか。
だからこそ、ホセに刺されたあとのカルメンは、とき放たれた自由な魂のようです。
そして大地を蹴るようなパワフルさから軽やかに、体重を感じさせない下村さんの踊りがまたお見事。
バレエ団って、規模じゃない。
夫婦ですごい挑戦をしているんだなぁ…。

●「眠れる森の美女」3幕/新国立劇場バレエ団

満を持しての登場の新国。
お祭りとはいえ、本気度は半端ない、真剣超全力投球です。

なんせ本公演ではセカンドキャストで王子等を踊った方々も宝石やオオカミなどに配役されている、饗宴版豪華キャストですから。
それでもまだあの人とかあの人等々がいなかったりするんだからな~…。

主演に小野絢子・福岡雄大、米沢唯ちゃんがフロリナ。
宝石の女性に細田さん、奥田さんが入っていて、新国版オリジナルのゴールドが奥村君。
赤ずきん&オオカミに広瀬&福田君。
本公演でオオカミ&カタラビュートの小口君が貴族のアンサンブルに回り、残念と思えどまあ顔が見えるからおk(^ m ^)
でも本公演でゴールドを踊り、また先のトリプルビルで超大活躍だった池田君が白猫の輿担ぎの犬(顔が見えないー)とか残念。

ともあれ。

幕が上がり薄暗い舞台に、輪島カタラビュートのマントのひと振りで明かりが灯り、宴が始まる。
もう開幕の音楽と輪島のひと振りでムネアツで泣きそうですよ(笑)
輪島のひと振り(TVではどう見えるのでしょうか。人の視点が入ると変わるかもだが…)。
輪島カタラビュート、宴の間も「うんうん」って頷きながら見守る姿が微笑ましいです。
ストイックで、頼りがいのあるお兄さんです。

男性貴族のアンサンブルに小口、宝満、林田等々のイケメンが勢ぞろい。
新国の男性陣はこういう古典も立ち姿に品があります。

宝石は細田さんのエメラルドがまたクリアな色彩。
猫は原田舞子&原組です。
白猫のキュートさと、ハチワレ猫の癒し系原君がなんかいいコンビネーションです。

フロリナと青い鳥が米沢&井澤組だったのですが、これがまた見応えあるのなんの!
祝宴仕様でしょうか、唯ちゃんはまたいろいろ仕掛けてきてる(笑)
雄弁な腕の動きは小鳥のようでもあり花の精のようでもあり。
青い鳥と出会った喜びでその花が沸き立ち、会場にあふれんばかりのようです。
そうか、フロリナと青い鳥はこのオーロラの結婚式という祝宴にいっぱいいっぱいのシアワセを届けにくるという役割があるのねぇ…なんて、感じいりました。
唯ちゃんの踊りにはいつも何かを気づかされます。

青い鳥の井澤君、若い子はやっぱりこういう役は似合う。
スタイルが良く背が高いので、唯ちゃんとのバランスもいいですね。
ソツなく踊っているんですが、でも先のトリプルビルを見たときも思い、またバレ友さんも言ってたのですが、やっぱり身体固いなー。
この点は牧の菊池さん、清瀧君は実に柔軟でさすがと思いますし、それゆえ表現も豊かに見えます。
卒なく踊ってはいますが、総合すると牧のお二人にもまだまだ及ばない。
王子の道は険しいのぅ。

赤ずきん&オオカミは、本公演で小口君がブレイクダンス風オオカミをやってきたのに対して、福田君はなんかスカートのすそをつまんだりと、おねぇっぽいです。
まあ女装オオカミですから、そっちのキャラをとったのかな?
人によって違うのが面白いです。

親指トムの八幡君は相変わらず愛されキャラ全開です。
前回のアラジンの時は主演とはいえ、踊りがほとんどなかったので、今回は一杯踊れてよかったね!

そして真打登場!といわんばかりのキラッキラの絢子姫に、やっぱり貫禄がすさまじくついてきた雄大君。
2人してキラッキラのニッコニコで、これまで盛り上げてきてシアワセがいっぱい詰まった舞台にこれでもか!といわんばかりのダメ押し笑顔で幸福メーター振り切れてる(笑)
しかし踊りは隙が無い。
特に雄大君は本当にいいダンサーになったなぁ…!
もちろん細かいミスはあれども総じてキレッキレで跳躍も高く、跳んで足を打ち付ける音が3階まで小気味よく響いてきます。
これでまだまだ伸びしろを感じるんだから、どこまでいくのだろう、この男は。

フィナーレでは後ろで槍を持って控えていた方々が王妃と貝川王様のマントを掲げ持って入場してくるのが微笑ましかったですね。
池田&小柴のワンココンビのちょっとした愛嬌も、笑いが起こってよかったなぁ(笑)

というわけで、華やかな饗宴でした。
フィナーレで雄大、絢子姫、山本さんが手を繋いでいたのがまた幸せで嬉しくなりました(*^▽^*)

今回4団体は少ないよなぁ…と思えど、大トリ新国にこれだけやられちゃあ、Noismや下村さんのように全く比べようのない個性を確立しているような団体はともかく、生半可な古典プログラムでは太刀打ちできないだろうし、出なくて正解だったんじゃないの?とも思ったり…。

というわけでバレエの饗宴、TV放送予定は以下の通りです。
必見よ!

4月12日(日)21:00 クラシック音楽館
http://www4.nhk.or.jp/ongakukan/

by kababon_s | 2015-04-09 02:33 | Ballet