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新国立劇場バレエ団「トリプルビル」:バランシン、ドゥアト、男たちの挑戦

3月14日(土)、新国立劇場バレエ団「トリプルビル」行ってきました。
詳細はこちら↓。
http://www.nntt.jac.go.jp/ballet/performance/150314_003721.html

この日は初日、ファーストキャストです。
演目は再演となるバランシンの「テーマとヴァリエーション」、ドゥアトの「ドゥエンデ」、そして日本初演となるロバート・ノースの「トロイ・ゲーム」。
実にそれぞれの作品の味わいが出ていて見応えのある、満足度の高い公演でした。
これはいいよ、ホントに。

特に古典では普段後ろに回っている男の子たちの出番が多いうえ、トロイ・ゲームに至っては男性だけ8人という踊り。
ホントに男祭り(笑)

テーマとヴァリエーションから実に男子達がニッコニコの笑顔で楽しそうに踊っていて、もうそれだけで胸熱なのに加え、ドゥエンデではベテランの頼もしさと若手の躍進に胸躍り、男性だけで踊られるトロイ・ゲームはそれぞれのキャラが立っているうえ、いい具合にアホっぷりも演じられてまぁ楽しいことったら!
こういう演目を組める日本のカンパニーなんてまずないよな、と思いながら、もっと大勢のお客さんに見てほしいよと、心底思いました。
ダンス系の方々(特に男子)、必見だよ。

●期待は裏切らない「テーマとヴァリエーション」

「新国のバランシンだったら絶対いいにきまってるじゃん!」という確信のもとに見た、
そして期待通りのバランシンでした。

主演は小野絢子&福岡雄大の鉄板ペアだけど、特に雄大がいいです。
少し痩せたこともあって白いお衣裳も普通に見ていられたうえ、もともとコンテもすごくいい人だけに、こういう演目は実に合います。
また昨今男トップとしての貫録もしっかり付いてきて、男性陣を率いて踊る姿が本当に頼もしいです。
絢子姫も清潔感溢れ、凛として美しい。
彼女はきっと21日はもっといい(←断言。スロースターターだからなぁ(;´∀`))

そしてキチッと振付をモノにしてこなすダンサーたちの修練の賜物たるや。
もちろん100%完璧とは言わないけれど(やっぱり特に女性で新しく入った方々の中に「んん???」というのはいる。ここは男子もいいから女性で危ういと却って目立つ)。
何より男子がある程度身長とスタイルが揃ってきたせいか、そしてまた新国の男子はきちっと踊るから実に見応えがあるのですよ。

さらに冒頭書いたように、男子がそれこそ先のバヤデールの出番の少なかった鬱憤を晴らすかのように、1つ目から嬉しくてたまらない、というような満面の笑み。
音楽がクライマックスに向かって盛り上がるにつれて、身体から音楽が溢れるような跳躍をする男の子たちを見てたらもう、ホントにうるうるきます。
1つ目からもうこちらも幸せ度MAX。

ダンサーさんではやはり細田さんがいいです(最近こればっかり(笑))。
どうしたって目が彼女に向きます。
井澤君と組んでましたが、(視覚的には)美男美女だなぁ。
江本さん、なんか顔がまろやかになっただろうか?
彼もぐいぐい前に出る人ではないけど、本当に流れが歌うようです。
好きです。

●森の精霊たちの「ドゥエンデ」

スペインのアンダルシア地方で「いたずらをする精霊」の意味らしい、ドゥエンデ。
薄暗い森の中で息づき、笑いを殺して潜んでいるような、時にはシュッと現れては消えていくような妖精たちの世界っていうんでしょうか。

音楽が「ドビュッシーのフルートとハープのためのソナタ」という、昔風な、でも前衛的おとぎ話(笑)のようでもある想像力をいろいろ掻き立てられる曲。

「パストラル(牧歌)」に本島さん、米沢唯ちゃんに筋肉美にますます磨きと色気が漲る輪島さん。
この3人を筆頭に、「シランクス」が五月女&八幡の待ってましたペア、「フィナーレ」に福岡雄大、福田圭吾、池田武志という男三人衆。
さらに「神聖な舞曲」で、女性が奥田、寺田、盆子原(抜擢!)、男性が八幡、奥村、輪島の皆さん。

本島さんの、人生経験という名の蓄積からにじみ出るような表現力というのかオーラがすごいです。
最近の彼女は踊りに凄みみたいなのが加わり、元々美人なだけに一層迫力があります。
そこにいたずら精霊のように絡む唯ちゃんに、輪島さんの頼もしさ。
踊る輪島さんを見るのは久々ですが、本当に筋肉美がストイックなエロさというのか色気というのかもう、とにかく見ていてバクバクです(//∇//)
いや~犯罪だわ、輪島さーん。

五月女&八幡は互いに実にテクニシャンでスピードも身体能力も等しいうえにサイズが合う。
…というか、八幡君にスピード共々ついていける五月女さんがすごいのか。

福岡・福田・池田の男性トリオ、福田君はやっぱりキレは今一番いいんじゃなかろうか。
またちゃんと福岡・福田のスピードについていく池田君の成長っぷりにも驚きます。
入団したての頃は太もも系かと思っていたけど、いい具合に身体がきれいになって、実に楽しみ。
健康的な王子も行けそうだ。

「神聖な舞曲」からクライマックスへ。
米沢&輪島、盆子原&輪島。
とにかくこのストイックに色っぽい輪島兄貴とオヤジ殺し系女子を組ませるところは偶然なのか、意図的なのか。
醸し出される独特の雰囲気がもう「にょほほほ~(//∇//)」というか、まあ萌えます。
いろいろ好きです、ドゥエンデ。
いい作品です。
ミステリアスで、萠えも入って、実に楽しかった。

●踊る漫才「トロイ・ゲーム」の挑戦

さて、今回一番楽しみで、そして懸案でもあったトロイ・ゲームです。
いかんせん、初演作品で写真や動画を見る限り、マッチョ。
筋肉踊り。

事前にハンガリー国立バレエ団で見る機会があったのですが(レポートはこちら)、「笑わせたモン勝ち、客も笑ったモン勝ち」という印象。
つまり踊りに加えてキャラ芸が必要で、いわば踊る漫才です。
もちろん芸術ですが、客も膝を正して芸術よろしくご高尚に見るもんじゃないな、と。

欧米の方々はそういうのは全く問題ないでしょうが、果たしてそういう演目を日本の男の子たちがやってのけることができるのか。
技術的には全く問題はないだろうが、顔芸等々で笑いを取り、かつ自身のキャラ出しができるのか。
それができなければ中学校の組体操だなぁ…と思っておりました。

が。
これがキャストのせいでしょうか、実に面白かった!

マイレン親分にお笑い担当隠れボス的八幡君、キレッキレの福田君に、濃ゆめのイケメンで役者の小口君(前髪ウザオなんて妙名が一部定着しつつあるため責任感じつつ、でも絶賛応援中(//∇//))、最近癒し系の味わいが出てきた原君、知的さとほのかな色気も漂う宝満師匠、絶賛元気急成長株の池田君、頑張ってついてってるぞ福田紘也(弟)君。

これだけキャラ者が揃い、モンゴル相撲と思しき半裸パンツで組手だの、蹴り合いだの、スポーツの腕比べをするわけです。
30分、ひたすら。

どれだけハードな踊りだろう。
さらにそこにお笑いとコントを交えつつ、まあ動きまくるわけです。
踊りの技術はもとより、キャラを、自身を出さねば作品自体が面白くない、というのは日本人にとってはある意味挑戦ですし、そういう点では難易度高い演目を選んだなぁ…と、改めて思います。

人間ジャングルジムから一人「し――っ(*^b^)!!」と抜けて山崩しする小口君のお茶目っぷり。
ここで笑いを取らないと始まらない、というポジションに小口君を据えてくれたのは実にいいセレクトです。

スローモーションの武士道?と思しき組手のマイレンはまるで師匠。
1人ずれて笑いを取る道化的キャラに八幡君がいるのがいい感じ。
また彼がそれを見事にやってのける。
マイレンや八幡君のような芸達者なベテラン――いわゆる隠れボスがいるからこそ、若い者も「おーっ☆彡(。o`・Д・)o! 」とばかりにテンション上がるわけですね。
いやいや、実に楽しかった!

きっとまだまだ弾けられると思います。
動いて動いて頭カラにして、それこそアッパールームに突き抜けた状態で踊ったらどうなるんだろう。
実に楽しみです(*^▽^*)

このファーストキャストは19日、21日とみられますので、ぜひ!!お出かけください!
滅多に見られないよ、こんなの(笑)

というわけで、新国トリプルビル、このあとキャスト違いでも行きますが、キャストごとに違った味わいがあると思います。
まだ19日(木)、21日(土)、22日(日)と公演がありますので、ぜひぜひ!お出かけください。

by kababon_s | 2015-03-17 04:31 | 新国立劇場バレエ