新国立劇場バレエ団「シンデレラ」:東京から上田へ、すさまじく期待の舞台

新国立劇場バレエ団「シンデレラ」、20日ソワレ(米沢&菅野)、21日(寺田&井澤)を見てきました。
何度も上演している作品で、しかし何度もやってるからこそ素晴らしい完成度で、本当に震えましたね。
見てよかった!
前回の「眠り」からたった1ヶ月しか経っていないのにダンサーさん達は一回りもふた周りも成長しているし、舞台上では随所で楽しげに小芝居が炸裂して隅々まで人が生きている。
しかもまだ伸びしろまで感じさせられ、頼もしいやらうれしいやらで、何度ジワジワきたかわかりません。
プロコフィエフの音楽は美しいし、振り付けはアシュトンなのでストーリーに破綻がないし、温かさいっぱいでこんなに幸せでいいのか、と思える舞台でした。

また総じてこの「シンデレラ」は悲壮感がない。
ポジティブで前向きで、彼女なりに家族を愛して自分の立場で生きている。

今更的な話をすれば、このアシュトンのシンデレラは一幕、義理の姉ズがシンデレラを置いて舞踏会に行くまで、また三幕の王子と出会うまでの部分は、ほとんど男性ダンサーによる舞台なんですね(笑)
女性ダンサーはシンデレラと1幕の洋服屋の女性2人という。

これは考えてみればすごいことだなぁと、一人で感心しています。
特に稽古場リハーサルを想像すると、男の子たちがどたばたワイワイやっているところにポツーン……とシンデレラが座っているわけですね。
もちろん「シンデレラ」としてのリハーサルをしているんでしょうが、でも一方でワイワイしている男子を眺めているうちに、姉ズ等々に対しても愛情がわく(または呆れる?)……というか、心が広くなるかもしれないです(笑)

( ゚д゚)ハッ!!これがアシュトンのポジティブ・シンデレラの理由の一つ!?
メイキング・オブ・シンデレラなんて動画あげてくれないかしらね、新国さん。
すごく楽しそうだわ。

ともかく総じてパワフルな姉ズやしょぼしょぼなパパに加えて、仕立屋だのダンス教師や宝石屋(←特に「前髪ウザオ」的小口宝石屋は今回のヒット!)など、それぞれ独自に役を考えているようで、それがうまくかみ合い、掛け合いコントのような舞台ができあがっているのかと思うと、男の子たちどれだけ仲がいいんだ、と微笑ましくなるわけです。
しかもみんな踊れるし。
こういう細かいところの積み重ねが、舞台やストーリーに奥行きを加えているんだなぁと改めて、思わせられます。

余談ですが、こういう男の子たちのドタバタのなかで、ヴァイオリンを弾くためだけに舞台に衣装を付けて上げられたリアル・ヴァイオリニスト(であろう)方々が、真顔で淡々と仕事をこなしている様子がとても異世界で、でも不思議とマッチしていて微笑ましかったです。
プログラムには彼らの名前も載せるべきではなかろうか。

というわけで、以下各日の感想。

●安定米沢シンデレラ&菅野王子

20日ソワレは米沢シンデレラと菅野王子の回。
唯ちゃんはなんだか演技の雰囲気がちょっと変わったでしょうか?
特に1幕と3幕の、変身前のシンデレラの感情表現が大きくなった感じです。
かといってオーバーアクションでもないし、いろいろ考えているなぁ、彼女は。
面白いです、実に。
ただ王子と絡むと今までの唯ちゃんなので、このあたりはパートナーシップとか、一人じゃできない部分なんかがあるのかもしれません。

とはいえ、菅野王子とは何度も組んでいるだけあって、安心して見られますし、やはりお互い余裕があります。
菅野王子、顔はリーマンでも、身のこなしや目線、動き一つひとつは、やはりこの舞台の「王子」ですし、踊りも堅実です。

古川&高橋姉ズはのっけからパワー全開。
大柄ででっかい古川兄貴が姉貴で大股でドカドカ歩き、すらり系の高橋君との掛け合いも絶妙。
この姉ズについつい目が奪われ、小口宝石屋を見落としました、不覚。
輪島パパが気の弱いおどおどしたパパで、実に姉ズに振り回されています。
パパに甘える唯ちゃんシンデレラは実にかわいい。
ぺたーっとお膝にもたれかかって幸せそうで、ほんとにカワイイ。

今回びっくりしたのは堀口仙女。
非常に腕の動きが雄弁で、この人こんなに上手かった??と失礼ながら目を疑いました(笑)
妖精たちの仕切っぷりといい貫禄さえ感じられ、これなら彼女もリラの精できたよな、とつい思ってしまいます、しつこいようですが。

堀口さんに限らず、四季の精もそれぞれにお見事。
五月女さんは彼女なりの言語がしっかりできあがりつつあるし、冬の精の細田さんはクールビューティーもいけますね。
彼女の主演もぜひ近々見たいところです。

今回キャスト変更で1回だけの登場だった奥村道化が見られたのはラッキー。
奥村王子の日はチケット取っていなかったので、これは幸運でした。
そしてまた道化があっちこっちで(いい意味で)好き勝手にやって場を盛り上げている。

今回カテコで目を奪われのが前述の小口宝石屋。
ひっきりなしに長くてうざい前髪を気にしてお辞儀をしてはかきあげて……を繰り返していて「前髪ウザオ」と密かに命名したほどにウザウザなウザオだったわけですが、これは小口君が考えた役作りなんでしょうかね。
こういう細かいところの積み重ねがいいです。
こういう伝統はぜひ大事にしてほしいものです。

●庶民派シンデレラと新人王子

21日は寺田シンデレラと鳴り物入りの新人・井澤王子。
どちらも初役でこの日一度きりですが、健闘した、というのが一番合うかも。
舞台の上のその他の方々に支えられて踊りきった、という二人ですね。
同時に、舞台上の人々すべてが本当にそれぞれに大切なんだと、当たり前のことを改めて実感しました。

正直井澤君より寺田さんの方が心配だったのですが(苦笑)、彼女なりに踊りきったという感じですか。
彼女の明るいキャラのよく出た庶民的なシンデレラですが、変身後はやはり王子が新人でガッチガチなせいか、シンデレラの方が堂々としていてお姉さんみたい(笑)
シンデレラが王子を見る目がリラの精の姉貴の如しだったりで、そういうところの演じ分けは一層の精進なのかもですが。
でも福田道化のサポートが愛いっぱいで、道化の掲げるヴェールの美しさはもうほっこり。
実に幸せな「シンデレラ」だなぁ。

姉ズは山本さんとこの日緊急復活の野崎さん。
シンデレラの上演なんてもう相当に前から決まっていたのに新しい姉ズを仕込めなかったのかよ、というのはおいといて。
でも一時的に復活してくれた野崎さんには感謝です。
そしてやはり同じドタバタでも山本姉は品があります、ドタバタしていても。
堂々としていていちいち笑えます。
ツボや呼吸の間がお見事。
素敵です。
釘付けです。

王子の4人の友人はジャンプも着地もやわらかく丁寧で上品で揃いっぷりも見事。
この4人の男の子たちだっていつ王子を踊ってもいい子ばかりなんですよね。
いつか見たいものです。

星の精は大和隊長なんと60回目という一番星。
そしてコールドが美しいこと!
星の精というきらびやかさと柔らかさ、同時に時の精でもある無情感と硬質感が素晴らしくマッチしていて見ているだけで溜息です。
よくぞここまで揃えてきたものです。
感涙ものです。

お父さんはマイレンですが、あの姉ズのパワーの前にはマイレンパパもおどおど(笑)
本島仙女は貫禄ですし、やはり彼女は美しいです。
美人だなぁ。

笑ってしまったのはカテコの時、山本姉の羽扇が本島仙女の顔をばさっ!と一瞬覆い隠し、その後間髪入れずに本島さんが彼女ならではの眼力炸裂で山本さんに強烈にガンとばしたこと。
と思いきや、反対側では八幡ナポレオンがヅラをとばして笑いをとっているし(^-^;
怖いものなどなにもない的ベテランさんたちのコントが炸裂する余裕と絶妙の呼吸に、ダンサーさん達の雰囲気の良さを感じました。
寺田さんは両側にイケメン王子と圭吾君従えてこれ以上ないくらい幸せそうな満面の笑顔。
温かいです。
シアワセいっぱいです。

その噂のイケメン新人王子・井澤君ですが、超緊張でしたね、やはり。
とにかく踊りこなすのに精一杯で、しかし彼なりにやれることはやったという感じでしょうか。
自分のキャラや王子の掘り下げ、サポートとか課題は山積みですが、お教室から今年入団でいきなり王子とか、事前のごり押し押し売り宣伝はどうよと思えども、健闘したと言っていいかと。
というか彼も相当にプレッシャーだったでしょうね。
「眠り」の4人の王子をやっていた時の方がリラックスして、のびのびしていたように思えます。

でもなによりやはり彼はルックスがいいです、やはり。
どう客観的に見ても。
足長いし、細いし、ノーブル系だし、あつじー無きあとノーブル王子不足の新国にはいなかったタイプです。
出てきた瞬間、やはり目を引きます。

このイケメ&ルックスなら、別にあんなに事前のごり押し宣伝をしなくても、普通に場数を踏んでいけば絶対に出てくる、王子を踊らざるを得ないタイプだと思うだけに、逆に新国運営サイドの売り方に世間知らずというか、KYさというか、ファンの気持ちのわからなさを思い切り感じますが(今に始まったことではないですが)。

ただ周りの思惑や売り方と、ダンサー個人はやはり別に考えたいなぁというのが個人的な思いです。
カンパニーという枠があるにしても、芸術、踊り、もの書きにしても(さり気に混ぜ込むな、ですが(^-^;)、どんなきっかけであれチャンスを得るのは大事なことですし、このチャンスを得るのって本当に大変(本当に大変だよ)。
どんな形であれ、チャンスを掴みたい。
きっかけを得たあと、それを伸ばしていけるか、評価につなげることができるかどうかは本人次第ですし。

そういう意味では井澤君はプロのバレエ人生でかなり特異な出方をしたタイプかと思いますが、今後どう新国に馴染んでいくのか、どこまで自分の色を出し、自分で考え役を作り芸を伸ばしていくのか、それとも……なのか、静かに見ていきたいと思っています。

いずれにしても2日間、非常に完成度が高く、しかもまだまだ伸びる、まだまだテンションあげられる、と思える素晴らしい舞台でした。
見に行けなかった23日東京千秋楽の評価も素晴らしいようで、この状態でさらに月末27日に上田市で旅公演があと1日、あります。

この上田、実は参戦しますが(恐ろしく寒いという現地情報(^-^;)、今回の集大成になると思うと実に楽しみです。
期待と期待と期待でワクワクが止まりません。
間違いなく素晴らしい舞台になることは断言できますので、上田市はもとより近郊の皆様、ぜひ足をお運びください(*´▽`*)
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by kababon_s | 2014-12-25 23:53 | 新国立劇場バレエ