新国立劇場バレエ団「シンフォニー・イン・スリームーブメンツ」:層の厚さと若手躍進

超時差ぼけもいいところというよりも、よくも今更ぬけぬけと……というタイミングですが、とりあえずあげておきます。
ビントレーシーズンが終わる前の残務処理(笑)




3月18日、19日、22日、23日の新国立劇場バレエ団トリプルビル「シンフォニー・イン・スリームーブメンツ」です、今更的ですが。
お客の入りはもう全然悲しいほどでしたが、結局あまりに楽しくて4回見てしまったわ(^_^;)
2回だけのつもりだったのに、大貢献ですよw

その理由の一つは若手男子の大躍進です。

特にセカンドキャストではジェシカ・ラングの新作「暗闇から解き放たれて」で池田君が、2つ目「大フーガ」で小口、清水君たちが、3つ目「シンフォニー・イン・スリームーブメンツ」では林田君が抜擢され、ベテランさんや中堅さんたちと一緒に真ん中で踊ったのですが、これが負けず劣らず素晴らしかったわけです。
若い子が与えられたチャンスを確実にものにして見事な結果を魅せてくれる、この楽しさ、心地よさ。
古典等ではどうしても後ろで踊る子たち故に、こうした小作品やコンテンポラリー作品は彼らにとってもチャンスだし、お客にとっても新たな発見があって実にいい機会です。

またやはりファースト、セカンドと、若手からベテランまでを含めて味わいが違うキャストを複数組める層の厚さもすごいと、つくづく思います。

「ダンサーは新しい作品に出会って成長する」とは小野絢子さんのインタビューにありましたが、こうしたコンテンポラリー作品、トリプルビルの上演意義の一つもまさにここにあるわけで、お客が入らないとはいえ、バレエ団のためにも、未来のダンサーたちのためにも、また新国ファンのお客のためにも上演意義は十分あるわけですし、やらなきゃならないですよ、一応「国立」として。
ほんとに。


●「暗闇から解き放たれて」 Escape from the Weight and Darkness


直訳すると「暗闇と重力からの脱出」という英語原題がありまして、片手落ちっぽい日本語訳のほかにこの原題を頭に入れて初めて意味が通じそうな作品です。
タイトルを単なる英語のカタカナ表記にしなかったことは非常に評価できるのですが、それにしても邦題はもうひと捻りほしかったところです。

ともかく暗闇だけでなく、重力など、あらゆる「しがらみ」からの脱出、解放を意図した作品と解釈。
シノプスレスのコンテンポラリーはもちろん振り付け家が意図するところはあるでしょうが、お客にとっても見方はある意味「自由」です。
妄想力をフルに発揮して自由にダンサーが織りなす世界を楽しむ余地がある。
もちろんそういう「楽しさ」を与えてくれる作品に限るわけで、なかには退屈??というものもあるのですが。

そしてこのジェシカさんの新作は実に楽しかった。

暗闇の中、和紙製のようにも見えるぼんぼり…なのか、和室の電気傘のような電飾が浮かんでいる。
雲のようにも、泡のようにも見え、上下することで海の中なのか、空間なのか、とにかく不思議な浮遊感が伝わってくる。

寝ているダンサーさんたちはゆっくりと起きあがり、転がり、やがて男女4人のペアの踊り。
後ろの緞帳が膝くらいの高さまで上がり、光が射し、その「向こう側」には足だけのダンサー。
「向こう側」と「こちら側」を行き来しながらカップルの踊りが繰り広げられる。

次に男性3人の踊り。
スピーディーに軽やかに、光の粒子のようでもあり、深海で発光しながら勢いよく泳ぐ、生まれたばかりの生き物のようにも感じられます。

再び「向こう側」の世界の幕が少しだけ上がり、女性の足だけが見える。
バーレッスンのようにもみえる動きは、重力から解き放たれている自由な世界のよう。
そこへ電飾ドーナツチュチュを着た女性3人がくるくると軽やかに登場。
宇宙空間の粒子でしょうか。
溌剌として、自由で、軽い。

最後は全員で空間を漂いつつ、やがて緞帳すべてが上がって「向こう」と「こちら」は一体となり、柔らかな光の世界へ向かっていく…。

だいたい流れとしてはこんな感じです。

演出は同じなのですが、ファーストキャストは小野、米沢、福岡等々のおなじみのメンバーが多く、非常に落ち着いた雰囲気。
なんだかパステルを使った絵本の世界のような柔らかさがありました。
男性3人のパートで踊った八幡君の滞空時間の長いこと!
緩急のメリハリがあり、最後は全員が光の中に溶けていくようなほんわり感じもあり、総じて優しく愛おしいイメージです。
散髪してガラッとイメチェンした貝川さんにちょっと衝撃でした(笑)

対してセカンドキャストは若手が多く、それが本島、湯川といったベテランさんとうまくかみ合い、とてもエネルギッシュ。
3DのCGグラフィックのようで、でも人間らしい体温と情熱が伝わってくる。
八幡ポジションに入った池田君がこれがまた好青年感あふれる(笑)滞空時間の長い跳躍力を見せてくれて、新たな若手台頭の予感♪
クライマックスは全員が光を目指して疾走しようとする、力強いベクトルの具現化ともいえるパワーがありました。

●大フーガ

これは踊りも妙ちきりんな、エロくてコケティッシュで、やっぱり総じて楽しんで笑うトコだよな、という演目。
曲がベートーベンの難解で重さもありながら、でも田園風の爽やかさが漂う曲で、これがまたミスマッチのように楽しい。
特に、実はみなさん見事な腹筋割れ細マッチョ揃いだったという新国男性陣の肉体美にウハーvと萌えまくってました。

女性の衣装はどうしたって下着のテディで髪型は奈良時代の女性っぽい感じ。
男性は上半身裸に黒い袴から、途中短パンいうか思いっ切りパンツに変身。

男女4人ずつ、4組のカップルの踊りで、ファーストキャストは長田・米沢・本島・湯川の気の強そうな女性陣と菅野・輪島・福田・古川という……包容力系(?)の男性陣。
やっぱり女性陣がなかなか強くて、男性を翻弄しつつ楽しんでいるような感じが実に素敵です。
湯川お姉さまにペチンとされて丸まってる古川さんとか妙にツボ。
また輪島さんの筋肉美に釘付けで、休憩時間もバーベル片手に体を鍛えていたという話を小耳にして一層萌えまくりw
うわああああー(///▽///)とゴロゴロ悶絶して転がりまくりたい気分です(*^_^*)
バーベルとか、バーベルとか、素敵すぎる輪島さん!
あああ、惚れた…(///▽///)

対するセカンドキャストは小野・丸尾・若生・堀口という森の小動物系女子にマイレン大親分、福岡中親分に、小口・清水若衆という心優しきワイルド系男性で、これがまた実に微笑ましくかわいらしい。

女子が特に子ネズミ、野ウサギ、ヤマネにモモンガ・モモちゃん等々、森の妖精グループです。
なんとまぁ、愛らしいことw
それでいて、特に小野子ネズミ&胸筋も素晴らしい胸毛マイレンペアは相当に悶絶もの。
子ネズミ絢子が時折見せるいたずらっぽい視線はズルいわーw
また丸尾さん、以前「イン・ジ・アッパー・ルーム」で見たときも思ったんですが、彼女、コンテがいいですね~。

●シンフォニー・イン・スリームーブメンツ

バランシン&ストラヴィンスキー。
先のNYCB公演でも上演しましたが、私は見損ねているのでこれが初見ですが、おそらく新国的に上品にまとまっていたのではあるまいか。
でもリズムはやはり鬼だし、音に乗るのは大変でしょうし、よくみなさん踊りきったなぁと、やはり思います。
とはいえ、エネルギーは初演時から次第に上昇していき、楽日はスカっと晴れ渡ったNYの青空のようでした。

特筆はやはりセカンドキャストの、ファーストの長田・八幡ポジションに入って踊った五月女・林田ペアです。
五月女さんのバネや跳躍といった身体能力のすごさはもう言わずもがなで、さらに今回大抜擢された林田君が実にお見事でした。
菅野・福岡と並んで踊っても全然遜色のない力量と存在感を見せてくれて、笑顔が実に楽しそう。
これまた未来の新たな王子誕生を感じさせてくれました。
林田君は夏休みの子供バレエ「しらゆきひめ」の王子にも、細田さん共々抜擢されており、これもまた楽しみです。

ファースト・セカンド共々ペアパートを踊った小野・福岡ですが、特に小野さんはこういうの、好きなんでしょうね。
動きがまたリズムに乗っててコケティッシュな愛嬌も見える。
彼女はまだ進化しそうだから、空恐ろしいです。

というわけで本当に楽しんだトリプルビルでした。
切ないのはパリ・オペラ座、Kバレエの公演と重なっていたことで、中ホールでありながら、お客の入りが最低記録更新しそうなほどだったこと。
せめてこの時期にあの変な白鳥を持ってくるとか、そういう組み替えはできなかったのでしょうか。
…でもオペラパレスでは「死の都」やってたんだっけ。
なんだかとても悔やまれます、いろいろと。

こういう良質のコンテンポラリー作品こそ、もっと見てもらいたいし、お教室のお子さま客をターゲットとするなら、ローザンヌでもコンテが演目に入っている以上、新国でこそ続ける意義は十分にあると思うのですが。

これから先、くどいほど何度でも言うと思いますが。
古典だけではない、ドラマティックバレエやコンテンポラリー作品や新作、そして新国のために作られたビントレー作品の上演は続け欲しいと、切に思います。

芸術監督が算盤はじいたら、芸術はおしまいです。
伸びしろのある若いダンサーたちの芽を摘むようなことだけは、してほしくないですね。
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by kababon_s | 2014-06-10 00:44 | 新国立劇場バレエ