ハンガリー国立バレエ「トロイゲーム/ラ・シルフィード」:トロイ・リサーチ(笑)

5月23日、ハンガリー国立バレエ団(ハンガリー国立歌劇場/ブダペスト)で「トロイゲーム/ラ・シルフィード」のダブルビル(千秋楽)を観てきました。
ブダペストの国立歌劇場もといオペラ座はぜひ一度客として訪れたかったということ、またトロイゲームは新国立劇場バレエ団でも来シーズンのラインナップになっていることもあり、今回はリサーチ含め非常にいいタイミングでした。

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*ソワレにむけて準備中のオペラ座です。舞台の天井高がすごい。

●楽しんだ者勝ち「トロイゲーム」

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「トロイゲーム」は今回観た印象ではバレエでありパフォーマンスでもあり、というのか。
一つ強く感じたのは、ウンチクとか芸術とか細かいことを考えず、楽しんだ者勝ちってことです。

特に抑揚のある音楽でもないですから、ダンサーのチームワークと客席と対話するようなパフォーマンス力によるところが非常に大きいのでは。
人間ジャングルジムやファイティング、跳び比べ・力比べを、ダンサー達が楽しみながらお客を楽しませるプログラム、という印象を受けました。

その点ハンガリーのダンサーさん達は自己アピールがとても上手だし、表情豊かでお茶目だし、身体もしっかりしています。
マジャール人身体でかい。

客席も「おらが町のダンサーを応援するぞ!」的意欲満々で実によく笑うし、ご贔屓さんがビシっと決めれば拍手喝采で非常に楽しんでいるのがよくわかります。
実際にこのオペラ座、舞台と客席の距離がとても近いんですが、ダンサーとお客の距離もほんとに近いですね。
劇場空間の一体感がすごい。
衣装はどうしてもモンゴル相撲に見えて仕方がないのですが(笑)

果たしてこの演目を新国立劇場バレエ団でやったらどうなるんだろう。

新国男子が持ち前の仲良しっぷりを炸裂させ、漫才よろしくギャグを演じることができればひょっとしたら、新国ならではのトロイゲームになる…かもしれません。

テクニック的には地味に大変なことをしていますが、でも数々のハードな鬼振り付けをこなしてきた彼らなら何も心配はないと、これは確信しています。

問題は素晴らしくきれいだけどなーんか大人しい、という「新国的優等生」の、その一線を越えられるかどうか、かな??

ある意味大きな挑戦かもです。

優等生の殻を破ってギャグになりきり弾けられるか。
新国的優等生のままだったら、振り付けが振り付けだけに、また日本人はどうしても身体が華奢に見えてしまいますから、ともすれば中学校のマスゲームになっちゃうかも…。

なぜ新芸術監督はこの演目を選んだのか、やはりわかりません。
ただ「あ、この役マイレン的」「ここは八幡・福田ポジションかな」と思える部分はありましたので、まあ乞うご期待、というところでしょうか(笑)。

とにかくかしこまらず、ゆる~く楽しむつもりで観れば、モンゴル相撲の衣装共々笑いの止まらん舞台になるかもですよ。

ちなみにこの日のトロイゲームは日本人ダンサーの高橋ユウヤ君も出演していました(漢字がわかりません、すいません)。
ハンガリー人のなかにあって体格的に見劣りしない高橋君、結構身体は大きいのかも。
しかも基本の部分は誰よりも丁寧でした。
彼を見られて良かったなぁ。

●魔訶不思議な「ラ・シルフィード」

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これは実に摩訶不思議でした。
解釈の仕方が独特なのか表現がどストレートなのか、ともかくこのカンパニーの方々は素直で表情豊かです。

ジェームズ(Lagunov Jevegynij)とマッジ(Kerenyi Miklos David/男性です)がまぁ両方とも性格悪いこと(笑)
こんな不遜で態度でかくてふてぶてしいジェームズは初めてですし、ここまで執念深く底意地の悪いマッジもあまり見ないかも。
ジェームズ役のラグノフさんはイケメンなんですが、そのイケメンっぷりが不遜さをいっそう際だたせている。
マッジもアクションがでかくて、プライドの高い尊大っぷりがにじみ出ており、ちょっと機嫌を損ねさせただけで、100年どころか1000年呪われそうです。
一番迫力あったのはこのジェームズとマッジの掛け合いかもしれません。
なんか妙に火花が散ってて激しいのですわ、2人とも。

シルフィード(Balaban Cristina)はKYさと無邪気っぷりが小悪魔とはいわないけどやっぱり気まぐれな妖精で、でもなんか肉々しい存在感がある不思議なシルフィード。
でも「どっすん!」じゃないし、人間か?というと人間じゃない。
ハンガリー的妖精なんでしょうか????

グエン(Travillo Carlos)にしても、普通に友を思いエフィをあきらめられず、でもあきらめようとしているところに最後にお鉢が回ってラッキー!これを逃してなるものか、というしたたかさも見えて、とにかくキャラ付けが面白い。
ジェームズにしてもマッジにしても、シルフィードにしてもグエンにしても、不思議なアクの強さがあります。
アク…というのも正しい表現ではないのですが、でも邪魔ではない、これがマジャール的なのか…??と思えるものです。

ともかくそういう方々のなかにあって、エフィ(Pap Adrienn)があまりに普通で、それが却って健気で、とても可愛らしかったのですね。
幸せな結婚をして幸せになりたい、普通の娘です。
「幸せに結婚できて良かったね」と言えるエフィでした。

ともかく、明らかにブルノンヴィルのたおやかさ、繊細さとは別のところにある。
でも彼らが繊細じゃない、丁寧じゃない、というのとは違いますので誤解なきよう。
何と言ったらいいのかわかりませんが、これが彼らの味わいだと思うのです。
こんなの見たことないわ(笑)

果たしてこうしたキャラクターのなかでプリンシパルとして在籍している中村祥子さんがシルフィードを踊ったら一体どうなっていたのでしょう。
そう考えるとかなり興味がわいてきます。
この独特な(多分)マジャールテイストの方々と一緒にあの細身で踊ったら、日本で見るのとは違う、別の面が見えたでしょうか。
今回は中村さんの出演日程と全然合わなかったのですが、今度現地へ行く機会があったら彼女の踊りもぜひ見てみたいですね、こうなってくると。

いずれにしてもハンガリー国立バレエ団、オペラ座は歴史的にも由緒のある建物ですし、何よりチケットが破格の安さですから、機会があったらぜひ行ってみてください。
今回ロイヤルボックス(エリザベートとフランツ・ヨーゼフが座っていた席)の隣のボックスで観ましたが、もちろんこれが最高値席で、なんと5000円くらいでした。
オペラなら最高値7000円くらいです。
チケットはサイトで買えてプリントアウトして持っていけます。

●熱いぞ!ハンガリー国立バレエ団

せっかくなのでハンガリー国立バレエ団についても少し。

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今回関係者に少しだけお話を伺う機会があったんですが、非常にアグレッシブで、意欲的な熱意が感じられるバレエ団でした。
特に広報の兄さんが熱くて熱くて、ホントに熱くて、ほっといたらいつまでも語ってるんです(笑)

しかも公演の時も幕間でばったりお会いしたのですが、そのときもまた延々と語り始めちゃって、気が付いたら5分前のベルが鳴ってるとか、もう本当に熱い!
お兄さん、バレエ団もオペラ座もダンサーたちのことも大好きなんだなぁというのがヒシヒシと伝わってきます。
こんなに熱く意欲の高い広報がいるなんて、本当にうらやましく思います(ちょっと遠い目…)。

ともかくハンガリー国立バレエ団、2013年に就任したタマシュ・ソリモジ新芸術監督のもと「新しい空気」を入れ、古典、ネオクラシック、コンテンポラリー等々、幅広い作品を取りあげながらハンガリーならではのバレエ団を作ろう、上を目指していこう、という目標を掲げている。
(新芸術監督になる前から、このバレエ団はエイフマン等々、コンテンポラリー作品もかなりレパートリーにしていましたが)
芸術監督が決まるまで相当ごちゃごちゃした時期もあったようですし、また芸監不在の時期もあったとか、「一体どうやって公演ができたんだ??」と思うようなこともあり、「ようやく動き出した(出せた)」感もあるようです。

そういったポジティブな思いのせいなのか、とにかくこのバレエ団、空気が明るいのです。
すごく前向きなベクトルに満ちています。
行き詰まったり、なにか風通しの良くないカンパニーって舞台を見ていてもどよんとした辛気臭さとか、スポットライトが煌々と当たってるはずなのに暗さを感じたりたりするもんですが、ここではそういった空気は感じられませんでした。

だから細かい理屈や評価は一切抜きにして、観客として臨席する劇場空間がとても気持ちがいいし、先のトロイゲーム同様、お客との距離がとても近くて不思議な一体感、対話感がある。
もちろん全く問題がないわけはないでしょうが、本当に空気はよかったです。

ちなみにこちら、ハンガリー国立歌劇場のプロモーション動画。
なぜか中村祥子さん、宇宙飛行士になっています(笑)
https://www.youtube.com/watch?v=camVVzjGheQ#t=21

でも目指すところは、伝わってくるようです。
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by kababon_s | 2014-06-07 23:28 | Ballet