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映画「キャプテン・ハーロック」:ン年ぶりの再会と兄弟萌え

キャプテン・ハーロック見てきました。
http://harlock-movie.com/

昔のアニメ世代故に、ハーロックとは実にン十年ぶりの再会。
いや、再会と言うのとはちょっと違うか。
何しろアニメのハーロックとは全く別物だから。
でも画業60周年を迎えた松本零士が彼の人生を経て今、ハーロックを描いたらこうなる、というハーロックだと解釈しました。
そして素直に久々の邂逅を楽しみました。

大いなる存在感とともに、でも細腰がなんだか色っぽい、しかし重い過去を背負ったハーロック。
ナイーヴで優しさと弱さをも持った「人間」として描かれている。
アニメの時代の絶大なる大いなる存在感がデフォルトの自分にとっては「???」の部分もあるし、やっぱり大いなる存在でいてほしいとは思えども、でもこれはこれでまた違った存在感があるから納得はいく。

以下感想を極力ネタバレしない範囲で。






細身で色っぽさすら漂うハーロックを演じる小栗のボイスは、アニメの井上ボイスの洗礼を受けた身としては、いささか軽い感じもするが、先にも書いたように存在感が非常にいい。
主人公というより、話の軸を支える大いなる象徴というべき位置づけであります。

だから実質上、話を動かすのはかつてアニメの台羽正ポジションに立つ青年ヤマ。
台羽いないのか、と思えども、このヤマを含め、「ハーロック」という大いなる星の周りをまわるヤマの兄イソラ、兄の妻ナミ等々を含めた衛星のようなキャラがよいのです。
特にイソラ兄。

とにかくあっちふらふら、こっちふらふらのヤマ、キリッとブレない兄イソラの兄弟の関係は非常にツボるのですね。
「愛と憎しみの兄弟萌え」が好きな人には相当に萌えポイント高い。
悶絶ものであります。
なにより、何度も言いますがイソラを演じる森川智之がいいのです。
森川さんくらいしっかりした演技力がなければこのイソラは務まらないし、このイソラがダメだったらこの映画はほんとにダメだったとさえ思います。

プライドが高く、弱く優しく、しかし己の信念に最後までブレないイソラ兄貴。
兄ちゃんの鑑が「オケアノス号」ってのもポイント高すぎる。
神話の「オケアノス」であるか……「ゼウス」に裏切られた……。
切なくて泣けるわ。
「オケアノス号」、そして「ヤマ」「ナミ」「イソラ(イタリア語で島)」。
このネーミングの妙もぜひしみじみ感じていただきたいポイントかとも思います。

松本零時の落としどころは「(政府発表の)幻影ではなく現実を、真実を見ろ。目を塞がず前を見て、地球の再生力を信じろ」と解釈。
これがなにを意味するか…ここでは多くは述べないが、やはり「長く生きたゆえに犯した罪」と贖罪。
自分で何とかしたくても、未来を信じて託すしかない現実。
それ故の象徴ハーロックなのです。

映画の映像は3Dアニメーションだが、半端に実写化されるより全然いいですよ。
私は漫画の妙な実写化よりもこういう方が好き。
実写は役者が先に立っちゃって、往年物に乗っかった程度のものだったりで、ものによってはちゃっちい感じがして受け入れられないが、3Dアニメはありだわ。

もちろんフィギュアが動いているようなツルツル感は否めないし、巷でいう「FFハーロック」は否定しない。
が、ヤッタラン(ワイルドだった!)やトチロー(鈍くさそうな研究ヲタっぽくてよかった)、トリさん(ぷりちいだった♪)みたいなキャラはこういう3Dの方が断然、いいのです。
ケイ(蛍にあらず)が気の強い姉ちゃんになってるのはお約束の範囲でありましょう。

ミーメに口があってエルフ耳なのはどうよと思えど、まあありでしょう。
なによりミーメの髪の毛さらさらで絹糸みたいでこれはこれでキレイだったし幻想的で美しかったし。

総じて「よくできました」という映画。
採算がとれるかどうかは別にして(たぶん赤字??)、「アニメ」としてこれは大いにありだわ。
漫画の良さ、デフォルメの良さは実写は否定こそしないが限界はあります。
実写でともすれば無粋になるところを、3Dアニメはカバーできる力を持っている。
こういう試みはもっとあっていいと思う、予算の問題はあるでしょうが。

もちろんストーリーに突っ込みどころが全然ない訳じゃないですよ。
むしろありまくり。
男性のアカペラで歌う「星の果て~を 俺はさす~らう~♪(←歌詞ウロ)」くらい復活して入れてくれたってよかったんだ。
そういう昔のファン向けのサービスは全然足りなかったのは残念。

でも、大いなる挑戦で再び姿を現してくれたハーロックはやっぱりかっこよかった。
昔、ハーロックのアニメを毎週楽しみにしていた自分にとっては、それでもう十分満足なのであります。

by kababon_s | 2013-09-17 20:32 | Cinema/TV