英国ロイヤルバレエ「白鳥の湖」:ロットバルト無双!

7月12日、英国ロイヤルバレエ団「白鳥の湖」、ダウエル版です。
英国ロイヤルで昔踊ってた、私的には英国ロイヤルDVDピーター・ライト版「くるみ割人形」の名ドロッセルマイヤーでお馴染みのダウエル振り付けに加え、アシュトンやビントレーという英国が誇る名だたる振り付け家も一部参加している、まさに「英国の」白鳥の湖です。

本来のキャスト、コジョカル&コボーに代わって、当初はロベルタ・マルケス&スティーブン・マックレーと発表されたものの、結局マルケスが足を痛めていた、ということでサラ・ラム&スティーブン・マックレーとなりました。
本来それぞれ別のパートナーと白鳥を踊る予定の二人ですから、急造カップルです。
私的にはアリスも白鳥も結局サラ・ラム。
まあ今回はサラさんにご縁があったんでしょう。

とはいえ「白鳥」自体は、さすが英国演劇の国というべきか、舞台の至る所に仕掛けがあり、また小芝居も効いてるから舞台のあちこちに目がいって困る(笑)。
こういう見るところがたくさんある舞台ってのはほんとに好きですよ。
というか、こういう「見るところがたくさんあるバレエ」こそ、私が好きなバレエなのかもです。

ロイヤルの白鳥、衣装は19世紀頃ゆえに王子一同は軍服風の衣装。
淡い中間色の色彩や鉄パイプというかスチールアートを駆使した背景が、なんか英国世紀末風のテイストでかなり好みです。
家庭教師も英国紳士で、チャーミングで萌えますわな。

でもこの日はもうすべてギャリー・エイビスさんのロットバルトが持っていきました(笑)
ギャリーさん、確か昔Kバレエにいたよな…と思いつつ、なんか懐かしい。

2幕、衣装がとろろ昆布とかあちこちで言われまくってますが、私的には戦国無双というか「ポケモン+信長の野望」の長曽我部元親ならぬモトチカ。
…ってことは、モトチカがとろろ昆布なのか?

ともかく三味線抱えたモトチカの「奏でよう…!」という台詞がまんま聞こえてきそうな、ロットバルト、もう出てきた途端視線が釘付けです。
それでも2幕まではちゃんと姫も王子も真ん中にいたんですが、2幕ラスト、モトチカ・ロットバルトの腕の一振りで姫があっという間に白鳥に。
魔力見せつけられたー、と同時にサラ・ラムもすごいんですが。
とにかくロットバルト、すごい存在感です。

勢いそのままに3幕はもう完全モトチカ・オンステージ!
出で立ちがモヒカン頭に黒マント、黒パンツとか、もうどこのおパンクロックシンガー崩れ…という感じではありますが、モトチカ全開!
「奏でよう…!」
「刻み込め…!」
「ふっ、上等!」
とまあ、いちいち脳内台詞オーバーラップ状態で、腕の一振り、指の一動きで場を支配しちゃってる。
さらに威圧感だけでなく、子役のちび悪魔の頭をさりげにナデナデする萌ポイントも忘れない。

しかもこの英国ロイヤル版はスペインもマズルカもチャルダーシュもナポリも、全てがロットバルトの手下。
スペインがロットバルトの手下というのはよくあるけど、この場合、6人の花嫁候補以降の踊りは全てロットバルトの世界な訳です。
なんたるロットバルト無双!

また王子的には6人の花嫁候補がみんな同じ髪型、同じドレスで「どれも同じ」「ウルトラ没個性」がいかんなく強調され、しかもそれぞれが獲物を狙う狩猟獣のように「俺、俺!」と迫ってくるわけですよ。
妙にリアリティがあって、どれだけ王子四面楚歌w
いやもう、マックレー王子の露骨に嫌そうな顔が激ツボでした。
「ここから逃げ出したい」オーラが紛々と満ち溢れててもうね、楽しすぎるw

なもんですから、やはりオディールにだまされてしまうわけですわ。
舞台は全て整っていた、みたいに。
モトチカ・ロットバルトはでも、スペインだのが踊ってるときは「奏でよう…!」とばかりに、オーケストラをも支配するような勢いですが、王子のヴァリエーションの時とかは微動だにせず、冷ややかに見ているわけです。
これがまたゾクゾクする。
王子は自分の意志で墜ちていったわけですよ。
3幕最後のオディール退場も、スペインだのマズルカだのの手下たちに高々とリフトされて、もう劇場中に高笑いがこだまするようです。
圧倒的な、黒の勝利。

ですからもう、4幕は悲劇しかないだろうと。
オデットも王子も見事なダイブで身投げです。
「オデットの死とともにロットバルトの魔力も弱まる」という設定で、その弱ったところに、残された白鳥の群に囲まれはたき殺されるのかツツキ殺されるのかはわかりませんが、とにかくロットバルトも破れます。
物言わぬコールドバレエの一群がこんなに恐ろしいと思ったことはない。
4幕を真剣に見る「白鳥」自体も久々でした。

ラストのあの世の2人の姿がまたなんだかバーン・ジョーンズを思い出すような色彩。
いいわぁ、田園的英国世紀末…(//∇//)

総じてかなり好みの「白鳥」。
やっぱりね、誓いを破ってもぐるぐる回ってロットバルトの羽むしってハッピーエンドより、たとえ悲劇でも圧倒的に説得力があります。
ストーリーとして成立してる。
いや、ハッピーエンドでもちゃんと説得力のある演出をしてくれればいいけど、どうもその辺のところが弱いのが多すぎるんですよ、「白鳥」は。
ものによってはロットバルトの死骸が幕が下りるまで真ん中で転がってる、ってのもありますもんね。
視覚的にも舞台芸術的にもどうよ、とか思うわー。

というわけで。
たっぷり楽しませていただき満足ではあれ、やはりこれだけすごいロットバルトを見てしまうと、あの熟達の、演技達者なコジョカル&コボーの二人だったら、この悪魔にどう立ち向かい翻弄されていったのだろう…とどうしても思ってしまいます。
未練がましいけど。
主演2人の急造感も否めないし。
ああもう、いろいろ未練の夏だわー。

というわけで、2013年英国ロイヤル祭りは終了。
でも相変わらずチケットがべらぼうに高い。
上の方なんか、もう少し安くてもいいと思うんだけど。
それでも大入りになっちゃうから、また値段が上がっちゃうんだろうなぁ…(-_-;)
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by kababon_s | 2013-07-26 02:07 | Ballet