マリインスキー・バレエ2012:休日の「白鳥の湖」「バヤデール」
11月17日(土)のマリインスキー・バレエ「白鳥の湖」、24日(土)の「バヤデール」に行ってきました。
白鳥はスコーリク&シクリャーロフ組、バヤデールはコンダウーロワ&イワンチェンコ組。
両者共通なのは、それぞれに今後の可能性的なものは見いだせたけど、でもあまりこういうことは言いたくないのですが、やはりロパートキナやヴィシニョーワより高いチケットを払って見るにはまだ、値しない、ということ。
というか、「マリインスキー・バレエ」という看板だけで高額払って来る客はもういないんだな、という現実を実感した公演でもありました。
なもんで、2つまとめていきます。
●「白鳥の湖」スコーリク&シクリャーロフ組
何のかんの言って、やはりマリインスキーの白鳥は王道です。
こういう王道的な白鳥の演目を見るのも、結構久々だったので楽しかったですよ。
個人的な注目は王子役のシクリャーロフでした。
一昨年のボリショイ&マリインスキーガラで見て以来、なんか気になってたところに、おそらくサラファーノフのミハイロフスキー移籍で、一躍プリンシパルに。
ボリ&ガラでは「楽しみな、興味深い若手」だったゆえに、それから程なくの昇進は「早すぎ?」とも思いましたが。
この日の彼は、一番元気。
一番のびのび溌剌としていて、何より舞台を楽しんでいる。
少なくともこの日のメンバーの中では、ダンサーのオーラとか、ふっと目がいく存在感がやはりありました。
何より風貌が、近来珍しいくらいの絵に描いたような王子です。
髪型がオールバックとはいえ、なんかまだ少年っぽさが残る感じで、まだ遊び足りないやんちゃ王子、でもママ大好き、みたいなジークフリード(笑)
一目見て「あ、こいつにはオデットは救えねぇ」というチャラっぷりも、それはそれでよかったんですが。
残念ながら(?)マリインスキーの白鳥はハッピーエンドなんですよね。
オデット役のスコーリクが細身で、またはかなげな感じがしたもんですから、この2人なら悲劇バージョンの方が似合うんじゃないかと思ったりもしました。
そのオデット/オディールのスコーリクが、残念ながら本調子ではなかったのか。
すごく緊張していた感じがあって、また登場したとたんの転倒で、まあまたもこちらは心臓が止まりそうになったわけですが、でも体型は後ろのコールドの方々を含めても、誰よりも細い。
キャラ的には悪くないです。
そして2幕より3幕、3幕より4幕の方が良く、最初の転倒がなければ、すごくメリハリの利いたオデット&オディールを見せてくれたのではなかろうか。
カテコの時に表情がすごく固くて、作り笑い的だったのが印象的。
本人、非常に不満な出来だったのでしょうなぁ。
●「バヤデール」コンダウーロワ&イワンチェンコ、エフセーエワ
連休中日の24日、この日はもうほんとに会場がガラガラ。
2~4階は人が数えられるくらいで、これでバレエ団の方々はやる気が出るんだろうかと心配するほどです。
というか、こんなに空席だらけのマリインスキー公演って、今まで見たことないわ。
出産等々で出演キャンセルが相次いだことはあったものの、それにしても明らかに、招聘側は価格の付け方やプログラムの組み方を間違ったと思います。
しっかり考えてほしいものです。
それはともかく、バヤデールの方は久々にマカロワ版ではない、マヌーや太鼓の踊りなどがちゃんと付いてるバージョンで、この点で大いに盛り上がれました。
太鼓の踊りはやっぱりかっこいいし、かなり身体能力必要でしょうね。
あれを踊り切るのは、結構大変なんじゃなかろうか。
コンダウーロワは踊りが大きな、ダイナミックな感じで、いわゆる「ロシアのダンサーだなぁ」という印象。
華がありますね、やっぱり出てくると。
メリハリが利いてて、ロパートキナやヴィシニョーワとはまた違ったタイプの人でしょうか。
ガムサッディのエフセーエワはレニ国から来た人ということですが、踊りより芝居というかマイムに結構引きつけられました。
イメージ的には昔の少女マンガに出てくるような、縦ロールヘアのイジワルなお嬢さまって感じ?
「パパぁ~」ってしなだれかかる甘え上手な、無邪気なお嬢様のアイテムフル活用みたいなガムサは、私的には結構ツボりましたね。
「ニキヤ、殺ってやる…!」と拳をあげる一幕終了のシーンは、「白いお嬢様」炸裂で、結構迫力を感じました。
でもエフセーエワ、踊り的には意外と身体も小さいせいか、なんかちょろちょろしてるな、という感じで、逆にその後出てきたニキヤの踊りが大きい…というより大きすぎ?
たおやかな巫女さんと言うより、もう女の執念演歌炸裂って感じでした。
3幕のコールドは、この日はそれなりにまとまっていたとは思うのですが、一方で、でもひょっとしたら新国の方がきれいなんじゃないか…??という思いも頭をよぎったり。
それより3幕のコンダウーロワがまあ上品と言うよりはダイナミック。
ニキヤじゃなくてガムサの亡霊なんじゃないか??と思ってしまいましたわ。
ただこの日はマリインスキー管弦楽団のツアーが終わったせいか、オケの本体がバレエの方に戻ってきたのか、音楽に非常にパワーがありました。
ゲルギー様の指揮じゃないけど、マリ管の音がすばらしかったのもよし、という感じかな。
というわけで、いろいろ「??」てんこ盛りの今回のマリインスキーツアー、明日のガラで終わりです。
でも今ふっと思ったけど、ガラを最初にやって、スコーリクやコンダウーロワをお披露目しておけば、もう少し座席が埋まったんじゃなかろうか…??なんて気も。
まあ、結果論ですけどね。
by kababon_s | 2012-12-01 19:19 | Ballet