2012世界バレエフェスティバル「バヤデール」:ねっとりと&清々しく

世界バレエフェスティバル「バヤデール」8月7日のヴィシニョーワ&ゴメス組、8月8日のコジョカル&コボー組を見て参りました。
それぞれまた両極端な個性のあるバヤデールで、同じ演目でも踊る人によってやっばり違うんですねぇ。

また両日ともブロンズ・アイドルはシムキン君なのですが、彼がまたそれぞれの空気に合わせて踊るんですね。
技巧派系と思ってたけど、こんなに丁寧に、優雅にきっちり踊れる上に、舞台全体の雰囲気をしっかり読んでいるとことろが好感度UPです。
ほんとにすごい子だなぁ。

というわけで、それぞれの感想を。

●ヴィシニョーワ&ゴメス組

なんというか、非常にねっとりとしたバヤデールでした。
ヴィシニョーワは気の強い、凛としたニキヤ。
まさに巫女さん。
大僧正の誘いもぴしっとつっぱねる筋の通った神の踊り子という感じ。
1幕のソロルとのパドドゥも幸せいっぱい。

ただ、ガムサッディが弱いというか、能面というか。
ヴィシニョーワと同等は無理としても、もう少し意志の強さ、お嬢様的高ビーさがあってもよかったと思うのですが。
とにかく表情に乏しくて存在感がいまいちだったのが残念。
ガムサって少しドヤはいってるくらいがいいのかな?

ガムサのベールを取ったときにソロルがはっとするシーンがあるんですが、たぶんガムサの美人さに息をのんだんでしょうね。
でもガムサ自身にそんなインパクトがない。
ガムサが弱いと、ドラマ自体がつまらなくなるんだということを改めて感じました。
むー、「ふたりの王女」@ガラスの仮面。

でもそのおかげで2幕の影の王国がすごく美しく、厚みがある世界に感じました。
いや、コールドきれいだったです。

この影の王国の2つ目のヴァリエーションあたりから、すごく音楽のテンポがゆったりとしてきて、ねちっこくなってっくるんですよね。

そのねちっこさをそのまま3幕のシムキンが引き継ぎ、クライマックスへ。
逆にここまでネチネチしてくると、能面ガムサがかえって怖い。
ゴメスのソロルは、一時は現実を受け入れ、あきらめて前向きになろうかという感じも見えるのですが、ガムサがソロルを見ているときはソロルが前を向いてて、ソロルがガムサを見ているときはガムサが前を向いている…という感じでかみ合わない。
そしてニキヤの亡霊が現れ、ソロルの心は揺れ動き、花籠の真相が判明する。
この最後のシーンもひたすらねっとり、丁寧に踊り込む。
終わってみれば、うはー、と疲れた、でもやはり美しいバヤデールでした。
世界観的には一種正統派。

●コジョカル&コボー組

前日の湿気もどこへやら。
風が吹き、むしろ冷える感じもする2日目です。

コジョカルのニキヤはやはり可憐で上品。
ヴィシ様がぴしっとはねのけた大僧正のアタックもやさしく静かに拒否です。

この日のガムサッディは田中さん。
やはり彼女はぴしっと芯の通った、ガムサらしいガムサでした。
上から目線のお嬢様で、女の戦いも迫力がありました。
短剣をふりかざしてついハッとするニキヤに、「あんた今何したよ!?」と逆に迫るガムサ。
やっぱりガムサはこれくらい怖い方がいいわ。

それより、わかっていたけど(笑)やはりコボーのソロルは最初からニキヤ一筋。
ガムサには目もくれませんし、思えば1幕のパドドゥだけが、二人がにこやかに笑っていた最初で最後のシーンでした。

権力に引き裂かれる愛ってんでしょうかね。

ニキヤが毒蛇に噛まれても助けることさえできず、ガムサを連れて退場を命じられ、阿片に溺れて見る影の王国の幻影が切ないこと…。
一人暗闇に取り残されて踊るソロルの姿にはもう、泣けました。
なんという孤独感。
なんというやるせない無情感…。

3幕の結婚式なんてもう、だから現実はほとんど残っていなかったのではないでしょうか。
なんだかもうろうとして、薬中のまんまのソロルです。

そして現れるニキヤの亡霊なんですが、この肉体感のなさは何??
本当に幻影がただよっているようなコジョカル、すごすぎる。
真実を知ったときのソロルの、誓いの時に天に向かって手を上げるシーンはもう、なんか覚悟の誓いのようです。
そしてその願いを聞き届けたかのような、天の雷。
ラストシーンの、天に召される二人のあの清々しさはなんでしょう…。
すべてを濯ぎ落として、純粋な「愛」だけが昇華していく美しさでした。

気づいてみれば、コボーの演技にただただ目を奪われ、コボー中心で舞台を追っていました。
わかってたけど、改めてこのヨハン・コボーという男のすごさも知ることになったバヤデールでした。

というわけで。
今回はBプロが見られないのですが、16日のガラは行きます。
Aプロの感想は書き損ねました。
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by kababon_s | 2012-08-10 05:09 | Ballet