シュツットガルト・バレエ団「白鳥の湖」:王子VS悪魔の物語

6月6日、シュツットガルト・バレエ団のクランコ版「白鳥の湖」観てまいりました。
王子VS悪魔の物語っていうのか。
面白いは面白いが、ただ一方では「むー」というところもあり、でも見て良かった…というのが正直なところですかねぇ。

いや、王子が悪魔に敗北して溺死するとか、白鳥も黒鳥も悪魔が作り出した幻とか、そういう解釈はとても面白い。

1幕はとにかく王子中心の踊り。
何が何でも、このストーリーの主人公は王子であるよといってる感じです。
宴もたけなわのところに、妙に威圧感のあるママンが登場し、結婚しろという。
「お前ももう大人なんだから」と言う感じ?

2幕の湖。
ロットバルトの存在だけで、もうその湖は彼の魔力に覆われた、彼のテリトリーという雰囲気。
そこにオデット&白鳥の群れが現れます。
この辺りはオーソドックスな「白鳥」ではあるのですが、このバージョンは心配した友人&お付きが王子を追って湖までやってくる。
そして白鳥の群を射殺そうとするのを王子が制するのですね。
ひょっとしたらお供の連中には白鳥ではなく化け物に見えていたのかもしれない…??

3幕はお馴染み結婚式の場面ですが、オディールは悪魔のマントから現れ、悪魔のマントの中に去っていく。
現実じゃないんですね。
本当に、悪魔の創りだした幻影。
終始悪魔に翻弄される王子です。

そうなるとオデットも悪魔の力によって白鳥に変えられた姫なのか、それとも最初から悪魔が創りだした幻影なのかわからなくなってきます。

現実逃避してしまった王子の末路…??
悪魔に敗れ、湖で溺死する王子ですが、これはこれで取って付けたようなハッピーエンドより、全然面白いと思います。
この話はこれで説得力はあるですよ。

ただ、音楽だ。
いや、曲順の組み替え・順番の入れ替えはよくあること。
というか、「白鳥の湖」という古典作品自体が、そもそもチャイコフスキーが最初に作った曲の順番などを相当に入れ替えたうえで成功にこぎ着けたものだから、その辺は全く許容範囲なのですね。

4幕の音楽が1幕に来たり、ボリショイ版の黒鳥のヴァリエーションの音楽も1幕に来たり、3幕の王子のヴァリエーションはパドトロワだったりと、まあこうして挙げてみるだけでもずいぶんと組み換えはある。
遺伝子組換え白鳥(笑)

でも「おお、ここでこの曲を持ってくるのか」とか「この曲をここで持ってくる意図は何ぞや」と考える面白さはありました。
お気に入りの1幕のワルツやハンガリーの踊りがスルーされていようが、それも飲む。

でもやっぱりヨソから全然違う曲を持ってくるってのが、どうも私的にはやっぱり残念なのです。
どうしたってそこだけ曲風が違って、ずっこけてしまう。
空気が変わってしまう。

しかもそれが4幕のオデットと王子の最後の逢瀬。
使われていた曲は、TL情報によると「ハムレット」だとか。
なるほど、「生きるべきか、死ぬべきか…」的に、王子の運命を暗示する曲ではある。
意図するところも解らないわけではないが、でもやっぱり何か違う、と思ってしまうのでありますよ。

今回は当初予定されていた主演のマリア・アイシュヴァルトが怪我で降板。
それに伴い、王子役のマライン・ラドメーカーも降板し、主演はオデット&オディールがアンナ・オサチェンコ、王子がエヴァン・マッキー。
オサチェンコが正直ちょっと残念だっただけに、アイシュヴァルトがオデット/オディールだったらどうだったんだろう…とは、やっぱり思ってしまいます。
ダンサーが怪我で降板ってのはよくあることだから、それはそれで仕方がないとは思ってはいますが。

でも。
エヴァンの踊りはかなり好きです。
見られて良かった。
キレというより優雅…というより優しさがあって柔らかくて包み込むような感じがある。
オディールでグランフェッテを回りきれなかったオサチェンコをサポートしてか、即座に自分の踊りに切り替え観客を引きつけ舞台を動かしていったところなんか、すごく場の全体を見て踊ってるなぁ…という感じがして、敬服です。
プロだ。

ただ、今回描かれている「王子」のキャラが、いろいろある「白鳥…」の王子のなかでも相当にヘタレ度の高いキャラなので、ベビーフェイス的甘顔金髪王子のフォーゲルの方が、「ヘタレ度」という意味では、よりハマってたのかも…??と一瞬思いましたが(苦笑)
エヴァンはどっか紳士的な感じ。
彼は東京バレエのオネーギンでゲスト来日の予定がありますが、これはかなり楽しみになったりしましたね。

んなわけで。
いろいろ思うところはたくさんあったクランコ版の白鳥でした。
でもスペインの踊りがベラスケスの絵にでてきそうなスペイン貴族騎士だったり、ルースカヤのお付きの女性たちの衣装がミュシャのスラヴの絵にあるようなドレスだったり、1幕の娘たちのドレスにレースの花柄が刺繍してあったりとか、いろいろ楽しめるところはありました。
ママンの愛人のようにも見える大臣はクラナッハの絵にでてきそうだったし。
いや、衣装は色彩もデザインも良かったですよ。
やっぱ、見に行ってよかった。
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by kababon_s | 2012-06-09 01:41 | Ballet