ウィーン国立バレエ「ウィンナー・ガラ」:ウィーンらしさとルグリ様

4月24日、ルグリ様率いる…というか、ルグリ様が手塩にかけて愛情をそそぎ込んで育てているウィーン国立バレエ団のウィンナー・ガラに行って参りました。

休憩などを含め4時間弱という、ガラ公演としてはかなり長いプログラムでしたが、ルグリ様登場のサービス・プログラムもあって、非常に濃い舞台でした。

いや、正直プログラムを見たときはコンテンポラリーが多めで、クラシック系は最後の「ライモンダのグラン・パドドゥ」だけ。
コンテンポラリーも好きだし、現代はコンテンポラリーに比重が寄りつつあるご時世とはいえ、やっぱりクラシックも見たいな~、なんて思っていたのですが。

終わってみれば「ウィーンらしさ」も香る、「ウィーン国立バレエ団ってこういうカンパニー」というものも感じられるいい公演だったと思います。
ほんとに満足度高し。

堅めで生真面目なイメージのあるドイツ語圏ですけど、ウィーンもといオーストリアはとても陽気で気さくで、「奴らはドイツ語を喋るイタリア人だ」という人もいます。
それでいて仕事はすごく真面目で、かつ伝統とお気楽ライフスタイルを上手に使い分けていて、私的にはとても居心地のいい国の一つなのですが。

実際日本人ダンサーが名前がでているだけで4人もいたように、生粋のウィーンっ子、オーストリア人がカンパニーにどれだけいるのかはわかりませんが、でも、彼らは歴史と伝統とモダンが程良くミックスするウィーンの空気を吸っているからでしょう。
オーストリア的なテーマも程良く取り込んだ今回のガラは、そんな「ウィーンらしさ」「ウィーンの風」も感じられ、あの国立劇場で見てみたい、と思わせられる味わいがありました。

そのひとつが「マリー・アントワネット」
ルグリ様とはおなじみのパトリック・ド・バナの作品です。

アントワネットの出身はオーストリア。
ド・バナがウィーン国立バレエ団のために振り付けた作品で「時」というよりは「運命」に翻弄されるマリー・アントワネットとルイ16世の踊りです。
アントワネット役のオルガ・エシナが、金髪で、スタイルがよくて、かわいらしい美人さんという感じで、アントワネットらしかった。

またロッシーニの「泥棒かささぎ」を使った「スキュー・ウィフ」が、モダンでコケティッシュなテイストで、みんなすごく生き生きと踊っていて、すごくこのカンパニーに合っていた。

同様に、3部の「精密の不安定なスリル」も、重そうで小難しい哲学的なタイトルとは裏腹に、軽快な作品。
これがまた、生粋のウィーンっ子、シューベルトの音楽に乗って、やはり団員がとても楽しそうに踊っているんですね。
ウィーンの息吹をすってプロのダンサーとして生きている人たちの踊りというのでしょうか。
しかもこの作品、日本人ダンサーが3人も入っている。
なかでも前回のルグリ様公演でも来日した木本全優君がすごくよかった。
前にシルフィードのジェームズで見たときは、少し細っこい感じがしたんですが、しばらくぶりに見てすごくたくましく、貫禄がついたというのでしょうか。
次に見るのが実に楽しみです。

先日新国立劇場でも上演されたエイフマンの「アンナ・カレーニナ」の、アンナとカレーニンのパドドゥも、カレーニン役のエノ・ペシがすごかった。
わずかの時間ながらもすごく重厚なドラマが感じられて、全幕見てみたいと思わせられました。
エイフマンの作品は、本当に、極端に、カンパニーの数だけ違ったものになりそう。
本家ともども、いろいろ見てみたいです。
来日してくれないものか、エイフマン。

そしてフィナーレを飾ったライモンダのグラン・パドドゥ
今回唯一の古典作品ですが、終わってみれば古典を持ってくるならこれしかなかったかも、と思いました。

「ライモンダ」の一番大きな特徴であるハンガリアン・テイストは、本国ハンガリー以外では、多分一時ハンガリーと二重帝国を形成していたオーストリアは(いろいろ問題はあったとはいえ)相当に身近なものでしょう。
あのハンガリー風の衣装もすごく様になってて、ロシアのバレエ団で見るより、マジャール・カルチャーのリアリティが感じられました。
でもって主役のライモンダとジャンの設定はフランス人。
ルグリ様&ウィーン国立バレエ団のフランス&オーストリアミックスらしくて、なんか妙にうれしかったなぁ。

ほかの作品ではパトリック・ド・バナの新作「白鳥の王」の、病めるルードヴィッヒ2世のルグリ様が素敵すぎ。
この人の表現力と、「踊り」「舞台」に対する全力投球っぷりは、本当にいつも頭が下がるし、敬服します。
素晴らしいです、本当に。
尊敬します。
涙出ます。

作品自体は登場人物がルードヴィッヒ2世にオーストリアの皇后、シシィことエリザベートに、死の誘惑の象徴ともいえる「湖の貴婦人」。
ルー2世とシシィがいとこ同士というのは史実だし、ルー2世の死にシシィが衝撃を受けたというのも事実。
シシィ自体もレマン湖畔で刺殺されているので、関連性はあるんですが、シシィを登場させるというのにちょっとやりすぎ感が否めなくもない、という感じではありました。

でも「湖の貴婦人」ニーナ・ポラコワがとても存在感があり、湖もとい死の世界を感じさせる青ライトも甘美な誘惑のような怪しさ、とても美しい。
ワーグナーの音楽が合いすぎ。
ってか、ルードヴィッヒ2世には、もうワーグナーなんだろうな。
いや、もちろん「幻想 白鳥の湖のように」なる、まったくチャイコフスキー音楽の作品もあるけれど、つまりはルー2世には甘美なお耽美系が実によく合うということか。

何より今回、一番すばらしかったのはルグリ様も登場した「イン・ザ・ナイト」でした。
ショパンのノクターン4曲に3つのカップルが登場する小作品。
それぞれの章にドラマがあり、それが最後に交錯し、まるで街中で人々がふっとすれ違うような美しい、静かな世界を思わせるような後味。
ウィーンの方々もなかなかやるな、と思っていたけれど、ルグリ様が出てくるともう全然違った世界になります。
やっぱりルグリ様はすごい。
格が違うとはこのことか。

ともかく、たっぷり楽しめた4時間でした。
ルグリ様&団員のみなさん、本当にありがとう♪

このあとはルグリ様登場の「こうもり」を見に行きます。
ウィーン国立バレエ団、独自の個性があるというのは、とてもよくわかった。
ルグリ様なしですばらしい演目が上演できたときが、本当に一本立ちなのかもですね。
でも日本に来るなら、ルグリ様も踊ってほしいと、やはり心底切に思ってしまいます。
[PR]

by kababon_s | 2012-04-28 23:16 | Ballet