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ボリショイ&マリインスキー合同ガラAプロ:そして時代は変わりゆく

ボリショイ&マリインスキーのAプロです。

こちらはボリマリ4人の「パ・ド・カトル」で開幕。マリ・タリオーニやルシール・グランなど、名ダンサーへのオマージュとも言える作品です。
踊り手もロパートキナやオブラスツォーワ、ステパネンコ、ニクリーナと豪華極まりない。
こんな共演、というかそもそもボリマリ合同ガラみたいなものが本家ロシアでも滅多にないそうで。
いやあ、日本に住んでて良かった!?

華麗な4人のダンサーのあとに華々しく登場したのはサラファーノフ。
「眠れる森の美女」三幕のグラン・パドドゥだ!
デジレ王子キタ━ヽ(ヽ(゚ヽ(゚∀ヽ(゚∀゚ヽ(゚∀゚)ノ゚∀゚)ノ∀゚)ノ゚)ノ)ノ━!!!!

思えばサラファーノフに決定的に惹かれたのはこの「眠り」三幕のグラン・パドドゥでした(泣)
踊ることがシアワセで楽しくてしょうがない!!というハッピーオーラを「これでもかぁっ!」というくらいに放出して踊ってた。
以来、このグランパドドゥは私のなかでは「シアワセのグラン・パドドゥ」なのです(笑)
彼が移籍を決めて転機を迎えるこの時期に、もう一度このシアワセオーラに満ちた演目が見られたのも、何かの巡り合わせかな。

二幕はシクリャローフのソロで始まりました。
コンテンポラリー作品「ナルシスへのレクイエム」。
若いでしょうこの人。
もうソロ作品持ってるの??

実は今回極めて個人的に引っ掛かったのがこのシクリャローフ君です。
Bプロ「パピヨン」のソーモワ相手に踊ったわけですが。
可もなく不可もなく…というかいや、海のものとも山のものともつかないというか、しかし何だろうこの不思議なというか奇妙な存在感は…??という妙な印象が残ったのですよね。

が、ソロ演目「ナルシスへのレクイエム」は妙にがっつり心を鷲掴みにされました。
ナルシスだから鏡をモチーフにしているものの、「僕ってキレイ?」のナルシスではなく、赤裸々に己を見つめ過ぎ、あるいは対峙し過ぎて破滅するような、心の闇と向き合うかのようなものを感じました、見た時は。
プログラムによるとこの作品を見て「ドリアン・グレイの肖像」を連想する、と言われてもいるようで、ナルホドと思った次第です。
美と醜、善と悪、罪と罰か。
妙に似合うぞ、このアヴァンギャルドというか病みっぽい雰囲気が。

この「ナルシスのレクイエム」は2009年にモスクワのコンクールでダンサー、振付家共々第一位を取った作品だとか。
ナルホド、シクリャローフ君は期待の若手ということか。

そしてこの振り付けをしたのが元エイフマン・バレエ団のスメカーロフ。
彼は今回のガラでオブラスツォーワ&セルゲイエフが踊った「別れ」も振り付けていました。

「元エイフマン・バレエ団」と聞けば黙っていられない!!
気になって調べてみると、2006年にわざわざソウルまで見に行ったエイフマンバレエの公演でチャイコフスキーのタイトルロールを踊ってたんですね、スメカーロフは。
そうだ思い出したぞ。
非常にドラマチックな病めるチャイコフスキーだった。
最初は抑えているのか、大柄なのにおとなしく病んでいるなぁと思ったのですが、次第に…というかいつの間にか引き込まれ、いつもの通り激しく、かつロマンチックに病んで大いに盛り上がって終幕を迎え、見ているこちらは例によって頭ボヨボヨ…という舞台だったっけ…。

つまりスメカーロフ、エイフマンバレエのトップからマリインスキーに入った人で、マリインスキーではセカンドソリストからのスタートらしい。
階級があるゆえこれからクラスを上げて行くのでしょうが、一方でエイフマン・バレエ団叩き上げの“振り付け家”としての部分を高く買われているのだろうか?
となると今後マリインスキーもかなり相当コンテンポラリーに力を入れてくるということでしょうかね…??
マリインスキーが見ている「時代」はコンテンポラリーか。

というわけで。
そのシクリャローフ君、素晴らしいナルシスだったので、三幕のチャイコフスキー・パドドゥも期待したんですが、なんか「??」という感じでごじゃりました(^_^;)
まあ、まだこれからというこったな。
いずれにしてもスメカーロフ&シクリャローフ共々、サラファーノフが移籍したあとのマリインスキーでは私的注目ダンサーになりそうです。

さてそのサラファーノフ。
マリインスキーのサラファーノフとしておそらく生で見る最後の演目はテリョーシキナとの「タランテラ」でした。
ブラボーだよ、ブラボー!
あのアクティブな音楽に伸びやかにノリまくって、踊るのが楽しくて仕方がないという持ち前のオーラ炸裂!
Aプロはホントに彼に合ういい演目でした(爆涙)
というか、こうして両プログラムを見てみると、本当にマリインスキーの中で彼の個性は際立っていたんだなぁとつくづく思いました。

三幕はもう見せ場が目白押し。
ボリショイ組の「スパルタクス」はBプロ「パリの炎」に続く、漢臭さムンムン漂うパワフル・バレエ。
ニクリーナ&ロブーヒンで、特にロブーヒンはこの「スパルタクス」を踊りたくてボリショイに移籍したのだとか。
漢臭ムンムンの演目もボリショイの味なんだな~!
ぜひ日本公演に持ってきてもらいたいもんだ。

マリインスキー組(オブラスツォーワ&セルゲイエフ)のラトマンスキー版「シンデレラ」もまた情緒たっぷりというか、セルゲイエフってこんなにスマートないい紳士だったか…!なんて今更ながらに気付きました、スイマセン。

待ちに待ってたのはロパートキナ&コールプの「ダイヤモンド」。
ああもう、美しい宝石の輝き。
Bプロのコメディとはうって変わった、このペアならではの優雅さと気品。
宝石の透明な音すら聞こえてきそうでした…。
本当にロパ様もコールプ様もすごい。
ってかすごいペアですね、こうして改めて名を連ねてみると。

そしてAプロ大トリはボリショイ組の「ドン・キホーテ」。
いやもうただでさえ盛り上がるグラン・パ・ド・ドゥをオーシポワ&ワシーリエフが見せる魅せる!
黒の衣装で少し引きしまったワシーリエフが鬼回転で沸かせてくれますぜ。
あの体格で、それでもまだかっ飛ぶんだからすごいパワーだ、ワシーリエフ!
ハラショー!

というわけで、激絶堪能のボリショイ&マリインスキーガラでした。
果たしてサラファーノフに次ぐ個性あふれるダンサーが出てくるのかどうか??
そしてボリショイは次の公演でどんなプログラムを持ってきてくれるのやら。
2012年の1~2月にボリショイ、11~12月にマリインスキーが来日するのだとか。
先は長いが、その時までにそれぞれどんな進化をしているのか。
楽しみです。
仕事する意欲はここに繋がる。

by kababon_s | 2010-11-01 23:17 | Ballet