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国立劇場バレエ団「こうもり」:表現はさらに進化する

新国立劇場バレエ団「こうもり」、結局全キャストを見てしまいました(Z券含む)。
特設サイト

http://www.nntt.jac.go.jp/ballet/komori/

今まで「こうもり」は過去の新国や海外のも含め何度も見たことがありますが、こんなにおもしろい演目だったか、と今回の公演で初めて思いましたね。
しかもどのキャストもそれなりに味わいがあり、脇の子達含め隅々まで小技が行き届いている。
すごいなぁ、ここの皆さんは…。

この「こうもり」、姫でも王子でもなく、倦怠期の夫婦、という設定。
しかも子供が5人もいるってことは、めちゃめちゃラブラブだった時代が確かにあったわけですね。
そういう「大人の奥さん」ということゆえ、さらなる演技表現をさらけ出すことが求められていたのだと思いますが、主演の…特にベラ役は日本の女性はもとより日本人が最も苦手とする(であろう)濡れ場(笑)シーンなんかもあるわけで、そしてそこに真正面から挑んでいる。
これでまたバレエダンサーとしての幅をまた大きく広げたのではなかろうか。

またここにウルリックという、(基本的に)密かにベラに思いを寄せている友人が絡み、ストーリーに幅を広げます。
ウルリックも、そしてマキシムのギャルソンやお客、仮装舞踏会にしても、みんなそれぞれ好きなようにやっているようで、見るところがたくさんある、新国らしい楽しい公演でした。

そして最終日4月26日は湯川さんの引退公演ということで、今まで体験したことのない独特の空気の中での一体感がありまして、これは後日また。
まずは3キャストを。

●コルネホ効果と絢子さんの進化

ベラが小野絢子、ヨハンがエルマン・コルネホ、そしてウルリックが福岡雄大というキャスト。
いやいや、コルネホが色っぽいし、小さいのにぎゅんぎゅん飛ばして跳んで、さすがだなぁと。
初新国、初こうもり、ということだったようですが、最後まで仏頂面のヨハンを崩さなかったのはコルネホ解釈でしょうか。
彼は新国でもう一度見たいですね。
意外とキャラ合うんじゃないかしら。

そして最近いい具合に女らしさを醸し出してきた絢子さんが奥さんとなって、またぎょっとするような色っぽさです。
くるみシーズンは子ネズミとなってホワイエをうろつくおちゃめな絢子さんゆえ、彼女はどんな役でも楽しんでこなす受けの広さがすばらしい。
そしてその受けの広さが、いい具合に奥さんにもなっている。
さらに変身してからのコケティッシュな魅力はプティの世界の女性そのもので、またコルネホとの留置所のパドドゥの色っぽさ……というよりはもう何もかもさらけ出した2人の世界は、なんだかこちらまでドキドキが止まらないような表情です……(//∇//;)
一体絢子姫はどこまで進化するんでしょう。

またやはり、良くも悪くも話題の雄大ウルリック。
やはり雄大というべきか、ファーストキャストながらかなり色物ウルリックです。
ドン・キホーテでイケメンのエスパーダをギャグキャラにしてしまった雄大だから驚きはしませんが、彼のこういう創造性はほめるべきか…。

ともかくベラへの思いを秘めていない。
あからさま。
厚かましく図々しくて、人の家に毎晩上がり込んではカツカレー三人前くらいしれっと平らげて帰っていくようなオジサンというのか。
しかもメイクがエノケン。
欧米人に比べてコミカル演技が苦手な日本人ゆえこういうメイクにしたのかどうかはわかりませんが、雄大の場合、これが相乗効果でいっそう奇妙キテレツ(笑)
世界中探してもこんなウルリック、いないだろうなー。
いろいろこの男は「すごい」です。

●上司の娘は女王様

心配していないけど、でも一番懸案だった唯ちゃんのベラです(どっちだい)。
少女っぽいのにオヤジ殺しの彼女がどう倦怠期の奥様を演じるのか興味津々でしたが、さすが演技達者の唯ちゃんといいますか。
彼女なりのアンバランスな色気に女王様キャラというのか、一番インパクトがあったのが、留置所で旦那をしとめて「ニヤリ」な表情です。
実に唯ちゃんキャラ。

菅野ヨハンはやはり王子キャラじゃない方が彼には非常によくあって、唯ちゃんとのペアは予想通りというのか、やはり上司の娘と結婚して出世街道に乗ったは良いけど、やっぱりなんか足りないんだよ的雰囲気がぴったりはまります。

またこの日は子役がなかなか上手で、くしゃみのタイミングとか、ご飯の最中に踊り出す踊りもいい感じでした。

そしてメイドの今村さん。
彼女は人との呼吸にあわせるのが、つまり空気を読むのが上手なのか、演技達者なところを見せてくれました。
意外と演技面で彼女はもっと伸びるんじゃないでしょうか。

なにより八幡ウルリックが良いウルリックです。
ウルリックとしてはやはり八幡君の味わいが一番、ウルリックです。
秘めた思いが暖かくて、これはもう八幡キャラの真骨頂のような味わい。
ぜひ友達にほしいです。

●杞憂だったルミ子&賢也

本島ベラと井澤ヨハン。
ベテランお姉さまのもとじーに新人ピチピチ井澤っちということで、ルミ子&賢也になったらどうしよう、なんて思っていましたが、まったく杞憂でした。

卒なく踊る、でもおそらくそれが精一杯だったのでしょうが健闘のヨハン。
井澤色というのはまだ見えませんが、こういう舞台で新人で卒なく「良」の評価を得られるのは、これはこれでやっぱりすごいことです。

そして今回面白かったのは、相手がそういう若いヨハンだったからか、本島ベラがどんどんキュートにかわいくなっていくところなんですね。
元々美人さんの本島さんが、ドヤ顔を覗かせつつもすごくかわいらしいベラになっていく。
これが相乗効果?
井澤色はまだ見えないけれど、パートナーのお姉さま方の魅力を引き出すのも王子の大事な役割ですから、そういう意味では今回の井澤君はよくやったといえるかも。
でもワルツ一番下手でした(笑)
まあ仕方ないな、後ろの方々は毎回散々踊っているんだから。

この日のウルリックは福田圭吾君(最近弟君も出てきたので区別しないとな)。
世慣れして海千山千という感じ。
しかも踊りはやはりキレッキレでシャープで、音楽によく乗った軽快さが実に圭吾らしかった。

またこの日はZ席で、やはり見切れるんですが舞台がいつもより近かったのですよね。
ふと顔をあげると小口君が目の前にいて、いろいろ笑いが止まらなかった…(^^;

●個性豊かな愉快な面々

小口君は全日程通してカフェのお客や仮面舞踏会とかいろいろやっているわけですが、小芝居が効いてて、つい目がそっちに行ってしまう(^-^;
仮面舞踏会のとき、最後に輪になって踊る直前に両手でちょちょっと髪を撫でつけて、スーツの襟をピピッと正して、すちゃっ!と輪に入る、この瞬間芸のような動きが特におかしい(すごい、という意味で)。
仮面舞踏会の奇妙な手の振りは妙に真面目な顔してて、フィニッシュポーズのドヤ顔に至るまで、実に堪能しました。
いいキャラだなぁ彼は。

マイレンがギャルソンとチャルダーシュに配され、日によっては両方を踊るという、すごくハードながらも、それでも踊りこなす兄貴のすごさ。
またチャルダーシュのセカンドキャストに池田君が抜擢され、彼も日に日によくなっていきましたね。
特に千秋楽は演技もできてて、どうやらマイレンが演技指導をしてくれたということ。

またチャルダーシュでベラのサポートをするとき、マイレンはウルリック…つまり若手に譲るんですが、池田君はウルリックを制して自分でやっている。
これはマイレンの気配りなのか、味わいなのか。
こういうところになんかほっこりします。

ピンクのスーツ。
奥村君は可愛くて似合うし、輪島さんはセクシーに似合う。

気になったのが新人の中嶋君。
これはバレ友さんとも言ってたのですが、ヘタクソなのに背が高くて、しかも「オレオレ!」とばかりに酔ってるというかKYというかで、目立つんですね(笑)
でも萎縮するより、こういうKYっぷりも大事だろうとも思いますし、そういう意味では彼は実にコールドでのびのびと楽しそうにKYしてます。
いろいろ楽しい子が多いです、新国。

というわけで、次は湯川さんの引退の日。
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by kababon_s | 2015-05-24 03:10 | 新国立劇場バレエ