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NHKバレエの饗宴2015:TV必見の幸せな祝宴

3月28日、NHKバレエの饗宴2015に行ってきました。
最初に言いますとTV放送があります。

4月12日(日)21:00 クラシック音楽館
http://www4.nhk.or.jp/ongakukan/


NHKホールはバレエを見るにはでか過ぎてあまり好きじゃないんですが、今年は新国立劇場バレエ団とNoismが出る。
思えばこの公演は第1回を見て以来、この時期はなにかと出張が入ったりで行けなかったのですが、新国とNoismが出るときに日本にいたっていうのは巡り合わせ。
これは行け、ということだ。

そして、行ってよかった!
実にシアワセでした(*^▽^*)
出演は4団体と少なかったのですが、それでも楽しめましたし、何度もいいますが終わったときにはめちゃめちゃシアワセだったんですよ、特に最後の新国の祝宴が。
あの空気をじかに感じられただけでもう、行った甲斐がありました。

特に「眠れる森の美女」の3幕、宴ですね、結婚式の。
シアワセいっぱいです。
この切り取った舞台を、でも「饗宴」というお祭りプログラムに仕上げ直してきた新国ダンサーさんたちに敬服します。

この「眠り」、2014年秋に新制作された新国版です。
全幕通せばつっこみどころや修正希望箇所(特に宝石の衣装)は多々あるのですが、それでも新国素敵ダンサーさんたちのクオリティが素晴らしく、またレベルが高いということを改めて実感できました。
ファンとして彼らを誇りに思いましたし、ドヤ!(`・∀・´)とばかりに胸を張ってしまいましたね。
この舞台がTV放送され、新国のバレエ、ダンサーさん達をたくさんの人に見てもらえると思うと感無量です。
泣きたいくらいうれしいです。
日本で最高レベルのバレエ団である、これを「知ってもらうこと」はすごく大事ですよ。
というわけで、プログラム順に。

●パキータ/牧阿佐美バレヱ団

主演の青山&菊池さんは良かったです。
パドトロワの男性、清瀧君もあるお教室のゲストで見たときに腹周りがぶよってて結構ショックだったのですが、今回は絞れて、衣装も黒だったのもあっていい感じでした。
やっぱり牧でトップを張っているだけあって、菊池&清瀧君は身体も柔らかく跳躍もきれい。
青山さんの根性がにじみ出るようなグランフェッテも拍手ものでした。

ただ全体的には主演2人とトロワの男性にゲストを呼んだお教室の発表会のようで、「まだおわらないかなー」と思ったのが正直なところです。
きれいに踊るの(だけ)が取り柄の牧なのに、きれいに踊れなくちゃお話しにならんわー。

●Supernova/Noism1

金森さんの新作。
これが(も)見たくて行ったのですが、さすが斜め上の金森クオリティというのかNoismクオリティというのか。

タイトルからしてNoismならではの強靱な身体能力を生かしてアクティブでスピーディーな作品なのかと思ったら、動きはスロー系。
こうくるかー!
しかも真ん中の超新星、井関佐和子さんは頭からすっぽりと白い網タイツをかぶったようなびっくり衣装です。

それでも幕が上がり、次第に浮かび上がる佐和子さんの姿は、立っているだけで「井関佐和子である!!」というオーラと存在感を放ち、それだけでまず「ゴクリ」。

柔らかい暖色のライトが移動する様は新星の膨張でしょうか。
伸縮を繰り返し、しかし強力なエネルギーを内に秘めながら漆黒の宇宙空間で怪しくうごめくような超新星。
黛さんの「G線上のアリア」という、これまたゆったりと、不気味な不協和音をとどろかせる曲が、新星のうごめきにさらにエネルギーと計り知れない力を与えているようです。
宇宙の深遠、太古から変わらずにそこにあるエネルギーのうごめきでしょうか…。

ゆっくりとした動きは、でも逆にこれは鍛え抜かれた身体能力がなければコロン!と転がってしまうわけで、かえってこのカンパニーの力量をひしひしと思い知らされます。
ゆったりと、最後までゆったりと、膨張と伸縮を繰り返す超新星は、人の時間に対する地球の時間、宇宙の時間の果てしなさ、広さすら感じさせます。
じっと息を潜めて見入るような15分間。
しかし実に濃い15分間です。
…こわいカンパニーだ…。

●カルメン(抜粋)/下村由理恵バレエアンサンブル

御年おそらく50歳くらいだろうという下村さんの、渾身のカルメン。
振り付けはご主人である萩原聖一さん。
ゲストとしてドン・ホセに新国でおなじみの山本隆之さんと、その上官に牧の森田健太郎。

抜粋版ゆえ、お話はカルメンに惹かれ翻弄される2人の男性との三角関係が中心です。
そして何者にも束縛されず拘束されず、「己の心のまま」を貫く「カルメン」という女…いや魂か?

純情そうなドン・ホセにふてぶてしい上官。
森田さんは牧で王子(言ってて眩暈)を踊ってた頃より、三銃士のダルタニャン等々キャラ役の方が絶対にいいですね。
しかも昔より今の方が断然いい。

カルメンを巡り山本VS森田…というよりは、山本さんが一方的になぶられるだけのエア殴り合いはドキドキします。
そこでなぜ山本さんのシャツをはだける必要があるんだ(//∇//)…というのはさておき、不敵な笑みを浮かべる女性たちのアンサンブルが場の緊張感を盛り上げ、山本ホセがただ一人、悩み、翻弄されていきます。
何より下村さんの年齢なんて全く感じさせない動き、踊りがまるでエネルギーの固まり。
表現者、演技者ってこれか!と唸らせられるほどに、足の一歩、腕のひと振りで物語がぐいぐいと動きます。

カルメンの衣装が途中から赤から白へ。
愛…というより己の心に忠実な純粋さでしょうか。
だからこそ、ホセに刺されたあとのカルメンは、とき放たれた自由な魂のようです。
そして大地を蹴るようなパワフルさから軽やかに、体重を感じさせない下村さんの踊りがまたお見事。
バレエ団って、規模じゃない。
夫婦ですごい挑戦をしているんだなぁ…。

●「眠れる森の美女」3幕/新国立劇場バレエ団

満を持しての登場の新国。
お祭りとはいえ、本気度は半端ない、真剣超全力投球です。

なんせ本公演ではセカンドキャストで王子等を踊った方々も宝石やオオカミなどに配役されている、饗宴版豪華キャストですから。
それでもまだあの人とかあの人等々がいなかったりするんだからな~…。

主演に小野絢子・福岡雄大、米沢唯ちゃんがフロリナ。
宝石の女性に細田さん、奥田さんが入っていて、新国版オリジナルのゴールドが奥村君。
赤ずきん&オオカミに広瀬&福田君。
本公演でオオカミ&カタラビュートの小口君が貴族のアンサンブルに回り、残念と思えどまあ顔が見えるからおk(^ m ^)
でも本公演でゴールドを踊り、また先のトリプルビルで超大活躍だった池田君が白猫の輿担ぎの犬(顔が見えないー)とか残念。

ともあれ。

幕が上がり薄暗い舞台に、輪島カタラビュートのマントのひと振りで明かりが灯り、宴が始まる。
もう開幕の音楽と輪島のひと振りでムネアツで泣きそうですよ(笑)
輪島のひと振り(TVではどう見えるのでしょうか。人の視点が入ると変わるかもだが…)。
輪島カタラビュート、宴の間も「うんうん」って頷きながら見守る姿が微笑ましいです。
ストイックで、頼りがいのあるお兄さんです。

男性貴族のアンサンブルに小口、宝満、林田等々のイケメンが勢ぞろい。
新国の男性陣はこういう古典も立ち姿に品があります。

宝石は細田さんのエメラルドがまたクリアな色彩。
猫は原田舞子&原組です。
白猫のキュートさと、ハチワレ猫の癒し系原君がなんかいいコンビネーションです。

フロリナと青い鳥が米沢&井澤組だったのですが、これがまた見応えあるのなんの!
祝宴仕様でしょうか、唯ちゃんはまたいろいろ仕掛けてきてる(笑)
雄弁な腕の動きは小鳥のようでもあり花の精のようでもあり。
青い鳥と出会った喜びでその花が沸き立ち、会場にあふれんばかりのようです。
そうか、フロリナと青い鳥はこのオーロラの結婚式という祝宴にいっぱいいっぱいのシアワセを届けにくるという役割があるのねぇ…なんて、感じいりました。
唯ちゃんの踊りにはいつも何かを気づかされます。

青い鳥の井澤君、若い子はやっぱりこういう役は似合う。
スタイルが良く背が高いので、唯ちゃんとのバランスもいいですね。
ソツなく踊っているんですが、でも先のトリプルビルを見たときも思い、またバレ友さんも言ってたのですが、やっぱり身体固いなー。
この点は牧の菊池さん、清瀧君は実に柔軟でさすがと思いますし、それゆえ表現も豊かに見えます。
卒なく踊ってはいますが、総合すると牧のお二人にもまだまだ及ばない。
王子の道は険しいのぅ。

赤ずきん&オオカミは、本公演で小口君がブレイクダンス風オオカミをやってきたのに対して、福田君はなんかスカートのすそをつまんだりと、おねぇっぽいです。
まあ女装オオカミですから、そっちのキャラをとったのかな?
人によって違うのが面白いです。

親指トムの八幡君は相変わらず愛されキャラ全開です。
前回のアラジンの時は主演とはいえ、踊りがほとんどなかったので、今回は一杯踊れてよかったね!

そして真打登場!といわんばかりのキラッキラの絢子姫に、やっぱり貫禄がすさまじくついてきた雄大君。
2人してキラッキラのニッコニコで、これまで盛り上げてきてシアワセがいっぱい詰まった舞台にこれでもか!といわんばかりのダメ押し笑顔で幸福メーター振り切れてる(笑)
しかし踊りは隙が無い。
特に雄大君は本当にいいダンサーになったなぁ…!
もちろん細かいミスはあれども総じてキレッキレで跳躍も高く、跳んで足を打ち付ける音が3階まで小気味よく響いてきます。
これでまだまだ伸びしろを感じるんだから、どこまでいくのだろう、この男は。

フィナーレでは後ろで槍を持って控えていた方々が王妃と貝川王様のマントを掲げ持って入場してくるのが微笑ましかったですね。
池田&小柴のワンココンビのちょっとした愛嬌も、笑いが起こってよかったなぁ(笑)

というわけで、華やかな饗宴でした。
フィナーレで雄大、絢子姫、山本さんが手を繋いでいたのがまた幸せで嬉しくなりました(*^▽^*)

今回4団体は少ないよなぁ…と思えど、大トリ新国にこれだけやられちゃあ、Noismや下村さんのように全く比べようのない個性を確立しているような団体はともかく、生半可な古典プログラムでは太刀打ちできないだろうし、出なくて正解だったんじゃないの?とも思ったり…。

というわけでバレエの饗宴、TV放送予定は以下の通りです。
必見よ!

4月12日(日)21:00 クラシック音楽館
http://www4.nhk.or.jp/ongakukan/
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by kababon_s | 2015-04-09 02:33 | Ballet

谷桃子バレエ団「海賊」:アリなしの勇気ある挑戦

3月21日マチネ、谷桃子バレエ団「海賊」を見てきました。
エルダー・アリエフ振り付け、イリーナ・コルパコワ監修の新制作版で、日本初演です。
「海賊」といえば原典自体がいろいろ手が加わり、元がどんな形だったかさえわからず、さらにあっちこっちからいろいろな音楽を足して足して足して……とやっているうちに、なんだかよーわからんわ、という状態になってしまっても上演が繰り返されている、不思議な作品です。
が、やはりキャラの妙に濃い男踊りが多くて、つい見てしまいます。

その不思議な謎の作品を「プティパの振り付けは残しつつ、お話の筋をすっきりさせ整理した」というのがこの「アリエフ・コルパコワ版」といえましょう。

キャストを見て「んん?」と思った通り、最大の違いはアリとビルバントがいないことです。

プログラムによると、そもそもアリというキャラは初演時のコンラッドがお年で激しいヴァリエーションが踊れなかったため付け加えたキャラ、ということだそう。
つまりアリはお話から消えても態勢に影響はない、といういことでしょう。

でも「なにがなんだか、よーわからんわ」という海賊がそれでも上演を繰り返してきた理由のひとつは、おそらくあの有名なグランパドドゥの存在があるのでは。
ガラやコンクールでも踊られる人気のパドドゥであり、アリのヴァリエーションです。
アリをカットするというのは、相当に勇気のいったことと思います。

その分ストーリーはコンラッドを中心に据え置き、彼とメドーラの恋愛に絞っています。
コンラッド中心というのは私的には非常にうれしいものです。
だって、やっぱりコンラッド、かっこいいじゃないですか。
イケメンポジションじゃないですか。

ともかく、そういう勇気のいる挑戦だったアリエフ・コルパコワ版の海賊です。
言わんとしていることはすごくわかります。
とってもよくわかりますし、男踊りはかっこいいし、谷の男性もよく踊るしパワフルだし、これはこれでありだと思います。

ただ一方で、枝葉を全部切り落とした立木というのか、鉋で削りまくってツヤツヤになった白木というのか、炭酸を抜いたコーラというのか、とにかく毒抜きの「キレイ」な海賊でした、いろいろな意味で。
つっこみ始めたらキリはないのですが、でも話の筋は通ります。
何より若い齊藤拓芸術監督(39歳!)の率いる谷桃子バレエ団の、この作品にかける熱い意欲がひしひしと伝わってきました。
ダンサーさんの気持ちがまとまって一丸となって踊る舞台ってのは、やはり見ていて楽しいし、素晴らしいです。
このバレエ団、今すごく雰囲気がいいんだな。

というわけで、せっかくですから以下1幕から順を追って。

●1幕:コンラッドはピンクの花園の夢を見る

序曲のおなじみ海賊船の登場ですが、難破ではないようです。
無事ある海岸に上陸したコンラッド(今井智也)一行、早速男女群舞の海賊の踊り。
船には女性も乗っていたんでしょうか。
服を着替えて奴隷市場に乗り込みます。

奴隷市場ではお金持ちのパシャ(まん丸でキュートでらぶりー)を相手にイザーク・ランケデム(三木雄馬)が「商品」のお披露目。
てかフルネームか、ランケデム!?
イザークだったのか、君は(笑)

ともかくイザーク・ランケデム(←しつこい)とギュリナーラ(齊藤耀)との奴隷市場のパドドゥです。
このギュリナーラがいやよいやよ、と言うよりは「できるだけお金持ちがいいわ~」と自己アピールしまくる、なんだかとってもポジティブ(笑)な女性です。

そこに現れるコンラッド一味。

ギュリナーラが見事お買い上げされ、次に登場したのがメドーラ(永橋あゆみ)。
ここでメドーラとコンラッドがふぉーりんらぶです。

ライトが落ち、時が止まったなかで踊られる2人の世界。
一瞬で、目が合った瞬間惹かれあってもうどうにもならない、誰にも止められない、どうにも止まらない~、という思いが踊られます。
気持ちがすごく伝わってくる。

しかしメドーラもまたパシャにお買い上げ。
ここで乱闘になるのかと思いきや、海賊一味は大暴れもせずに去っていくパシャの後を追い退場。
……何のために来たんだ、お前ら(^_^;)

場面変わって海賊のアジト。
「1人にしてくれ」と人払いしたコンラッドはそのまま寝入ってしまうのですが、ここであの、生ける花園……!!ガーン(゚д゚lll)

待ってくれ、コンラッドってこんなちゃらい夢を見るキャラですか!?
これはファニーなパシャの夢ならわかるが……?
こんな脳天気な音楽でピンクの花園の、ホレた女の夢見るコンラッドなんてやだー!!・゚・(つД`)・゚・ ウェ―ン
とまぁ、のっけっからさまざまな思いが駆け巡るわけですが。

言わんとすることはわかるわけです。
夢に見るほどホレちゃった。
罪作りなのはこの花園の、ディズニーランドか安っぽいフレンチカンカンのような音楽なんです(;´д`)トホホ…

踊り自体はコンラッドも加わってのパドドゥ付き。
総じてこのバージョンのコンラッドは実に出番が多くよく踊る。
今まで、立ちんぼだったり、人によっては空気だったり、結局単なる色ボケにしか見えなかったり、というコンラッドにスポットを当てようとする意欲はとてもよくわかるし、やはりこれはすごくうれしいです。
コンラッド、かっこいいコンラッドっていいじゃないか…(若干息切れ気味)。

でも……どうしても、この花園のコールドを使わなきゃいけなかったですか?
今これだけいろいろなバレエがあるんだもの、無理して女性コールドをねじ込まなくてもいいじゃん!と思ってしまうんですけどね……(T_T)

ともかく。
夢から覚めて自分の心に気づいたコンラッドはメドーラのいるパシャの宮殿へと出かけていくのでした…(すでに遠い目)。

●2幕:コンラッドはメドーラの愛の奴隷

気を取り直して。
パシャの宮殿ですっかり環境に順応しているギュリナーラがハレムを仕切っています。
このギュリナーラのキャラはなかなかいいですね。
ポジティブに生きてます。
パシャをもてなすために、ここでオダリスクが踊られます。

でもメドーラはベッドに突っ伏したまま。
パシャを拒絶し、己の状況を悲観し、市場で会ったコンラッドに思いを馳せます。

1人になったメドーラのところに現れたのはコンラッド王子(単独)。
さらにギュリナーラが現れ、メドーラに同情し自分が身代わりになってメドーラとコンラッドを逃がします。

メドーラのヴェールをまとってベッドに突っ伏しているギュリナーラのところへパシャが宝石等々贈り物を持って現れ、ギュリナーラはちゃっかりいただいてしまう……というシーンも。
このギュリナーラはなかなか分かりやすい。
いいキャラです。

別段海賊のチャンバラもなく、メドーラをつれて帰ってきたお頭コンラッドを仲間たちは迎え、ここで踊られるのがあの例の、一番有名なパドドゥ。

ですが。

コンラッド、それまではギリシア風のかっこいい海賊衣装だったんですけど、ここでアリの衣装に着替えてしまうんです。
頭に羽まで付けて。

いや、言わんとすることはすごくわかるのですが(こればっかり)、このパドドゥ、振り付けも奴隷のままですから、コンラッドがいきなりアリになってしまった感が拭えない。

いや、奴隷のようにあなたに愛を捧げます、と解釈もできるのですが、そう思った瞬間もう「サバの女王」のあの、「わ~たしはあなた~の~ あ~いの~どれい~~♪」が頭に浮かんできてしまって、海賊のパドドゥの曲と2曲並行で脳内ステレオサラウンドのようなカオスな状態に陥ってしまいました( ̄v ̄lll)

衣装……奴隷でなきゃだめでしたか?
最後までコンラッドを貫いてほしかった。
せめて衣装がコンラッドなら、サバの女王は引っ込んでいてくれたかもしれない……。

ともかく。
パドドゥが終わり、フィナーレを飾るのがフォルパン。
迫力です。
かっこいいです。
否が応でもテンションマックス。

フォルパン・チーフに芸術監督の齊藤さんが自らお出まし。
これフォルパン・チーフでなくても、ビルバントでもよかった気がします。
コンラッドに忠実な白ビルバント(笑)
ラストはアリだかコンラッドだか、ともかくお頭はメドーラを伴い、また新たな冒険へと旅立っていくのでした(拍手)。

とまぁ、こんな流れです。
何度も言いますが、言わんとすることはとっても!よくわかる。
でも「なんか違うぞ」感も多分に漂うアリエフ・コルパコワ版海賊ではありますが、あの手の施しようのない作品をきれいにまとめた、という大いなる挑戦にはやはり拍手を送りたいし、敬意を表したい。

さらに谷の男性陣が迫力でパワフルでしたし、ここの男性はでかいのでこういう演目では見栄えがします(何年か前のバレエの饗宴のときの「韃靼人の踊り」はすごかった)。
パシャも熱演でしたし、メドーラの永橋さんも非常に品があってよかった。
ギュリナーラもおそらくコンラッドに次いで違ったキャラではないかと思うのですが、いい解釈でしたね。
こういうギュリナーラは結構好きです。
そして何より谷の男性プリンシパル3人衆がすばらしかったですし、若い芸術監督の感性が、この歴史のあるバレエ団をこれからどういう形で率いていくのか、なかなか興味深くも思えました。

それにしても「海賊」、やっぱり難しいのだなぁ……。
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by kababon_s | 2015-04-04 03:26 | Ballet

新国立劇場バレエ団「トリプルビル」(2):いつまでも浸っていたい3つの世界

新国立劇場バレエ団「トリプルビル」の続きです(1回目はこちら)。
3月19日と22日千秋楽はセカンド、サードキャストの方々ですが、どれを見てもそれぞれに味わいがあります。
特に千秋楽の3作品は1つ終わるたびに、いつまでも見ていたいのにもう終わっちゃう、トリプルビルが終わっちゃう~・゚・(つД`)・゚・ という寂しささえ感じてしまいました。

いつまでもこの世界に浸っていたい。

そう感じさせてくれる踊りを見せてくれた新国のみなさんには本当に感謝です。

●愛と哀の、テーマとヴァリエーション

19日は長田&奥村組、22日は米沢&菅野組。
女性がどちらも素晴らしかったのに対し、男性がどちらもいまいち調子悪い?
それでも千秋楽の米沢&菅野組は、千秋楽とあってかコールドの方々ももうハンパなく全力投球の素晴らしさで、この日は女性コールドからして感涙ものの出来です。

また千秋楽は指揮者バクランさんの顔がよく見えた席だったのですが、舞台とコンタクトをとりながらの、なんだかダンサーさんたちに対する愛情のあふれた視線がとても印象的。
いまいち調子の良くない感じの菅野さん(ゲネプロを見たバレ友さんによると、足をさすっていたとか…?)を気遣っているような感じにさえ見えましたし、聞こえました。

でも舞台は本当に素晴らしく男性が登場してくるあたりからテンションマックス。
新国の男の子たちは粒ぞろいでなにより品があるので見栄えがする。
煌めいているじゃないか、音楽に乗って…(*´꒳`*)

曲がいよいよ盛り上がり、華やかになるにつれ終わりが迫っていることをひしひしと感じ、チャイコフスキーってそうだ、きらめきや華やかさの中に「夢、宴はいつか終わるもの。永遠ではないのだ」という哀を潜める人で、だから身のよじれるようなロマンなんだよなぁ…と改めて思い出したり。

フィナーレ間近、男性主演1+4に続き女性1+4が登場して客席に迫ってくるようなクライマックスは鳥肌ものの迫力すら覚えて、感涙止まりませんでした。
間違いなく、新国のバランシンは絶品です。

●「いきもの」の遊ぶ不思議世界、ドゥエンデ

セカンドキャストのドゥエンデ。
本島&丸尾というコンテならこのお姉様よね、というベテランに男性は小口君。
これがまた、ファーストキャストとは違った味わいと世界を描き出してくれる。
落ち着いた輪島さんに対し、エネルギーに溢れる小口君。
力強く美しいお姉さまたちに見守られながらいのちを発する、見守られて育ち、でもしっかりと大地で支える「いきもの」です。
(殊に19日はドゥエンデ、トロイ・ゲームと大活躍で、個人的には小口祭りでした(笑))

また(個人的に)ドビュッシーの音楽ってすごく色彩的、絵画的で、特にオケは曲とともにいろいろな色彩が溢れてきて聞き入ってしまうのですが(だから仕事BGMにはならない)、そうしたドビュッシーの色彩感にダンサーさん個々の個性を交えたダンスが加わることで、世界の奥行きがぐっと深まってきます。

それは「ある深くてくらーい森のなかに、ふしぎないきものがすんでいました」という絵本のようにも思えます。

「ある人はそのいきものを妖精とよびます。
精霊とか、いたずら悪魔とか、こびとともいう人もいますし、それは野ウサギかゆれる木の葉を見間違えたんだろう、とわらう人もいます。」


2つなのか1つなのか、五月女さんと八幡君の踊りはまさに個でありシンクロしてもいるかのような踊り。
福田、福岡、池田の男性3人は目にも止まらぬ早さと若い力強さもを感じさせてくれます。
踊り巧者の福田・福岡となんら遜色のない池田君が見事すぎ、また3者の一体感が小気味いいほどです。

暗くて深い森はグリーンとブルーのコントラストが次第に透明感を持って輝きはじめ、最後はまるで深い沼の、でも水鏡のようでもあります。
女性陣が軽やかに跳んでいったあとにはいくつもの丸い水紋が見えるよう。
ハープの音色がまた幻想的で、しんと静まり返ったなかにいつまでも、見えないのに気配を感じるような余韻がまた味わい深いこと…!

もう一度見たい。
でも同じものは二度とない…。
……舞台の醍醐味です。

●いろいろ気づくトロイ・ゲーム

そして3つ目は若手組によるトロイ・ゲームです。
19日はファーストキャストがベテランの技や音楽性、個を全面に押し出す見事な演技性で、初日よりさらにパワーアップした力量を存分に見せてくれました。
対する22日の若手組は、15日の巷の評価がさまざまで心配していましたが、課題を修正して頑張ってきたように思います。
「踊る」だけでなく、音楽を身体に取り込んで、さらにキャラクターを出さないとならないこの演目は、真ん中はもとより、サブキャラ経験も少ない若手陣にとってはすさまじくハードで、またハードルの高いものだったのでは。

でも、彼らなりによく頑張った!

特に高橋君、林田君、小柴君、八木君とカテコでは清水君も。
高橋君はファーストキャストの八幡君とは違う、一樹なりの色を一生懸命出そうとしていたように思え、がんばれー!とエールを送りたくなりました。
「し――っ(*^b^)!!」の小柴君、「止まらない~!」の八木君も何かを掴もうとしていたのではないかしら。
カテコは「もうやめとけ…(;´∀`)」と思わず言いたくなるくらいの大サービス(笑)
八木・清水は体力無尽蔵ですか(笑)
でも彼らはここでアピールして名前覚えてもらわなきゃいけない!
何度も出てきてくれてありがとう!

●トリプルビルって大事

またこのトロイ・ゲームで強く思ったのは、舞台経験は大事だ、ということ(当たり前ですが)。
こういうトロイ・ゲームのような演目があったからこそ、普段後ろで踊っている子たちもいろいろ考え、キャラを出す、という命題に挑戦し、(見てはいないけどおそらく)15日よりいいものを作り上げてきたのでしょう。
これは私が言うまでもなく、ダンサーがステップアップするうえでも、とても大事なことです。

ベテラン組、若手組の実力の差というのは痛感せずにはいられませんでしたが、さらに若手組のなかでも新加入の子たちと、何度もコンテを踊る機会のあった先輩との差がこんなにも大きいとは!と思い知ったり。
新加入組は私が見ても、スタミナも足りず、やっぱり身体がまだ全然堅くて、プロダンサーのそれになり切っていないような。
然るべき人が見たらその差は歴然でしょう。
これはもう個々の精進も必要ですし、やはり古典もコンテも含め、いろいろ幅広い演目を踊ることも大事なわけです。

ダンサーさんの寿命は短いです。
50になっても踊っているすごい人を最近見ましたが、それはかなり希有な例で、40歳過ぎて踊れればいい方。
また全幕規模の踊りを作り上げようと思ったらカンパニーは大事ですし、できるだけいい環境で、できるだけ大勢のお客様の前で、身体が動くうちにいろいろな演目を踊りたいでしょうし、踊らせてあげたい。

そういう意味も含め、トリプル・ビルのようなプログラムはとても大事ですし、我々観客にとっても若いダンサーさんたちを知るという絶好の機会でもあります。

昨今、海外カンパニーの公演だってよほどのビッグネームでない限り満席があまりお目にかからなくなっているなかで、こういうマニアックな演目を満席にするのは大変でしょう。
ハンガリーでハンガリー国立バレエ団のトロイ・ゲームを見たときの抱き合わせがラ・シルフィードだったのですが、「古典とコンテを組み合わせることで、コンテをあまり見たことのないお客様にも見てもらえる」という広報の方の言葉を思い出します。
コンテを売るのに大変なのは日本だけじゃないのでしょうね。

でも、やっぱりバレエ団のレベルアップのためにも続けなければならないし、満席になり切らないのは折り込み済みと覚悟してでも(でも席を売らなくていいというわけではありません、念のため)、その分他の公演で取り戻すなど、いろいろ考えるところはまだまだたくさんあるなと思いました。

何よりやはり、今回のトリプルビは全日程通して、普段後ろで踊ってる男の子たちがニコニコと楽しそうに踊っていたのが一番印象的です。
だからお客も楽しくて、シアワセなのです。
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by kababon_s | 2015-04-02 23:09 | 新国立劇場バレエ