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新国立劇場バレエ団「トリプルビル」:バランシン、ドゥアト、男たちの挑戦

3月14日(土)、新国立劇場バレエ団「トリプルビル」行ってきました。
詳細はこちら↓。
http://www.nntt.jac.go.jp/ballet/performance/150314_003721.html

この日は初日、ファーストキャストです。
演目は再演となるバランシンの「テーマとヴァリエーション」、ドゥアトの「ドゥエンデ」、そして日本初演となるロバート・ノースの「トロイ・ゲーム」。
実にそれぞれの作品の味わいが出ていて見応えのある、満足度の高い公演でした。
これはいいよ、ホントに。

特に古典では普段後ろに回っている男の子たちの出番が多いうえ、トロイ・ゲームに至っては男性だけ8人という踊り。
ホントに男祭り(笑)

テーマとヴァリエーションから実に男子達がニッコニコの笑顔で楽しそうに踊っていて、もうそれだけで胸熱なのに加え、ドゥエンデではベテランの頼もしさと若手の躍進に胸躍り、男性だけで踊られるトロイ・ゲームはそれぞれのキャラが立っているうえ、いい具合にアホっぷりも演じられてまぁ楽しいことったら!
こういう演目を組める日本のカンパニーなんてまずないよな、と思いながら、もっと大勢のお客さんに見てほしいよと、心底思いました。
ダンス系の方々(特に男子)、必見だよ。

●期待は裏切らない「テーマとヴァリエーション」

「新国のバランシンだったら絶対いいにきまってるじゃん!」という確信のもとに見た、
そして期待通りのバランシンでした。

主演は小野絢子&福岡雄大の鉄板ペアだけど、特に雄大がいいです。
少し痩せたこともあって白いお衣裳も普通に見ていられたうえ、もともとコンテもすごくいい人だけに、こういう演目は実に合います。
また昨今男トップとしての貫録もしっかり付いてきて、男性陣を率いて踊る姿が本当に頼もしいです。
絢子姫も清潔感溢れ、凛として美しい。
彼女はきっと21日はもっといい(←断言。スロースターターだからなぁ(;´∀`))

そしてキチッと振付をモノにしてこなすダンサーたちの修練の賜物たるや。
もちろん100%完璧とは言わないけれど(やっぱり特に女性で新しく入った方々の中に「んん???」というのはいる。ここは男子もいいから女性で危ういと却って目立つ)。
何より男子がある程度身長とスタイルが揃ってきたせいか、そしてまた新国の男子はきちっと踊るから実に見応えがあるのですよ。

さらに冒頭書いたように、男子がそれこそ先のバヤデールの出番の少なかった鬱憤を晴らすかのように、1つ目から嬉しくてたまらない、というような満面の笑み。
音楽がクライマックスに向かって盛り上がるにつれて、身体から音楽が溢れるような跳躍をする男の子たちを見てたらもう、ホントにうるうるきます。
1つ目からもうこちらも幸せ度MAX。

ダンサーさんではやはり細田さんがいいです(最近こればっかり(笑))。
どうしたって目が彼女に向きます。
井澤君と組んでましたが、(視覚的には)美男美女だなぁ。
江本さん、なんか顔がまろやかになっただろうか?
彼もぐいぐい前に出る人ではないけど、本当に流れが歌うようです。
好きです。

●森の精霊たちの「ドゥエンデ」

スペインのアンダルシア地方で「いたずらをする精霊」の意味らしい、ドゥエンデ。
薄暗い森の中で息づき、笑いを殺して潜んでいるような、時にはシュッと現れては消えていくような妖精たちの世界っていうんでしょうか。

音楽が「ドビュッシーのフルートとハープのためのソナタ」という、昔風な、でも前衛的おとぎ話(笑)のようでもある想像力をいろいろ掻き立てられる曲。

「パストラル(牧歌)」に本島さん、米沢唯ちゃんに筋肉美にますます磨きと色気が漲る輪島さん。
この3人を筆頭に、「シランクス」が五月女&八幡の待ってましたペア、「フィナーレ」に福岡雄大、福田圭吾、池田武志という男三人衆。
さらに「神聖な舞曲」で、女性が奥田、寺田、盆子原(抜擢!)、男性が八幡、奥村、輪島の皆さん。

本島さんの、人生経験という名の蓄積からにじみ出るような表現力というのかオーラがすごいです。
最近の彼女は踊りに凄みみたいなのが加わり、元々美人なだけに一層迫力があります。
そこにいたずら精霊のように絡む唯ちゃんに、輪島さんの頼もしさ。
踊る輪島さんを見るのは久々ですが、本当に筋肉美がストイックなエロさというのか色気というのかもう、とにかく見ていてバクバクです(//∇//)
いや~犯罪だわ、輪島さーん。

五月女&八幡は互いに実にテクニシャンでスピードも身体能力も等しいうえにサイズが合う。
…というか、八幡君にスピード共々ついていける五月女さんがすごいのか。

福岡・福田・池田の男性トリオ、福田君はやっぱりキレは今一番いいんじゃなかろうか。
またちゃんと福岡・福田のスピードについていく池田君の成長っぷりにも驚きます。
入団したての頃は太もも系かと思っていたけど、いい具合に身体がきれいになって、実に楽しみ。
健康的な王子も行けそうだ。

「神聖な舞曲」からクライマックスへ。
米沢&輪島、盆子原&輪島。
とにかくこのストイックに色っぽい輪島兄貴とオヤジ殺し系女子を組ませるところは偶然なのか、意図的なのか。
醸し出される独特の雰囲気がもう「にょほほほ~(//∇//)」というか、まあ萌えます。
いろいろ好きです、ドゥエンデ。
いい作品です。
ミステリアスで、萠えも入って、実に楽しかった。

●踊る漫才「トロイ・ゲーム」の挑戦

さて、今回一番楽しみで、そして懸案でもあったトロイ・ゲームです。
いかんせん、初演作品で写真や動画を見る限り、マッチョ。
筋肉踊り。

事前にハンガリー国立バレエ団で見る機会があったのですが(レポートはこちら)、「笑わせたモン勝ち、客も笑ったモン勝ち」という印象。
つまり踊りに加えてキャラ芸が必要で、いわば踊る漫才です。
もちろん芸術ですが、客も膝を正して芸術よろしくご高尚に見るもんじゃないな、と。

欧米の方々はそういうのは全く問題ないでしょうが、果たしてそういう演目を日本の男の子たちがやってのけることができるのか。
技術的には全く問題はないだろうが、顔芸等々で笑いを取り、かつ自身のキャラ出しができるのか。
それができなければ中学校の組体操だなぁ…と思っておりました。

が。
これがキャストのせいでしょうか、実に面白かった!

マイレン親分にお笑い担当隠れボス的八幡君、キレッキレの福田君に、濃ゆめのイケメンで役者の小口君(前髪ウザオなんて妙名が一部定着しつつあるため責任感じつつ、でも絶賛応援中(//∇//))、最近癒し系の味わいが出てきた原君、知的さとほのかな色気も漂う宝満師匠、絶賛元気急成長株の池田君、頑張ってついてってるぞ福田紘也(弟)君。

これだけキャラ者が揃い、モンゴル相撲と思しき半裸パンツで組手だの、蹴り合いだの、スポーツの腕比べをするわけです。
30分、ひたすら。

どれだけハードな踊りだろう。
さらにそこにお笑いとコントを交えつつ、まあ動きまくるわけです。
踊りの技術はもとより、キャラを、自身を出さねば作品自体が面白くない、というのは日本人にとってはある意味挑戦ですし、そういう点では難易度高い演目を選んだなぁ…と、改めて思います。

人間ジャングルジムから一人「し――っ(*^b^)!!」と抜けて山崩しする小口君のお茶目っぷり。
ここで笑いを取らないと始まらない、というポジションに小口君を据えてくれたのは実にいいセレクトです。

スローモーションの武士道?と思しき組手のマイレンはまるで師匠。
1人ずれて笑いを取る道化的キャラに八幡君がいるのがいい感じ。
また彼がそれを見事にやってのける。
マイレンや八幡君のような芸達者なベテラン――いわゆる隠れボスがいるからこそ、若い者も「おーっ☆彡(。o`・Д・)o! 」とばかりにテンション上がるわけですね。
いやいや、実に楽しかった!

きっとまだまだ弾けられると思います。
動いて動いて頭カラにして、それこそアッパールームに突き抜けた状態で踊ったらどうなるんだろう。
実に楽しみです(*^▽^*)

このファーストキャストは19日、21日とみられますので、ぜひ!!お出かけください!
滅多に見られないよ、こんなの(笑)

というわけで、新国トリプルビル、このあとキャスト違いでも行きますが、キャストごとに違った味わいがあると思います。
まだ19日(木)、21日(土)、22日(日)と公演がありますので、ぜひぜひ!お出かけください。
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by kababon_s | 2015-03-17 04:31 | 新国立劇場バレエ

新国立劇場「ラ・バヤデール」(2):げに奥深き人の業

新国立劇場「ラ・バヤデール」21日、22日分です。

●「女」の戦いと「リーマン残酷物語」

長田ニキヤ、菅野ソロル、本島ガムザッディというベテランキャストに、輪島大僧正、ラジャがマイレンとこちらもベテラン。
じわじわ来る大人の熱演と申しましょうか。

長田さんのキャラはニキヤに合うだろうなと思いましたがやはり合いますね。
菅野さんは「上司と恋人との板挟み」的シチュエーションが妙にリアルです。
なんというか、予想通りの(笑)リーマン戦士。
24時間戦えますか?

また輪島大僧正が、エロ全開のマイレン大僧正とは打って変わって、聖職者なのに道を踏み外してしまった感ばっちりの生真面目僧正。
仰業なアクションこそないものの、毛穴からにじみ出てくる演技が実に味わい深い。
なにより輪島さんの美しい筋肉が、坊さんの緋衣の下からチラ見えする辺りがまあ何ともエロくてドキドキしますね、これはこれで。
なんて罪作りな坊さんなんだw

そして本島ガムザッディはやはり美しい。
貫禄の美しさに大人の余裕というのでしょうか。
私にひざまづかない者がいないはずないでしょうとばかりに、動き一つひとつに余裕と品があるのに、鬼気迫るものも同時に感じます。
大人の女…ベテランの意地。
貫禄女優です、やはり。
もうソロルはひれ伏すしかない。

マイレンのラジャといえばもう本気の王様で、鼻息でフンととばすようにニキヤのヴェールを「俺を誰だと思っている」と投げ捨てる辺りなど、下賤の者のことなど知らぬわ的で、やはりこれもへへぇ~~っとひれ伏すしかない。

すごい父娘です。
そしてその父娘に全力で体当たりしていくような長田ニキヤがすごい。
想像以上に激しくてびっくりですが、これくらい激しくないと対抗できないでしょう。

こういうこれまた貫禄十分に濃ゆい方々相手に、初役リーマンソロルはただただ翻弄されます。
洗濯機のワイシャツどころじゃありません。
本来洗濯機にかけてはいけない携帯用の紙シャツでした。
溶けてしまいます。
ただただ、幻影の中にのめりこみ、贖罪の思いとともに幻影のニキヤのもとへと走ります。

4幕のクライマックスにソロルがニキヤを追いながら幕が降りたのは、菅野さんが初演ゆえタイミングがあわなかったのか、それともニキヤに殉じたかったのか(まあきっと前者でしょう)。
いずれにしてもじわじわくるバヤデールでありました。

この日は黄金仏の福田君が力強くてキレキレでした。
壺娘の細田さんも実に表情豊かで暖かなおねえさんでした。
細田さん、本当にいいわー。


●女にはそれぞれ2面ある

22日、米沢ニキヤと長田ガムザ、そして雄大ソロル。
米沢&長田は今度はそれぞれに役を変えての挑戦です。

雄大君は3人の中では一番戦士らしいソロル。
八幡マグダヴェヤにニキヤ呼び出しを告げる前の演技がこまかい。
見られてないかな、誰もいないかな、とあちこち覗き込んで念を入れるあたりがいかにも「密会」といういや~んな、そう、2人とも実はホントはイケナイのよねぇ、という状況がよく伝わってきます。

そして米沢&福岡はこの日もちゃんとカップルに見える。
思えばこの2人が初めてカップルに見えたのは先のDTFでしたが、そこに何か契機があったのだとすれば、宝満師匠様々ではなかろうか(笑)

唯ちゃんのニキヤはピンと筋の通った、でも恋する娘でもあるニキヤです。
ガムザが地かな、と思いましたがこの筋の通り方もやっぱり彼女ですね。

対する長田ガムザはやはり大人…というかお嬢様としての落ち着きと余裕があります。
腕輪を渡そうするところ、最後に首飾りを突き出すところといい、動きがゆっくりだからこそ滲む本気と品というのでしょうか。
米沢、本島とも違った味わいで、むしろニキヤよりこちらの方が印象に残ります、長田さん。
そして少し身体を斜めにした「コ・ロ・ス」ポーズが、これはこれで実に美しく怖い。

そして彼女のガムザは「キレイ」です。
つまり、この後2幕で続く蛇のことも、お父ちゃんの企みも知らないガムザですね。
悪いのは全部パパで、そしてそれを受けて立ったかのようなマイレンパパの悪党っぷりといいますか、ふてぶてしさがまたすごい。
21日の共犯的パパとはまた違う。
マイレンはこういう相手の空気を読んで役を作りだす反射神経が本当にすごいんだなぁ。

米沢ニキヤはまた生身の人間と言いますか。
恋する娘で、しかし本質的には筋が通った娘さんゆえ、大僧正の申し出もきっぱり拒否。
でもソロルは好き、という矛盾、あらがえない思いでしょうか。
恋する娘の業。

ですから身分の高いガムザ姫に対して、最初はお行儀良くしているものの、この諍いはどんどん激しくなりど突き飛ばしあい、最後は思わず刃物。
そのときの自分の手を見つめるその間が役者。
自分にこんな恐ろしい心があったのか、これほどまでにソロルが好きか、という思いがズンと伝わります。

そして2幕の反狂乱の駆け込み、目を合わせてくれないソロルへの絶望でその場を去ろうとしたら花籠。
にわかに信じられない、という表情は至極当然だ。
そうだろう、もう何を信じていいのかわからないでしょう。

だからこそ、花籠の踊りは唯一の自分の心の真実、ソロルへの想いがひしひしと溢れる。
切ないです。
泣けます。

その雄大ソロルですが、プログラムでは「ソロルは結婚式の時点で後悔している」とあったのですが、これは単に私がそう見えただけなのでしょうが、なんだか現実を受け入れ結婚する気があったように見えました。

諦念というのでしょうか。
男が本能的に持つ出世欲?

ラジャに対する無意識の無条件降伏っていうんでしょうか。
ある意味ガムザが美しい、というよりむしろ将来の隊長の座、元帥の座といった出世欲的男の業(そんなものあるのかわかりませんが)のようなものが感じられました。
それこそ、すまん、ニキヤ、出世したら迎えに来る、くらい考えていたかもしれません。
雄大ソロルは戦国武将的に妻と側室とか使い分けそうです。
でも、さすがにニキヤの「死」のインパクトはでかかった。

自分の甘さ、愚かさに気づいた3幕以降は急降下、後悔しかないわけですね。
3幕の影の王国、なんだかこれまで見たのとは違う、男…というかオスのロマンというのか身勝手さというのか。
考えてみればこの新国のバヤデールの3幕はニキヤ亡き後はもうソロルの思い、ソロルの幻影、ソロルからみたニキヤで話を進めても全然いいわけですから、完全に「ソロルによって作り出された」の夢の世界でいいわけです。
ニキヤが優しく、許してくれている、と思いこんでもいいわけです。
そして唯ちゃんのニキヤは目は合っていないのに笑ってるみたい。

2人でどういう話し合いをしてこの3幕をつくってきたのかわかりませんが、話し合ったって舞台は生物(ナマモノ)。
役として生きていくうちに当初と違ったものになっても不思議はないのかな、とも思います。
というか、先の花籠にしても、ソロルのこうした解釈にしても、指導陣がもし自由にやらせているのだとしたら、それはそれですごいことです。
自由にやらせる、のと放置するのとはまた別でしょうし、果たしてこの場合はどっちだろうとも思いますけど(笑)

ともかく。
もう終幕なんて、ヴェールを持つのが「ニキヤの影」だろうがニキヤだろうがソロルにとってはどちらでもよくて、彼的には「ニキヤが赦してくれた」という(ある種勝手な)思い込みだけでもう十分なわけです。
果たしてこういう意図があったのかもわかりませんが、身勝手でヘタレだけどオスを通したソロルは面白かった。
実に業の深いドラマです。

多分これ、ニキヤが絢子姫だったら、普通の、プログラムのコメント通りソロルでありバヤデールだったのでは、と思います。
最初から最後までニキヤのことが好きでしかない、よくあるソロルに終わっただろうと。
絢子・雄大はバラしたほうが面白いですね、絶対。

あとやはり、輪島大僧正が非常に味わいがありました。
2日目はキャラがより明確、というのでしょうか。
基本表情を変えないポーカーフェイスではあるのですが、ニキヤのヴェールを取ってじっと佇むところなどもう「ドキドキがとまらない…落ち着け自分(滝汗)」といった焦燥感や「いけない、私は聖職者…」というオーラが立ち込めています(笑)
1幕のニキヤとソロルの密会での「大僧正は見た!」シーンでは(誰も見ていないからこそ)欲情丸出しで「うぁぁぁ~!!」と悶絶するから「コ・ロ・ス」のポーズも迫力満点。
1人で聖道俗道を右往左往しているような初々しさすらあり、聖職者とはい人間味もあって、赴任してきたばかりの新米大僧正かいな、と変に妄想したりで実に楽しかったですね(笑)


またマグダヴェヤの八幡君は黄金仏よりこっちの方が生き生きしている。
彼は演技したいのかな?
また八幡君が入ると修行僧の一団がすごく締まる。
「アキミツに続けー!!」とばかりの団結力。
八幡君は愛されキャラだなぁ。

またこの日の仏像は奥村君ですが、スリムでタイ辺りの仏様です。
奥村君は王子から仏像まで、役幅が広いなぁ。

それから(1)で言い忘れましたが、2幕のGPDDの時の男子、江本さんが素敵でした。
彼の踊りは途切れなくよどみなく流れるようで、歌みたい。

ともかくたっぷりと楽しんだバヤデールでした。
こんなに面白くてすごいんだから、広報にもっと頑張っていただきたいとホントに思います。
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by kababon_s | 2015-03-14 03:41 | 新国立劇場バレエ

新国立劇場バレエ団「ラ・バヤデール」(1):キャストゆえの面白さ

新国立劇場バレエ団「ラ・バヤデール」を観てきました。
今回は17日(火)、19日(木)の半分、21日(土)、22日(日)と、結局全日参戦。
ニキヤとガムザ、実力の拮抗した者同士による「バヤデール」がこんなに面白かったか、こんなにもドラマが深くなるものか、今まで観てきたバヤデールは何だったんだ??とこの作品の面白さ自体に改めて気づかされました。
すごかった。

ニキヤ/ソロル/ガムザッディの順に平日2日が小野/ワディム・ムンタギロフ/米沢、21日長田/菅野/本島、22日米沢/福岡/長田という3つの全キャストを観ましたが3種3様、それぞれに世界観が違い実に濃密です。

一言で言えば初日組は小野VS米沢が目玉の豪華キャストで、若い2人中心の「娘たちのバヤデール」。
21日はベテラン組による「女たちのバヤデール」。
22日はそれぞれニキヤ、ガムザを演じた2人が役を変えての舞台。
またこの日の福岡ソロルが独自の解釈でしょうか、男の業(のようなもの?)を感じさせられて実に面白かったですね。

また主演の3人がぎっちり輝くことで、大僧正とガムザのお父ちゃんであるラジャの存在感がとてもくっきりしてくる。
今回は前半2日が大僧正/ラジャの順にマイレン/貝川、後半2日が輪島/マイレン。
これがまたそれぞれ味わいがありました。

●豪華キャストの「娘たちの戦い」

前半2日間の小野/ワディム/米沢組。
平日夜はやっぱり(スケジュールにもよるが)きついです。

それでも必死に走ったのはひとえにこのキャストだからです。
個性は違えど実力ともども日本のバレエ界では間違いなくトップクラスの、新国2枚看板の競演。
おそらく今考えられる日本最高のキャスト。
いわば姫川亜弓と北島マヤの対決!というくらいの組み合わせで、これを観なくてどうするよと。
最近判で押したように、役とか作品内容とか何も考えてないの?的キャストが多いけれど、このキャストは褒めます。

そして期待を裏切らない、想像以上の感慨でした。
ニキヤとガムザがしっかりすれば、これほど話にも、ヘタレなソロルの行動にも筋が通るものかということを改めて思い知りました。

ほんとに今まで観ていたバヤデールは何だったんだ。
ニキヤとソロルだけ海外豪華ゲスト、という配役ではこの作品の面白さはやっぱり伝わりにくいですね。

いやでも、マリインスキーや大昔のレニ国、パリ・オペラ座、もちろん先のボリショイの公演でザハロワ・ニキヤとアレクサンドロワ・ガムザッディというすごいキャストも観ていたんですが、ここまで面白さを感じたか、というと違う。
影の王国で終わっているからでしょうか。

顛末から言ってしまえば、この新国の牧版は、影の王国のあとに4幕があるわけです。
寺院前でソロルとガムザの結婚式が行われようとするそのとき、神の怒りで寺院が崩れ落ちる。
この辺りはマカロワ版と似ているのですが、牧版ソロルはニキヤに導かれて昇天するかと思いきや、途中で倒れ息絶えるのですね。

この余韻が、いろいろ考えるところがある。

「白鳥」の誓いを破っても結ばれるご都合的なハッピーエンドとは違い、この「バヤデール」では誓いを破った裏切りは許されない。
3幕の影の王国がすでにソロルの幻影世界であり、その世界のニキヤ自身がすでにもうソロルの描く幻です。
果たしてニキヤ自身も昇天できたのか、神の世界に行けたのか…と思わせられます。

そういう「バヤデール」を小野、米沢、ゲストとは思えないほど不思議なほど新国に馴染んでいるワディムに、大僧正マイレン、パパたるラジャは貝川さんが演じました。
観る側としてもよく馴染んだ「言語」で紡がれる物語ゆえに、一層迫ってくるものがあったのかもしれません。

ニキヤという恋人がいながら、ラジャの娘・ガムザッディとの婚約を命じられ、ガムザの美しさに心揺れ動いてしまいニキヤを裏切死に至らしめてしまう、というヘタレなダメ男・ソロルの物語。
そこにニキヤに横恋慕する大僧正、力づくで何でもできるぜ、なラジャの思惑が絡みます。
昼メロです。
プログラムに今回ダンサーさんの作品解釈がありましたが、小野さんのいう「ニキヤも黒い女」(要約)がとても納得がいきます。

神に仕える寺院の舞姫、つまり巫女でありながら、ソロルと密会するニキヤ。
「ニキヤ自身も罪深い」という小野さんの言葉通り、巫女でありながら恋する男との逢瀬に喜びを隠せないわけです。
そして「ソロルをあきらめろ」と高飛車に告げるガムザお嬢様の懇願に一歩も引かず、思わず刃物を手にしてしまう、激しい娘です。
ニキヤに惚れてしまう大僧正だって生臭だし、特にマイレン大僧正は最初からもうニキヤにメロメロエロエロ。
そしてニキヤがソロルと恋仲と知り「殺すぞ」というエロ僧正。

ラジャももうほしいものは何でも手に入れる、という王様。
大僧正がソロルには恋人がいると告げると「だからなんだ、じゃあ殺すわ」と言い放ちます。
ガムザッディも父親同様、手に入れたいものは何でも手に入るし手に入れられて当然というお姫様です。
誰もが私にひれ伏して当然というお嬢様です。
だからVSニキヤのシーンでは、ニキヤが一歩も引かないのにビビリ驚き焦り、首飾りを与えようとするシーンでは「もってきなさいよ!ほら!こんな高価なものあげるって言ってるんでしょ!」とばかりにヒステリックになるわけですね。
そしてニキヤを「コ・ロ・ス」という恐怖のポーズを取り(本当に怖かった唯ちゃん)、また「父の企みを止められたのはガムザッディだけで、それをしなかった彼女もやはり罪深い」(プログラムの唯ちゃん談)と言うとおり、みんな強烈にドロドロです。

1幕の間に3回も「殺すぞ」ポーズがでてくるわけです。
こういう4人の強烈なキャラに翻弄されるわけです、ソロルは。
ソロルを囲む人々は全力で欲望に忠実に行動するから悲劇が起こる。
ソロルももちろんニキヤにホレながらガムザに心を惹かれる「欲」があるわけですが、あの強烈さに比べたらやはりヘタレです。
洗濯機でもみくちゃになってるワイシャツのようです。
しかも残念ながら形状記憶加工なしですから、よろよろシワシワでもう元に戻れません。
1幕、ニキヤとの密会はもうラブラブ。
また小野ニキヤが実に美しく、可憐です。
マイレン大僧正がなりふりかまわず「おおおお!」と驚き、こっそり拾ったヴェールに顔を近づけむっはーとやる辺りは、本当に可憐な美少女がエロおやじに狙われてる感じで、絢子ニゲテー!と叫びたくな
ります(笑)

そんな可憐な舞姫と密会し、今度はラジャの娘を紹介されて「おおっ!」とよろめくソロル。
米沢ガムザもお嬢様本領大発揮なのかもうほとんど地で行けているのか(笑)
とにかく視線のキツイこと、怖いこと。
ソロルにはにっこり微笑み、ニキヤはキッと睨みつける。

ソロルといえば、婚約式のグランパドドゥの途中辺りからもう表情が変わってくる。
迷いです。
このソロルはやはりニキヤが好きです。
満面の笑みのガムザとは対照的。
「きっ!」と引き戻すガムザ、まだ戦いは終わっていない。
これでもかとガムザの大技は、さすが唯ちゃんはしれっと、涼しい顔して難なく決めます。

そして悲しみのニキヤ、花籠の踊りから、花籠に仕込まれた毒蛇の顛末。
音楽が今回素晴らしく良くて(バクラン先生は毎回来てほしい!)実に音楽と一体化した素晴らしい踊りです。
ソロルの心変わりの悲しみと、裏切ってしまった神様に、それでも祈り、ソロルの心を取り戻したいという、もういろいろな思いがこもっています。

そういう踊りの途中に米沢ガムザがソロルに手にキスさせるんですが、実に鬼!(笑)
まあそのときの勝ち誇った表情といったら!
ゾワゾワしますね。

ワディムソロルはもうシオシオで、そこに(いろいろ自信がついてきたのか)最近貫禄の出てきた貝川ラジャがのっそりと娘の横に座るわけです。
しがらみでがんじがらめのヘタレ戦士は毒蛇に噛まれた、ニキヤの最後の懇願にも応えられません。

ですからそりゃあもう、ニキヤが息絶えた瞬間「うわぁぁぁぁぁぁ~!!!」と頭抱えて逃げ出してもしょうがないというか、そうなるだろうそれは、と。

そして影の王国から顛末へ。
新国のコールドが尻上がりに良くなっていくのはなんだかもうお約束的で、これもどうかと思えど、ポワント音がパタパタ響く中にあって、絢子さんがほぼ無音で決めてくるあたりは本当にお見事です。
ソロルが顔をのぞき込もうとしても、フッと緩やかに回転して目があわない、その流れが切なく美しい。
絢子さんは本当にきれい。
輝いてます。
白いバレエの中ではほのかに。

そして4幕、ニキヤのベールに導かれながら、息絶えるソロルです。
4幕のニキヤもすでに影ですから、ニキヤというよりソロルの観た幻影、ととらえることもできるし、ニキヤの魂だってどこにいるのかわかりません。
実に余韻が深い。

惜しむらくは4幕の結婚式、主要5人にソロルの友人(同僚?)だけ、というのが寂しい。
女性陣は影のコールドに出払っているとしても、男性はいるわけですから、兵士も坊さんも引き連れてもっとソロルを追いつめてもいいのに。

ヴァリエーションは細田さんがいいです。
影の王国とか、幽体色というのでしょうか。
彼女の真ん中は本当に観たい。

寺田さん、この人はリラでもキトリでも壷娘でも幽体でもシンデレラでも同じだなぁ…。
自キャラが役にはまればいいのでしょうが、そうでないとすさまじくミスマッチです。

あとピンクチュチュ、ブルーチュチュ等々のヴァリエーションで新しく入った方々は、本当に笑顔が下品です。
変顔大会じゃないんだから…。

というわけで、あと2つのキャスト分はまた後日。
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by kababon_s | 2015-03-03 13:06 | 新国立劇場バレエ