カテゴリ:Books( 20 )

IWGP7「Gボーイズ冬戦争」:透明な子供たち

池袋ウエストゲートパーク7巻目。
もうそんなになったか……ってか、よく続くなぁ。
いえ、続いてくれてうれしいです、素直に、マジで。

今回はキングとマコちゃんの友情がテーマ。
表題の「Gボーイズ冬戦争」ですね。
事件そのものは特に別段ひねりもなく普通にあっけなくカタがつきますが。
孤高のキングとマコちゃん、やっぱり「20代」とだけ作品でかかれてはいますが、年は重ねているのでしょう。
10年連載していても年をとらないワンピースはじめ、巷のマンガとは違うのか。
なんとなく近々キングの引退が書かれそうで寂しい気分がよぎりました。

印象に残ったのは放火事件で世間からはじき出された男の子の話。
かつて読んだ『約束』の時もそうだったのですが、別段「う~ん」と唸るような話ではないんです。
唸るんだったら2巻だったか、『少年計数機』の方がずっといいです。

が。
こういう多感な年頃の子供の描写が、なんだかすごく透明感があって、壊れそうで、すごくいいんですよね、この人。
「一生懸命何かをさせれば頑張る素直さ」というのでしょうか。
汗水たらして何も言わずにマコちゃんの店先で働く男のコの姿がとても印象的。
きっと、ヒネ多様に見える子たちもみんな多かれ少なかれそうなんだろうなぁ……。

1年に1冊ペースのIWGP。
マコちゃんに会えるのはまた来年、ということで。
『少年計数機』また読もうかな。
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by kababon_s | 2007-05-17 01:20 | Books

『東京バンドワゴン』:寺内貫太郎一家……?

『東京バンドワゴン』小路幸也/集英社

東京下町の四代続いた老舗の古本屋が舞台。
東京、下町、古本ということで、結構つぼにはまるキーワードに惹かれて読みました。

ホームドラマですね、現代の。
……というよりは、古きよき時代のノスタルジックなセピア色の雰囲気さえ感じます。
セリフ回しといい、ナレーションのおばあちゃんの語り口といい、必ず最後を絞める孫とおばあちゃんの会話といい、TVのホームドラマのようです。
昔の寺内貫太郎とかムー一族とか、そんなものを彷彿とさせます。
いやもう、軽いの何の。
あっという間に読めました。

こういう殺伐とした核家族化どころか、核にもなれず家族内分裂をおこしているような時代。
シングルマザーの孫娘に曾孫とか、ミュージシャンの父親とか、腹違いの孫とか、今風かもしれないネタは入ってはいますが、やはりセピア色。
もうああいう時代はこないだろうなぁ……と、やはり感じてしまうのはちょっとペシミスティックな読み方でしょうか。

なんか続編をにおわすような終わり方ですし、このまま加工すればTVドラマにも使えそうな雰囲気です。
いや、そのうちマジでTVに出てきそうですが(^_^;)

後日記載:
「テラウチカンタロウ」の「カン」は「貫」だという指摘をもらってしまいましたヾ(゚д゚;) スッ、スマソ
いや、ハズカシイ。
というわけで修正修正。
07.01.25記
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by kababon_s | 2007-01-19 02:57 | Books

『イビチャ・オシムの真実』:サラエボ哀歌

オーストリアで出版されたオシムの半生に日本でのエピソードと、現在のサラエボの様子を書き加えたという「改訂版」とでもいいましょうか。

『オシムの言葉』に書かれていることと内容はダブるところはあるものの、当時の関係者や奥さん、娘の言葉を交えつつ、欧州人の立場から「オシム」という人物を考察している点が興味深い1冊でした。

オシムという人物を考えるときに彼のサッカーにおけるキャリアはともかく「ユーゴスラビアの戦争」を素通りすることはできないでしょう。
あの未だに何がどうしてこうなって、あれほどまでに死者を出し、殺しあわなければならなかったのか理解できないユーゴの解体、そして戦争。
中欧・東欧の複雑に民族が入り組んだ特異な歴史は複雑すぎて、本当に簡単に理解できません。
未だに悩みます。

最終章の「サラエボ散策」。
ここにはかつて「宗教のコスモポリタン」として栄えたサラエボに対するオシムの思い、あの戦争を生き抜いたオシム婦人や娘さんの言葉が綴られています。
涙なしでは読めません。

いかに彼が故郷・サラエボを愛してやまないか。
欧州においてイスラム・カトリック・正教が仲良く暮らしていた、あの「宗教のコスモポリタン」、サラエボをどれだけ誇りに思っていたか。
そんな想いが切々と伝わってきます。

想像を絶する現実を生きてきた人に、今の温まったい日本はどう見えるのか。
オシムが会見で口にする選手のメンタリティに対する辛言は、そのまま日本人に対するもののように聞こえます。
でもそれはやはり彼の人生や経験という裏づけがあってのこと。
オシムが日本にもたらすものはサッカーを通した“何か”、己のあり方といいますか、アイデンティティといいますか。
「世界に生きる一個人」という、人生哲学であるような気もします。
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by kababon_s | 2006-12-20 23:33 | Books

IWGP6『灰色のピーターパン』:世の流れは有益菌?

ちょっとくどいですね、有益菌話(^_^;)
でも、『灰色のピーターパン』、あの池袋ウエスト・ゲート・パーク(IWGP)のシリーズ6冊目。
帯の「白でもない、黒でもない。灰色くらいがちょうどいい」という、やっぱりそんな話です。
そして最後の「池袋フェニックス計画」は、まさに有益菌をも排除してオキレイな清潔なブクロを作りましょうというという、“人間浄化”の話。

先の「もやしもん」「ウッふん」にしても。
やはり世のクリエイターの目は病的な「清潔」「キレイ」が人を壊している、そんなニオイを嗅ぎ取り、警鐘を鳴らしているのではないかと思わせられるような気がします。

「池袋フェニックス計画」のラストでゼロワンが呟きます。
「白か黒か、ゼロか1かで割り切れりゃア楽なのにな」
割り切れないのが人間です。
数式やマニュアルどおりに行かないのが人間です。
だから面白いし、楽しい。苦労はするけれど。

IWGP自体も6冊目を迎えてますますキャラが立ってきました。
相変わらずマコちゃんのお母さんがパワフルです。
キングも素敵です。
キャラが立って何度も読み返したくなるようなマンガのような面白さ。
その魅力は相変わらず光っている。

白と黒。
その間の灰色。
混沌とした池袋には“灰色”という言葉すら美しすぎる気もしますが。
でもそれがブクロの魅力なんだろうなとも思うわけです。
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by kababon_s | 2006-09-18 21:34 | Books

『ウッふん』:有益菌と仲良くしましょう(2)

久々の大ヒットです!
人間の排泄物の話です。
というより「臭いものにフタをするキレイ社会は“人間”を破壊する」というお話です。
「もやしもん」に張ります。

作者は寄生虫学のドクターです。
そこのあなたも私もが排泄する「汚いもの」=「うんこ・シッコ」の“冤罪”を晴らし、抗菌グッズに疑問を投げかけ、人類の未来を問います。
我が意を得たり、というか科学的に実証を頂いたようで、本当に心の晴れる一冊です。

常々思っていました。
「つり革も捕まれないヤツが海外に出るな」
「何が除菌クリーナーだ。お前のおケツはそんなにきれいかよ?」
そういう人こそ海外に出て有益菌をたくさんもらってくるべきです。
旅は人を健康にする。

「シッコは人間の体から出たときは無菌状態に近い」
「ウンコは本来汚くない。体から出た瞬間、自然に帰ろうとするために臭いを発し、分解者となるバクテリアやハエなどを呼び寄せる」
「人間の体の中で雑菌が最も多いのは口の中」
……つり革捕まれないヤツがキスできるんだったら、それは似非だぞ。
ってーかいつか、子供も作れなくなるに違いない。
人工授精?
ガラス管から生まれる子供ばかりなんて、なんだかSFの描く絶望的近未来のようで気が遠くなりますね。

つまり。
抗菌・病的清潔社会は人類を滅亡させます。
不潔が素晴らしいという話ではありません。
何もかも“ほどほど”がいいんです。

もう!
とにかくお読みください。
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by kababon_s | 2006-09-17 22:48 | Books

『40 翼再び』:やっぱ男と女って違う

ここしばらく仕事以外は結構本ばっかりの日々でした。
だいぶレビューもたまってるかも。

で、表題、石田衣良の『40』。
まあ、40歳という人生の岐路に達した人間には思いっきり引かれるものはありまして。
石田氏も好きですし。

でも。
わかっていたけど、やっぱり男と女の40歳って全然違う。
結局男性は「仕事」という社会へのよりどころが何より支えなわけですが。
女性は本当に多様。
「仕事」の人もいれば「家庭」の人もいる。
子育てとパートの日々の人、会社でバリバリやってる人。
私のようにフリーでふらふらやってる人間もいるし。
結局人間だからおんなじよ、と思っても、やっぱり男女ですさまじく人生が大きく大きく分かれているのが40か、とも思ったのでした。

そういう意味ではあんまり「参考に」ならないものではありましたが。
ただ「もう一花咲かせたい」「金で人生選べない。だから頑張る」
共感するわけです。

で、この「頑張る」。

呼吸をするように自然に思えるこの言葉が、30代初めくらいの人には“呼吸をするように”は考えられないのかもしれません。
「なんでそんなにポジティブなんだ」と思いっきり反論されたのがプチ衝撃でした。
う~ん、こういう“世代”を思いっきり感じてしまうのも、また「40」だからですか。
って。
思いっきり年齢バレてますね、このトピック(^_^;)
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by kababon_s | 2006-09-16 16:13 | Books

米原万里さん死去:ご冥福をお祈りします

<訃報>米原万里さん56歳=エッセイスト、作家

帰宅して飛び込んできたニュースです。
ショックです……。
ガンで闘病生活にあったという話ですが……。
もうあの痛快エッセイが読めないのかと思うと、とても悲しい思いです。

ロシア語を駆使してかの言葉の第一人者として活躍されていた米原さん。
ロシア語を話したくて、でもあまりの難しさにアルファベを覚えて挫折した私にとっては、その言葉を駆使して通訳されるなんて、すごい!の一言でした。

また英語全盛、英語ができなきゃ国際人失格、というようなご時世において、ロシア語をひたすら貫き、少数派言語の擁護(?)をスパッと竹を割ったような軽快な口調で切ってくれたのには、フランス語使用者としては本当に溜飲が下がる思いをしたのを覚えています。

また無類の猫好き・動物好き。
「ヒトのオスは飼わないの?」にはそうした一緒に暮らすイヌネコのオスメスの話が書かれていましたが、これまた「うちの子万歳」一辺倒にならない彼女ならではのドライな視点から描かれていて楽しませてもらいました。

ロシア人と並んでも引けをとらない豪快な体格。
ほんとうにご苦労様でした。
そしてありがとうございました。
心からご冥福をお祈りします。
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by kababon_s | 2006-05-29 23:57 | Books

『パリの獣医さん・上』:フランス的動物との距離

タイトル通り、パリ在住の獣医さんのエッセイ。
動物保護協会の副会長も務めたドクター・クランの家族や家で飼っている犬猫、患畜などのお話。
「うちのこの子はこんなコで、こーんなことしてかわいくてェ~」という「親ばか」エッセイではなく。
「動物が人間に何を与えてくれるか」
「人が動物を飼うとはどういうことか」
「人が動物の命を護ることとは何ぞや」ということを、実例を挙げつつ淡々と書いているところがとても合理主義のフランス人的。
「自然界のあらゆる生き物は人間が支配している」と言い切るところなど、やはり思いっきり西洋人です。

もちろん著者のドクターもおそらくは「親ばか」的に家の動物たちが好きなのは、その冷静な口調の中に思いっきり見え隠れしている。
イヌネコではなく、やっぱり「家族」なわけです。
さらに。
「なんでウチの動物たちは俺より女房の方が好きなんだよ(-_-;)」というくだりなどはとっても微笑ましく、ついついぐいぐいと読み進んでしまいます。

その一方で。
「保護」「動物と暮らすうえでの責任とは」という意識・社会的考え方の違いなんかにはドキッとさせられる。

例えば、「注射をする」。
とてもよく出てくる言葉なのですが、要はこれは安楽死。
生まれた子犬や子猫、飼えなくなった動物、もう死が間近だったり飼い主が最後まで面倒を見られない動物は、獣医に行って「注射をしてもらう」。
どうやらフランスではこの「注射」がごく当たり前のよう。
避妊・去勢手術はもとよりこの「注射」が、生き物に対する人間としての「責任」のようだし、理屈はわからなくもない。
むやみに捨てたり虐待するよりは処分するほうが社会の迷惑にはならないのかもしれない。
でも、なかなかこれは日本人には簡単には受け容れがたい考えのような気もします。

お国変われば動物との「共存」の仕方も考え方も変わるのでしょう。
フランスはじめ欧州は旅行に行くときも電車に乗るときも動物連れは普通のこと。
そうした意味ではとても「ペット」「コンパニオンアニマル」の考えが進んでいるように見えますが。
やはり動物嫌いなど、近所との付き合いの問題は日本とはそう変わりがないようです。

ちなみに。
出てくる動物たちは、種類がやはり日本とはちょっと違う感じ。
犬ならジャーマンシェパードやプードル、ボクサー。
猫ならバーマンやシャム猫など。
さしずめ日本ならレトリバーとかアメリカンショートヘアーなのでしょうが。
私がフランス語を習っていた頃、テキストの挿絵にプードルを連れたご夫人の絵が書いてありましたが。
やっぱりフランス人てプードル好きなんでしょうか(^_^;)
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by kababon_s | 2005-11-10 05:47 | Books

『ブエノスアイレス午前零時』:現実と夢想の浮遊感

タイトルに呼ばれて買った1冊。
どんな内容か、どんなジャンルだかも何も知らずに、なんとなく。
こういう買い方は珍しいのだけれど。

なんというか、風景と心理とが次第に融合し溶け合い、現実かうつつか分からなくなるような、そんな浮遊感がグロテスクに、しかし何故だか心地よい。
何でだろう。
ひょっとしてこれを「心地よい」と感じてはいけないのだろうか。
2つの短編に共通するのは己の存在のリアリティを問う「Qui suis je?」。
永遠の命題。
どこからどこまでが現実で、どこからが夢想か。

「神がいるなんてわからない。でも神は絶対にいないという確証を得た人間もいない」(『屋上』)。

「Je susi être」を確信できる人ってどのくらいいるのだろう。

河出文庫/藤沢周
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by kababon_s | 2005-10-28 00:49 | Books

『安土往還記』:孤高の信長

標記。
辻邦夫氏の代表的歴史小説。
本当に主人公なるイタリア人の直筆書簡が在ったのかわかりません。
この実在かもしれないイタリア人航海士の目を通し、信長像を描き出した作品です。

今更書評だなンだというのがおこがましいくらいの名著。

今までいろいろ戦国モノの時代小説やドラマを見てきましたが、これほど「織田信長」が人間味を持って感じられたことはありません。
「事を成す」ためにストイックなまでに自身を律し、それを他者にまでもとめたがゆえの孤独と悲劇。
多くは語られなかったけれど「羽柴殿」「明智殿」の対照的な人間像までが十分に伝わってきます。

何より描写の記述が美しい。
クライマックスの安土の祝典は涙でそう。
やっぱり「辻邦夫」です。
巨匠の巨匠たるゆえんを見た、いや、読んだという。
そんな一冊でした。
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by kababon_s | 2005-10-24 18:09 | Books