カテゴリ:新国立劇場バレエ( 55 )

新国立劇場バレエ団「こうもり」千秋楽:幸せいっぱいに満たされる

4月26日、新国立劇場バレエ団「こうもり」千秋楽、新国の創設からのメンバーである湯川麻美子さんの、引退公演でした。

この日はとにかく劇場に入った瞬間から、なんだか不思議な空気でした。
というよりその前から、TL上でも団員さんが「湯川さんの引退公演です」と流すほどに、意気込みが違っていたように思います。
団員はもとより客席も、「この舞台を最高のものにして、湯川さんを送り出そう」という気概が感じられたというのか。
ビントレー監督の最終公演も一種異様な空気がありましたが、それとはまた違う、湯川さんのための、湯川さんへの思いでしょう。

つくづく感じるのはこの「こうもり」という公演を引退の花道として選ぶという、湯川さんの独特のキャラクターです。
一般的に思えばこの「こうもり」、日本人には苦手なコミカル表現やマイム、濡れ場のラブシーンとか、しかも姫ではなく倦怠期の奥様とか、毛色の変わったものであることには間違いない。
それを初演時から5回主演で踊って引退するなんて、なんて麻美子さんらしいんでしょう!

またこれは方々のインタビューでも語られていましたが、彼女はお姫様や古典の主演を張るようなタイプではありません。
それでも「カルミナ・ブラーナ」のフォルトゥナで伝説を作り、「パゴダの王子」ではエピーヌで存在感と貫禄を発揮し、また「こうもり」のベラのような奥様で初演時から主演を張ってきたというのは、やはり独特の、オンリーワンのキャラクターです。

そうしたすばらしい先輩がいたから、この「難しい」役所を楽しそうに踊るよき「お手本」がいたから、ひょっとしたら今回若いダンサーさんたちも「こうもり」に真正面から立ち向かうことができたのかもしれません。
だからこそ、今回の公演は総じて「こうもりってこんなに面白かったのか!」という結果につながったのかも。
そしてそういう湯川さん存在感や独自性を生かしてこられる演目があるというのも、このカンパニーの幅広さでもあると思うのです。

果たしてこの日の舞台の上のベラは、実に楽しそうで自然で、旦那とうまく行かないというシチュエーションさえもコミカルです。
あの手この手で旦那の気を引こうとする。
おネグの肩をちょちょっとずらしてベッドに入り込もうとする仕草とか、踊り込んだ湯川さんならではです。

麻美子さんの引退舞台のお相手を務めるのが福岡雄大ですが、これがまた、エノケン・ウルリックとはぜんぜん違ったメリハリの効いたヨハン。
ぶっきらぼうで仏頂面と思ったら寝入った女房を見て「ヒャッホウ」と飛んでいくあたりは、さすがといいますか。
彼はやはり二枚目半のコンテンポラリー系だと生き生きとします。
実に存在感のある、役の懐の広い男になったなぁ…。

また八幡ウルリックが実にいい味わいです。
心から敬愛している麻美子さんへの思いが、そのままウルリックに乗り移ったかのようです。
秘めた思いが、でもおネグのシーンではコミカルに、「うほっ(☆ω☆*)」とばかりにドギマギとしているのが伝わってきて、実にいいウルリックでした。
アキミツ、昔の吉本さんとは違った味があって良いですね~。
彼の繊細ないい人キャラにぴったりです。

ギャルソン・マイレン筆頭に、チャルダーシュの池田君も、コールドの面々もみんなが全力投球で気合いがひしひしと伝わってきます。
小口君も一層濃厚です(笑)
マイレンの顔を見ていたら、DTFで見た、マイレンが麻美子さんのために降り付けたという、あの作品がよみがえってきて、一瞬熱くなりました。
客席も含め、すべてが「麻美子さんのために」「いい舞台のために」というベクトルに向かっていて、でも「別れ」の悲壮感はなく…というより覆い隠され(寂しくないはずない)、それが結果すばらしい「新国のこうもり」の舞台になっています。
なんて幸せなんだ…!
「この場にいる幸せ」というのを、この日は何度感じたことか。

そういう「幸せ」のなかでじわっときた…というより、ある意味我に返ったのが留置所のシーン。
あの麻美子さんの恍惚の表情を見ていたら、彼女のバレエ人生、舞台人としての思いなどなにもかもが全て伝わってくるようで、ドキッとしました。
はたと、ああこれが麻美子さんを見る最後の舞台なんだなぁと……しんみりとしつつ。

でも、最後のワルツは華やかです。
明るくて笑みいっぱいです。
こんなワルツで舞台を締めくくれるなんて、すてきです。
ワルツを踊る麻美子さんの楽しそうな満面の笑みが忘れられません。
いろいろあったけど幸せだったんだなぁ……という思いと、感謝の思いでいっぱいでした。

カーテンコールはもちろん、上の方もスタンディングでした。
胸から白バラを抜いて、ひざまづいて麻美子さんに捧げる雄大がオトコマエです。
彼も立派に、大女優の、大ダンサーのエスコートを務めあげました。
最後までやってくれるぜコンチクショー雄大!(泣笑)
惜しむらくは、幕が下りたあとに雄大が麻美子さんにバラの花束を贈呈していたようですが、それを観客の前でやってほしかった。

でも広報下手の新国にしては、(宣伝効果を狙ったにしても)麻美子さんの引退を早くから発表し、彼女のコメントも載せ、創立以来の功労者である一人のダンサーを送り出そうとする気概はやはりあったと思います。
たとえ脇の人でも、こうして長く務めあげてくれたダンサーさんには、今後もこうしたセレモニーをしていただきたいなぁと思います。

この日に立ち会えて、本当に幸せでした。
寂しいけど、でも幸せでした。
コメディで去っていく麻美子さん、とても彼女らしい。
新国一筋で生きてきた麻美子さん、今後も何らかの形で新国に戻ってきてほしいなぁと、切に願います。
心から、ありがとうございました。
[PR]

by kababon_s | 2015-06-04 01:54 | 新国立劇場バレエ

国立劇場バレエ団「こうもり」:表現はさらに進化する

新国立劇場バレエ団「こうもり」、結局全キャストを見てしまいました(Z券含む)。
特設サイト

http://www.nntt.jac.go.jp/ballet/komori/

今まで「こうもり」は過去の新国や海外のも含め何度も見たことがありますが、こんなにおもしろい演目だったか、と今回の公演で初めて思いましたね。
しかもどのキャストもそれなりに味わいがあり、脇の子達含め隅々まで小技が行き届いている。
すごいなぁ、ここの皆さんは…。

この「こうもり」、姫でも王子でもなく、倦怠期の夫婦、という設定。
しかも子供が5人もいるってことは、めちゃめちゃラブラブだった時代が確かにあったわけですね。
そういう「大人の奥さん」ということゆえ、さらなる演技表現をさらけ出すことが求められていたのだと思いますが、主演の…特にベラ役は日本の女性はもとより日本人が最も苦手とする(であろう)濡れ場(笑)シーンなんかもあるわけで、そしてそこに真正面から挑んでいる。
これでまたバレエダンサーとしての幅をまた大きく広げたのではなかろうか。

またここにウルリックという、(基本的に)密かにベラに思いを寄せている友人が絡み、ストーリーに幅を広げます。
ウルリックも、そしてマキシムのギャルソンやお客、仮装舞踏会にしても、みんなそれぞれ好きなようにやっているようで、見るところがたくさんある、新国らしい楽しい公演でした。

そして最終日4月26日は湯川さんの引退公演ということで、今まで体験したことのない独特の空気の中での一体感がありまして、これは後日また。
まずは3キャストを。

●コルネホ効果と絢子さんの進化

ベラが小野絢子、ヨハンがエルマン・コルネホ、そしてウルリックが福岡雄大というキャスト。
いやいや、コルネホが色っぽいし、小さいのにぎゅんぎゅん飛ばして跳んで、さすがだなぁと。
初新国、初こうもり、ということだったようですが、最後まで仏頂面のヨハンを崩さなかったのはコルネホ解釈でしょうか。
彼は新国でもう一度見たいですね。
意外とキャラ合うんじゃないかしら。

そして最近いい具合に女らしさを醸し出してきた絢子さんが奥さんとなって、またぎょっとするような色っぽさです。
くるみシーズンは子ネズミとなってホワイエをうろつくおちゃめな絢子さんゆえ、彼女はどんな役でも楽しんでこなす受けの広さがすばらしい。
そしてその受けの広さが、いい具合に奥さんにもなっている。
さらに変身してからのコケティッシュな魅力はプティの世界の女性そのもので、またコルネホとの留置所のパドドゥの色っぽさ……というよりはもう何もかもさらけ出した2人の世界は、なんだかこちらまでドキドキが止まらないような表情です……(//∇//;)
一体絢子姫はどこまで進化するんでしょう。

またやはり、良くも悪くも話題の雄大ウルリック。
やはり雄大というべきか、ファーストキャストながらかなり色物ウルリックです。
ドン・キホーテでイケメンのエスパーダをギャグキャラにしてしまった雄大だから驚きはしませんが、彼のこういう創造性はほめるべきか…。

ともかくベラへの思いを秘めていない。
あからさま。
厚かましく図々しくて、人の家に毎晩上がり込んではカツカレー三人前くらいしれっと平らげて帰っていくようなオジサンというのか。
しかもメイクがエノケン。
欧米人に比べてコミカル演技が苦手な日本人ゆえこういうメイクにしたのかどうかはわかりませんが、雄大の場合、これが相乗効果でいっそう奇妙キテレツ(笑)
世界中探してもこんなウルリック、いないだろうなー。
いろいろこの男は「すごい」です。

●上司の娘は女王様

心配していないけど、でも一番懸案だった唯ちゃんのベラです(どっちだい)。
少女っぽいのにオヤジ殺しの彼女がどう倦怠期の奥様を演じるのか興味津々でしたが、さすが演技達者の唯ちゃんといいますか。
彼女なりのアンバランスな色気に女王様キャラというのか、一番インパクトがあったのが、留置所で旦那をしとめて「ニヤリ」な表情です。
実に唯ちゃんキャラ。

菅野ヨハンはやはり王子キャラじゃない方が彼には非常によくあって、唯ちゃんとのペアは予想通りというのか、やはり上司の娘と結婚して出世街道に乗ったは良いけど、やっぱりなんか足りないんだよ的雰囲気がぴったりはまります。

またこの日は子役がなかなか上手で、くしゃみのタイミングとか、ご飯の最中に踊り出す踊りもいい感じでした。

そしてメイドの今村さん。
彼女は人との呼吸にあわせるのが、つまり空気を読むのが上手なのか、演技達者なところを見せてくれました。
意外と演技面で彼女はもっと伸びるんじゃないでしょうか。

なにより八幡ウルリックが良いウルリックです。
ウルリックとしてはやはり八幡君の味わいが一番、ウルリックです。
秘めた思いが暖かくて、これはもう八幡キャラの真骨頂のような味わい。
ぜひ友達にほしいです。

●杞憂だったルミ子&賢也

本島ベラと井澤ヨハン。
ベテランお姉さまのもとじーに新人ピチピチ井澤っちということで、ルミ子&賢也になったらどうしよう、なんて思っていましたが、まったく杞憂でした。

卒なく踊る、でもおそらくそれが精一杯だったのでしょうが健闘のヨハン。
井澤色というのはまだ見えませんが、こういう舞台で新人で卒なく「良」の評価を得られるのは、これはこれでやっぱりすごいことです。

そして今回面白かったのは、相手がそういう若いヨハンだったからか、本島ベラがどんどんキュートにかわいくなっていくところなんですね。
元々美人さんの本島さんが、ドヤ顔を覗かせつつもすごくかわいらしいベラになっていく。
これが相乗効果?
井澤色はまだ見えないけれど、パートナーのお姉さま方の魅力を引き出すのも王子の大事な役割ですから、そういう意味では今回の井澤君はよくやったといえるかも。
でもワルツ一番下手でした(笑)
まあ仕方ないな、後ろの方々は毎回散々踊っているんだから。

この日のウルリックは福田圭吾君(最近弟君も出てきたので区別しないとな)。
世慣れして海千山千という感じ。
しかも踊りはやはりキレッキレでシャープで、音楽によく乗った軽快さが実に圭吾らしかった。

またこの日はZ席で、やはり見切れるんですが舞台がいつもより近かったのですよね。
ふと顔をあげると小口君が目の前にいて、いろいろ笑いが止まらなかった…(^^;

●個性豊かな愉快な面々

小口君は全日程通してカフェのお客や仮面舞踏会とかいろいろやっているわけですが、小芝居が効いてて、つい目がそっちに行ってしまう(^-^;
仮面舞踏会のとき、最後に輪になって踊る直前に両手でちょちょっと髪を撫でつけて、スーツの襟をピピッと正して、すちゃっ!と輪に入る、この瞬間芸のような動きが特におかしい(すごい、という意味で)。
仮面舞踏会の奇妙な手の振りは妙に真面目な顔してて、フィニッシュポーズのドヤ顔に至るまで、実に堪能しました。
いいキャラだなぁ彼は。

マイレンがギャルソンとチャルダーシュに配され、日によっては両方を踊るという、すごくハードながらも、それでも踊りこなす兄貴のすごさ。
またチャルダーシュのセカンドキャストに池田君が抜擢され、彼も日に日によくなっていきましたね。
特に千秋楽は演技もできてて、どうやらマイレンが演技指導をしてくれたということ。

またチャルダーシュでベラのサポートをするとき、マイレンはウルリック…つまり若手に譲るんですが、池田君はウルリックを制して自分でやっている。
これはマイレンの気配りなのか、味わいなのか。
こういうところになんかほっこりします。

ピンクのスーツ。
奥村君は可愛くて似合うし、輪島さんはセクシーに似合う。

気になったのが新人の中嶋君。
これはバレ友さんとも言ってたのですが、ヘタクソなのに背が高くて、しかも「オレオレ!」とばかりに酔ってるというかKYというかで、目立つんですね(笑)
でも萎縮するより、こういうKYっぷりも大事だろうとも思いますし、そういう意味では彼は実にコールドでのびのびと楽しそうにKYしてます。
いろいろ楽しい子が多いです、新国。

というわけで、次は湯川さんの引退の日。
[PR]

by kababon_s | 2015-05-24 03:10 | 新国立劇場バレエ

新国立劇場バレエ団「トリプルビル」(2):いつまでも浸っていたい3つの世界

新国立劇場バレエ団「トリプルビル」の続きです(1回目はこちら)。
3月19日と22日千秋楽はセカンド、サードキャストの方々ですが、どれを見てもそれぞれに味わいがあります。
特に千秋楽の3作品は1つ終わるたびに、いつまでも見ていたいのにもう終わっちゃう、トリプルビルが終わっちゃう~・゚・(つД`)・゚・ という寂しささえ感じてしまいました。

いつまでもこの世界に浸っていたい。

そう感じさせてくれる踊りを見せてくれた新国のみなさんには本当に感謝です。

●愛と哀の、テーマとヴァリエーション

19日は長田&奥村組、22日は米沢&菅野組。
女性がどちらも素晴らしかったのに対し、男性がどちらもいまいち調子悪い?
それでも千秋楽の米沢&菅野組は、千秋楽とあってかコールドの方々ももうハンパなく全力投球の素晴らしさで、この日は女性コールドからして感涙ものの出来です。

また千秋楽は指揮者バクランさんの顔がよく見えた席だったのですが、舞台とコンタクトをとりながらの、なんだかダンサーさんたちに対する愛情のあふれた視線がとても印象的。
いまいち調子の良くない感じの菅野さん(ゲネプロを見たバレ友さんによると、足をさすっていたとか…?)を気遣っているような感じにさえ見えましたし、聞こえました。

でも舞台は本当に素晴らしく男性が登場してくるあたりからテンションマックス。
新国の男の子たちは粒ぞろいでなにより品があるので見栄えがする。
煌めいているじゃないか、音楽に乗って…(*´꒳`*)

曲がいよいよ盛り上がり、華やかになるにつれ終わりが迫っていることをひしひしと感じ、チャイコフスキーってそうだ、きらめきや華やかさの中に「夢、宴はいつか終わるもの。永遠ではないのだ」という哀を潜める人で、だから身のよじれるようなロマンなんだよなぁ…と改めて思い出したり。

フィナーレ間近、男性主演1+4に続き女性1+4が登場して客席に迫ってくるようなクライマックスは鳥肌ものの迫力すら覚えて、感涙止まりませんでした。
間違いなく、新国のバランシンは絶品です。

●「いきもの」の遊ぶ不思議世界、ドゥエンデ

セカンドキャストのドゥエンデ。
本島&丸尾というコンテならこのお姉様よね、というベテランに男性は小口君。
これがまた、ファーストキャストとは違った味わいと世界を描き出してくれる。
落ち着いた輪島さんに対し、エネルギーに溢れる小口君。
力強く美しいお姉さまたちに見守られながらいのちを発する、見守られて育ち、でもしっかりと大地で支える「いきもの」です。
(殊に19日はドゥエンデ、トロイ・ゲームと大活躍で、個人的には小口祭りでした(笑))

また(個人的に)ドビュッシーの音楽ってすごく色彩的、絵画的で、特にオケは曲とともにいろいろな色彩が溢れてきて聞き入ってしまうのですが(だから仕事BGMにはならない)、そうしたドビュッシーの色彩感にダンサーさん個々の個性を交えたダンスが加わることで、世界の奥行きがぐっと深まってきます。

それは「ある深くてくらーい森のなかに、ふしぎないきものがすんでいました」という絵本のようにも思えます。

「ある人はそのいきものを妖精とよびます。
精霊とか、いたずら悪魔とか、こびとともいう人もいますし、それは野ウサギかゆれる木の葉を見間違えたんだろう、とわらう人もいます。」


2つなのか1つなのか、五月女さんと八幡君の踊りはまさに個でありシンクロしてもいるかのような踊り。
福田、福岡、池田の男性3人は目にも止まらぬ早さと若い力強さもを感じさせてくれます。
踊り巧者の福田・福岡となんら遜色のない池田君が見事すぎ、また3者の一体感が小気味いいほどです。

暗くて深い森はグリーンとブルーのコントラストが次第に透明感を持って輝きはじめ、最後はまるで深い沼の、でも水鏡のようでもあります。
女性陣が軽やかに跳んでいったあとにはいくつもの丸い水紋が見えるよう。
ハープの音色がまた幻想的で、しんと静まり返ったなかにいつまでも、見えないのに気配を感じるような余韻がまた味わい深いこと…!

もう一度見たい。
でも同じものは二度とない…。
……舞台の醍醐味です。

●いろいろ気づくトロイ・ゲーム

そして3つ目は若手組によるトロイ・ゲームです。
19日はファーストキャストがベテランの技や音楽性、個を全面に押し出す見事な演技性で、初日よりさらにパワーアップした力量を存分に見せてくれました。
対する22日の若手組は、15日の巷の評価がさまざまで心配していましたが、課題を修正して頑張ってきたように思います。
「踊る」だけでなく、音楽を身体に取り込んで、さらにキャラクターを出さないとならないこの演目は、真ん中はもとより、サブキャラ経験も少ない若手陣にとってはすさまじくハードで、またハードルの高いものだったのでは。

でも、彼らなりによく頑張った!

特に高橋君、林田君、小柴君、八木君とカテコでは清水君も。
高橋君はファーストキャストの八幡君とは違う、一樹なりの色を一生懸命出そうとしていたように思え、がんばれー!とエールを送りたくなりました。
「し――っ(*^b^)!!」の小柴君、「止まらない~!」の八木君も何かを掴もうとしていたのではないかしら。
カテコは「もうやめとけ…(;´∀`)」と思わず言いたくなるくらいの大サービス(笑)
八木・清水は体力無尽蔵ですか(笑)
でも彼らはここでアピールして名前覚えてもらわなきゃいけない!
何度も出てきてくれてありがとう!

●トリプルビルって大事

またこのトロイ・ゲームで強く思ったのは、舞台経験は大事だ、ということ(当たり前ですが)。
こういうトロイ・ゲームのような演目があったからこそ、普段後ろで踊っている子たちもいろいろ考え、キャラを出す、という命題に挑戦し、(見てはいないけどおそらく)15日よりいいものを作り上げてきたのでしょう。
これは私が言うまでもなく、ダンサーがステップアップするうえでも、とても大事なことです。

ベテラン組、若手組の実力の差というのは痛感せずにはいられませんでしたが、さらに若手組のなかでも新加入の子たちと、何度もコンテを踊る機会のあった先輩との差がこんなにも大きいとは!と思い知ったり。
新加入組は私が見ても、スタミナも足りず、やっぱり身体がまだ全然堅くて、プロダンサーのそれになり切っていないような。
然るべき人が見たらその差は歴然でしょう。
これはもう個々の精進も必要ですし、やはり古典もコンテも含め、いろいろ幅広い演目を踊ることも大事なわけです。

ダンサーさんの寿命は短いです。
50になっても踊っているすごい人を最近見ましたが、それはかなり希有な例で、40歳過ぎて踊れればいい方。
また全幕規模の踊りを作り上げようと思ったらカンパニーは大事ですし、できるだけいい環境で、できるだけ大勢のお客様の前で、身体が動くうちにいろいろな演目を踊りたいでしょうし、踊らせてあげたい。

そういう意味も含め、トリプル・ビルのようなプログラムはとても大事ですし、我々観客にとっても若いダンサーさんたちを知るという絶好の機会でもあります。

昨今、海外カンパニーの公演だってよほどのビッグネームでない限り満席があまりお目にかからなくなっているなかで、こういうマニアックな演目を満席にするのは大変でしょう。
ハンガリーでハンガリー国立バレエ団のトロイ・ゲームを見たときの抱き合わせがラ・シルフィードだったのですが、「古典とコンテを組み合わせることで、コンテをあまり見たことのないお客様にも見てもらえる」という広報の方の言葉を思い出します。
コンテを売るのに大変なのは日本だけじゃないのでしょうね。

でも、やっぱりバレエ団のレベルアップのためにも続けなければならないし、満席になり切らないのは折り込み済みと覚悟してでも(でも席を売らなくていいというわけではありません、念のため)、その分他の公演で取り戻すなど、いろいろ考えるところはまだまだたくさんあるなと思いました。

何よりやはり、今回のトリプルビは全日程通して、普段後ろで踊ってる男の子たちがニコニコと楽しそうに踊っていたのが一番印象的です。
だからお客も楽しくて、シアワセなのです。
[PR]

by kababon_s | 2015-04-02 23:09 | 新国立劇場バレエ

新国立劇場バレエ団「トリプルビル」:バランシン、ドゥアト、男たちの挑戦

3月14日(土)、新国立劇場バレエ団「トリプルビル」行ってきました。
詳細はこちら↓。
http://www.nntt.jac.go.jp/ballet/performance/150314_003721.html

この日は初日、ファーストキャストです。
演目は再演となるバランシンの「テーマとヴァリエーション」、ドゥアトの「ドゥエンデ」、そして日本初演となるロバート・ノースの「トロイ・ゲーム」。
実にそれぞれの作品の味わいが出ていて見応えのある、満足度の高い公演でした。
これはいいよ、ホントに。

特に古典では普段後ろに回っている男の子たちの出番が多いうえ、トロイ・ゲームに至っては男性だけ8人という踊り。
ホントに男祭り(笑)

テーマとヴァリエーションから実に男子達がニッコニコの笑顔で楽しそうに踊っていて、もうそれだけで胸熱なのに加え、ドゥエンデではベテランの頼もしさと若手の躍進に胸躍り、男性だけで踊られるトロイ・ゲームはそれぞれのキャラが立っているうえ、いい具合にアホっぷりも演じられてまぁ楽しいことったら!
こういう演目を組める日本のカンパニーなんてまずないよな、と思いながら、もっと大勢のお客さんに見てほしいよと、心底思いました。
ダンス系の方々(特に男子)、必見だよ。

●期待は裏切らない「テーマとヴァリエーション」

「新国のバランシンだったら絶対いいにきまってるじゃん!」という確信のもとに見た、
そして期待通りのバランシンでした。

主演は小野絢子&福岡雄大の鉄板ペアだけど、特に雄大がいいです。
少し痩せたこともあって白いお衣裳も普通に見ていられたうえ、もともとコンテもすごくいい人だけに、こういう演目は実に合います。
また昨今男トップとしての貫録もしっかり付いてきて、男性陣を率いて踊る姿が本当に頼もしいです。
絢子姫も清潔感溢れ、凛として美しい。
彼女はきっと21日はもっといい(←断言。スロースターターだからなぁ(;´∀`))

そしてキチッと振付をモノにしてこなすダンサーたちの修練の賜物たるや。
もちろん100%完璧とは言わないけれど(やっぱり特に女性で新しく入った方々の中に「んん???」というのはいる。ここは男子もいいから女性で危ういと却って目立つ)。
何より男子がある程度身長とスタイルが揃ってきたせいか、そしてまた新国の男子はきちっと踊るから実に見応えがあるのですよ。

さらに冒頭書いたように、男子がそれこそ先のバヤデールの出番の少なかった鬱憤を晴らすかのように、1つ目から嬉しくてたまらない、というような満面の笑み。
音楽がクライマックスに向かって盛り上がるにつれて、身体から音楽が溢れるような跳躍をする男の子たちを見てたらもう、ホントにうるうるきます。
1つ目からもうこちらも幸せ度MAX。

ダンサーさんではやはり細田さんがいいです(最近こればっかり(笑))。
どうしたって目が彼女に向きます。
井澤君と組んでましたが、(視覚的には)美男美女だなぁ。
江本さん、なんか顔がまろやかになっただろうか?
彼もぐいぐい前に出る人ではないけど、本当に流れが歌うようです。
好きです。

●森の精霊たちの「ドゥエンデ」

スペインのアンダルシア地方で「いたずらをする精霊」の意味らしい、ドゥエンデ。
薄暗い森の中で息づき、笑いを殺して潜んでいるような、時にはシュッと現れては消えていくような妖精たちの世界っていうんでしょうか。

音楽が「ドビュッシーのフルートとハープのためのソナタ」という、昔風な、でも前衛的おとぎ話(笑)のようでもある想像力をいろいろ掻き立てられる曲。

「パストラル(牧歌)」に本島さん、米沢唯ちゃんに筋肉美にますます磨きと色気が漲る輪島さん。
この3人を筆頭に、「シランクス」が五月女&八幡の待ってましたペア、「フィナーレ」に福岡雄大、福田圭吾、池田武志という男三人衆。
さらに「神聖な舞曲」で、女性が奥田、寺田、盆子原(抜擢!)、男性が八幡、奥村、輪島の皆さん。

本島さんの、人生経験という名の蓄積からにじみ出るような表現力というのかオーラがすごいです。
最近の彼女は踊りに凄みみたいなのが加わり、元々美人なだけに一層迫力があります。
そこにいたずら精霊のように絡む唯ちゃんに、輪島さんの頼もしさ。
踊る輪島さんを見るのは久々ですが、本当に筋肉美がストイックなエロさというのか色気というのかもう、とにかく見ていてバクバクです(//∇//)
いや~犯罪だわ、輪島さーん。

五月女&八幡は互いに実にテクニシャンでスピードも身体能力も等しいうえにサイズが合う。
…というか、八幡君にスピード共々ついていける五月女さんがすごいのか。

福岡・福田・池田の男性トリオ、福田君はやっぱりキレは今一番いいんじゃなかろうか。
またちゃんと福岡・福田のスピードについていく池田君の成長っぷりにも驚きます。
入団したての頃は太もも系かと思っていたけど、いい具合に身体がきれいになって、実に楽しみ。
健康的な王子も行けそうだ。

「神聖な舞曲」からクライマックスへ。
米沢&輪島、盆子原&輪島。
とにかくこのストイックに色っぽい輪島兄貴とオヤジ殺し系女子を組ませるところは偶然なのか、意図的なのか。
醸し出される独特の雰囲気がもう「にょほほほ~(//∇//)」というか、まあ萌えます。
いろいろ好きです、ドゥエンデ。
いい作品です。
ミステリアスで、萠えも入って、実に楽しかった。

●踊る漫才「トロイ・ゲーム」の挑戦

さて、今回一番楽しみで、そして懸案でもあったトロイ・ゲームです。
いかんせん、初演作品で写真や動画を見る限り、マッチョ。
筋肉踊り。

事前にハンガリー国立バレエ団で見る機会があったのですが(レポートはこちら)、「笑わせたモン勝ち、客も笑ったモン勝ち」という印象。
つまり踊りに加えてキャラ芸が必要で、いわば踊る漫才です。
もちろん芸術ですが、客も膝を正して芸術よろしくご高尚に見るもんじゃないな、と。

欧米の方々はそういうのは全く問題ないでしょうが、果たしてそういう演目を日本の男の子たちがやってのけることができるのか。
技術的には全く問題はないだろうが、顔芸等々で笑いを取り、かつ自身のキャラ出しができるのか。
それができなければ中学校の組体操だなぁ…と思っておりました。

が。
これがキャストのせいでしょうか、実に面白かった!

マイレン親分にお笑い担当隠れボス的八幡君、キレッキレの福田君に、濃ゆめのイケメンで役者の小口君(前髪ウザオなんて妙名が一部定着しつつあるため責任感じつつ、でも絶賛応援中(//∇//))、最近癒し系の味わいが出てきた原君、知的さとほのかな色気も漂う宝満師匠、絶賛元気急成長株の池田君、頑張ってついてってるぞ福田紘也(弟)君。

これだけキャラ者が揃い、モンゴル相撲と思しき半裸パンツで組手だの、蹴り合いだの、スポーツの腕比べをするわけです。
30分、ひたすら。

どれだけハードな踊りだろう。
さらにそこにお笑いとコントを交えつつ、まあ動きまくるわけです。
踊りの技術はもとより、キャラを、自身を出さねば作品自体が面白くない、というのは日本人にとってはある意味挑戦ですし、そういう点では難易度高い演目を選んだなぁ…と、改めて思います。

人間ジャングルジムから一人「し――っ(*^b^)!!」と抜けて山崩しする小口君のお茶目っぷり。
ここで笑いを取らないと始まらない、というポジションに小口君を据えてくれたのは実にいいセレクトです。

スローモーションの武士道?と思しき組手のマイレンはまるで師匠。
1人ずれて笑いを取る道化的キャラに八幡君がいるのがいい感じ。
また彼がそれを見事にやってのける。
マイレンや八幡君のような芸達者なベテラン――いわゆる隠れボスがいるからこそ、若い者も「おーっ☆彡(。o`・Д・)o! 」とばかりにテンション上がるわけですね。
いやいや、実に楽しかった!

きっとまだまだ弾けられると思います。
動いて動いて頭カラにして、それこそアッパールームに突き抜けた状態で踊ったらどうなるんだろう。
実に楽しみです(*^▽^*)

このファーストキャストは19日、21日とみられますので、ぜひ!!お出かけください!
滅多に見られないよ、こんなの(笑)

というわけで、新国トリプルビル、このあとキャスト違いでも行きますが、キャストごとに違った味わいがあると思います。
まだ19日(木)、21日(土)、22日(日)と公演がありますので、ぜひぜひ!お出かけください。
[PR]

by kababon_s | 2015-03-17 04:31 | 新国立劇場バレエ

新国立劇場「ラ・バヤデール」(2):げに奥深き人の業

新国立劇場「ラ・バヤデール」21日、22日分です。

●「女」の戦いと「リーマン残酷物語」

長田ニキヤ、菅野ソロル、本島ガムザッディというベテランキャストに、輪島大僧正、ラジャがマイレンとこちらもベテラン。
じわじわ来る大人の熱演と申しましょうか。

長田さんのキャラはニキヤに合うだろうなと思いましたがやはり合いますね。
菅野さんは「上司と恋人との板挟み」的シチュエーションが妙にリアルです。
なんというか、予想通りの(笑)リーマン戦士。
24時間戦えますか?

また輪島大僧正が、エロ全開のマイレン大僧正とは打って変わって、聖職者なのに道を踏み外してしまった感ばっちりの生真面目僧正。
仰業なアクションこそないものの、毛穴からにじみ出てくる演技が実に味わい深い。
なにより輪島さんの美しい筋肉が、坊さんの緋衣の下からチラ見えする辺りがまあ何ともエロくてドキドキしますね、これはこれで。
なんて罪作りな坊さんなんだw

そして本島ガムザッディはやはり美しい。
貫禄の美しさに大人の余裕というのでしょうか。
私にひざまづかない者がいないはずないでしょうとばかりに、動き一つひとつに余裕と品があるのに、鬼気迫るものも同時に感じます。
大人の女…ベテランの意地。
貫禄女優です、やはり。
もうソロルはひれ伏すしかない。

マイレンのラジャといえばもう本気の王様で、鼻息でフンととばすようにニキヤのヴェールを「俺を誰だと思っている」と投げ捨てる辺りなど、下賤の者のことなど知らぬわ的で、やはりこれもへへぇ~~っとひれ伏すしかない。

すごい父娘です。
そしてその父娘に全力で体当たりしていくような長田ニキヤがすごい。
想像以上に激しくてびっくりですが、これくらい激しくないと対抗できないでしょう。

こういうこれまた貫禄十分に濃ゆい方々相手に、初役リーマンソロルはただただ翻弄されます。
洗濯機のワイシャツどころじゃありません。
本来洗濯機にかけてはいけない携帯用の紙シャツでした。
溶けてしまいます。
ただただ、幻影の中にのめりこみ、贖罪の思いとともに幻影のニキヤのもとへと走ります。

4幕のクライマックスにソロルがニキヤを追いながら幕が降りたのは、菅野さんが初演ゆえタイミングがあわなかったのか、それともニキヤに殉じたかったのか(まあきっと前者でしょう)。
いずれにしてもじわじわくるバヤデールでありました。

この日は黄金仏の福田君が力強くてキレキレでした。
壺娘の細田さんも実に表情豊かで暖かなおねえさんでした。
細田さん、本当にいいわー。


●女にはそれぞれ2面ある

22日、米沢ニキヤと長田ガムザ、そして雄大ソロル。
米沢&長田は今度はそれぞれに役を変えての挑戦です。

雄大君は3人の中では一番戦士らしいソロル。
八幡マグダヴェヤにニキヤ呼び出しを告げる前の演技がこまかい。
見られてないかな、誰もいないかな、とあちこち覗き込んで念を入れるあたりがいかにも「密会」といういや~んな、そう、2人とも実はホントはイケナイのよねぇ、という状況がよく伝わってきます。

そして米沢&福岡はこの日もちゃんとカップルに見える。
思えばこの2人が初めてカップルに見えたのは先のDTFでしたが、そこに何か契機があったのだとすれば、宝満師匠様々ではなかろうか(笑)

唯ちゃんのニキヤはピンと筋の通った、でも恋する娘でもあるニキヤです。
ガムザが地かな、と思いましたがこの筋の通り方もやっぱり彼女ですね。

対する長田ガムザはやはり大人…というかお嬢様としての落ち着きと余裕があります。
腕輪を渡そうするところ、最後に首飾りを突き出すところといい、動きがゆっくりだからこそ滲む本気と品というのでしょうか。
米沢、本島とも違った味わいで、むしろニキヤよりこちらの方が印象に残ります、長田さん。
そして少し身体を斜めにした「コ・ロ・ス」ポーズが、これはこれで実に美しく怖い。

そして彼女のガムザは「キレイ」です。
つまり、この後2幕で続く蛇のことも、お父ちゃんの企みも知らないガムザですね。
悪いのは全部パパで、そしてそれを受けて立ったかのようなマイレンパパの悪党っぷりといいますか、ふてぶてしさがまたすごい。
21日の共犯的パパとはまた違う。
マイレンはこういう相手の空気を読んで役を作りだす反射神経が本当にすごいんだなぁ。

米沢ニキヤはまた生身の人間と言いますか。
恋する娘で、しかし本質的には筋が通った娘さんゆえ、大僧正の申し出もきっぱり拒否。
でもソロルは好き、という矛盾、あらがえない思いでしょうか。
恋する娘の業。

ですから身分の高いガムザ姫に対して、最初はお行儀良くしているものの、この諍いはどんどん激しくなりど突き飛ばしあい、最後は思わず刃物。
そのときの自分の手を見つめるその間が役者。
自分にこんな恐ろしい心があったのか、これほどまでにソロルが好きか、という思いがズンと伝わります。

そして2幕の反狂乱の駆け込み、目を合わせてくれないソロルへの絶望でその場を去ろうとしたら花籠。
にわかに信じられない、という表情は至極当然だ。
そうだろう、もう何を信じていいのかわからないでしょう。

だからこそ、花籠の踊りは唯一の自分の心の真実、ソロルへの想いがひしひしと溢れる。
切ないです。
泣けます。

その雄大ソロルですが、プログラムでは「ソロルは結婚式の時点で後悔している」とあったのですが、これは単に私がそう見えただけなのでしょうが、なんだか現実を受け入れ結婚する気があったように見えました。

諦念というのでしょうか。
男が本能的に持つ出世欲?

ラジャに対する無意識の無条件降伏っていうんでしょうか。
ある意味ガムザが美しい、というよりむしろ将来の隊長の座、元帥の座といった出世欲的男の業(そんなものあるのかわかりませんが)のようなものが感じられました。
それこそ、すまん、ニキヤ、出世したら迎えに来る、くらい考えていたかもしれません。
雄大ソロルは戦国武将的に妻と側室とか使い分けそうです。
でも、さすがにニキヤの「死」のインパクトはでかかった。

自分の甘さ、愚かさに気づいた3幕以降は急降下、後悔しかないわけですね。
3幕の影の王国、なんだかこれまで見たのとは違う、男…というかオスのロマンというのか身勝手さというのか。
考えてみればこの新国のバヤデールの3幕はニキヤ亡き後はもうソロルの思い、ソロルの幻影、ソロルからみたニキヤで話を進めても全然いいわけですから、完全に「ソロルによって作り出された」の夢の世界でいいわけです。
ニキヤが優しく、許してくれている、と思いこんでもいいわけです。
そして唯ちゃんのニキヤは目は合っていないのに笑ってるみたい。

2人でどういう話し合いをしてこの3幕をつくってきたのかわかりませんが、話し合ったって舞台は生物(ナマモノ)。
役として生きていくうちに当初と違ったものになっても不思議はないのかな、とも思います。
というか、先の花籠にしても、ソロルのこうした解釈にしても、指導陣がもし自由にやらせているのだとしたら、それはそれですごいことです。
自由にやらせる、のと放置するのとはまた別でしょうし、果たしてこの場合はどっちだろうとも思いますけど(笑)

ともかく。
もう終幕なんて、ヴェールを持つのが「ニキヤの影」だろうがニキヤだろうがソロルにとってはどちらでもよくて、彼的には「ニキヤが赦してくれた」という(ある種勝手な)思い込みだけでもう十分なわけです。
果たしてこういう意図があったのかもわかりませんが、身勝手でヘタレだけどオスを通したソロルは面白かった。
実に業の深いドラマです。

多分これ、ニキヤが絢子姫だったら、普通の、プログラムのコメント通りソロルでありバヤデールだったのでは、と思います。
最初から最後までニキヤのことが好きでしかない、よくあるソロルに終わっただろうと。
絢子・雄大はバラしたほうが面白いですね、絶対。

あとやはり、輪島大僧正が非常に味わいがありました。
2日目はキャラがより明確、というのでしょうか。
基本表情を変えないポーカーフェイスではあるのですが、ニキヤのヴェールを取ってじっと佇むところなどもう「ドキドキがとまらない…落ち着け自分(滝汗)」といった焦燥感や「いけない、私は聖職者…」というオーラが立ち込めています(笑)
1幕のニキヤとソロルの密会での「大僧正は見た!」シーンでは(誰も見ていないからこそ)欲情丸出しで「うぁぁぁ~!!」と悶絶するから「コ・ロ・ス」のポーズも迫力満点。
1人で聖道俗道を右往左往しているような初々しさすらあり、聖職者とはい人間味もあって、赴任してきたばかりの新米大僧正かいな、と変に妄想したりで実に楽しかったですね(笑)


またマグダヴェヤの八幡君は黄金仏よりこっちの方が生き生きしている。
彼は演技したいのかな?
また八幡君が入ると修行僧の一団がすごく締まる。
「アキミツに続けー!!」とばかりの団結力。
八幡君は愛されキャラだなぁ。

またこの日の仏像は奥村君ですが、スリムでタイ辺りの仏様です。
奥村君は王子から仏像まで、役幅が広いなぁ。

それから(1)で言い忘れましたが、2幕のGPDDの時の男子、江本さんが素敵でした。
彼の踊りは途切れなくよどみなく流れるようで、歌みたい。

ともかくたっぷりと楽しんだバヤデールでした。
こんなに面白くてすごいんだから、広報にもっと頑張っていただきたいとホントに思います。
[PR]

by kababon_s | 2015-03-14 03:41 | 新国立劇場バレエ

新国立劇場バレエ団「ラ・バヤデール」(1):キャストゆえの面白さ

新国立劇場バレエ団「ラ・バヤデール」を観てきました。
今回は17日(火)、19日(木)の半分、21日(土)、22日(日)と、結局全日参戦。
ニキヤとガムザ、実力の拮抗した者同士による「バヤデール」がこんなに面白かったか、こんなにもドラマが深くなるものか、今まで観てきたバヤデールは何だったんだ??とこの作品の面白さ自体に改めて気づかされました。
すごかった。

ニキヤ/ソロル/ガムザッディの順に平日2日が小野/ワディム・ムンタギロフ/米沢、21日長田/菅野/本島、22日米沢/福岡/長田という3つの全キャストを観ましたが3種3様、それぞれに世界観が違い実に濃密です。

一言で言えば初日組は小野VS米沢が目玉の豪華キャストで、若い2人中心の「娘たちのバヤデール」。
21日はベテラン組による「女たちのバヤデール」。
22日はそれぞれニキヤ、ガムザを演じた2人が役を変えての舞台。
またこの日の福岡ソロルが独自の解釈でしょうか、男の業(のようなもの?)を感じさせられて実に面白かったですね。

また主演の3人がぎっちり輝くことで、大僧正とガムザのお父ちゃんであるラジャの存在感がとてもくっきりしてくる。
今回は前半2日が大僧正/ラジャの順にマイレン/貝川、後半2日が輪島/マイレン。
これがまたそれぞれ味わいがありました。

●豪華キャストの「娘たちの戦い」

前半2日間の小野/ワディム/米沢組。
平日夜はやっぱり(スケジュールにもよるが)きついです。

それでも必死に走ったのはひとえにこのキャストだからです。
個性は違えど実力ともども日本のバレエ界では間違いなくトップクラスの、新国2枚看板の競演。
おそらく今考えられる日本最高のキャスト。
いわば姫川亜弓と北島マヤの対決!というくらいの組み合わせで、これを観なくてどうするよと。
最近判で押したように、役とか作品内容とか何も考えてないの?的キャストが多いけれど、このキャストは褒めます。

そして期待を裏切らない、想像以上の感慨でした。
ニキヤとガムザがしっかりすれば、これほど話にも、ヘタレなソロルの行動にも筋が通るものかということを改めて思い知りました。

ほんとに今まで観ていたバヤデールは何だったんだ。
ニキヤとソロルだけ海外豪華ゲスト、という配役ではこの作品の面白さはやっぱり伝わりにくいですね。

いやでも、マリインスキーや大昔のレニ国、パリ・オペラ座、もちろん先のボリショイの公演でザハロワ・ニキヤとアレクサンドロワ・ガムザッディというすごいキャストも観ていたんですが、ここまで面白さを感じたか、というと違う。
影の王国で終わっているからでしょうか。

顛末から言ってしまえば、この新国の牧版は、影の王国のあとに4幕があるわけです。
寺院前でソロルとガムザの結婚式が行われようとするそのとき、神の怒りで寺院が崩れ落ちる。
この辺りはマカロワ版と似ているのですが、牧版ソロルはニキヤに導かれて昇天するかと思いきや、途中で倒れ息絶えるのですね。

この余韻が、いろいろ考えるところがある。

「白鳥」の誓いを破っても結ばれるご都合的なハッピーエンドとは違い、この「バヤデール」では誓いを破った裏切りは許されない。
3幕の影の王国がすでにソロルの幻影世界であり、その世界のニキヤ自身がすでにもうソロルの描く幻です。
果たしてニキヤ自身も昇天できたのか、神の世界に行けたのか…と思わせられます。

そういう「バヤデール」を小野、米沢、ゲストとは思えないほど不思議なほど新国に馴染んでいるワディムに、大僧正マイレン、パパたるラジャは貝川さんが演じました。
観る側としてもよく馴染んだ「言語」で紡がれる物語ゆえに、一層迫ってくるものがあったのかもしれません。

ニキヤという恋人がいながら、ラジャの娘・ガムザッディとの婚約を命じられ、ガムザの美しさに心揺れ動いてしまいニキヤを裏切死に至らしめてしまう、というヘタレなダメ男・ソロルの物語。
そこにニキヤに横恋慕する大僧正、力づくで何でもできるぜ、なラジャの思惑が絡みます。
昼メロです。
プログラムに今回ダンサーさんの作品解釈がありましたが、小野さんのいう「ニキヤも黒い女」(要約)がとても納得がいきます。

神に仕える寺院の舞姫、つまり巫女でありながら、ソロルと密会するニキヤ。
「ニキヤ自身も罪深い」という小野さんの言葉通り、巫女でありながら恋する男との逢瀬に喜びを隠せないわけです。
そして「ソロルをあきらめろ」と高飛車に告げるガムザお嬢様の懇願に一歩も引かず、思わず刃物を手にしてしまう、激しい娘です。
ニキヤに惚れてしまう大僧正だって生臭だし、特にマイレン大僧正は最初からもうニキヤにメロメロエロエロ。
そしてニキヤがソロルと恋仲と知り「殺すぞ」というエロ僧正。

ラジャももうほしいものは何でも手に入れる、という王様。
大僧正がソロルには恋人がいると告げると「だからなんだ、じゃあ殺すわ」と言い放ちます。
ガムザッディも父親同様、手に入れたいものは何でも手に入るし手に入れられて当然というお姫様です。
誰もが私にひれ伏して当然というお嬢様です。
だからVSニキヤのシーンでは、ニキヤが一歩も引かないのにビビリ驚き焦り、首飾りを与えようとするシーンでは「もってきなさいよ!ほら!こんな高価なものあげるって言ってるんでしょ!」とばかりにヒステリックになるわけですね。
そしてニキヤを「コ・ロ・ス」という恐怖のポーズを取り(本当に怖かった唯ちゃん)、また「父の企みを止められたのはガムザッディだけで、それをしなかった彼女もやはり罪深い」(プログラムの唯ちゃん談)と言うとおり、みんな強烈にドロドロです。

1幕の間に3回も「殺すぞ」ポーズがでてくるわけです。
こういう4人の強烈なキャラに翻弄されるわけです、ソロルは。
ソロルを囲む人々は全力で欲望に忠実に行動するから悲劇が起こる。
ソロルももちろんニキヤにホレながらガムザに心を惹かれる「欲」があるわけですが、あの強烈さに比べたらやはりヘタレです。
洗濯機でもみくちゃになってるワイシャツのようです。
しかも残念ながら形状記憶加工なしですから、よろよろシワシワでもう元に戻れません。
1幕、ニキヤとの密会はもうラブラブ。
また小野ニキヤが実に美しく、可憐です。
マイレン大僧正がなりふりかまわず「おおおお!」と驚き、こっそり拾ったヴェールに顔を近づけむっはーとやる辺りは、本当に可憐な美少女がエロおやじに狙われてる感じで、絢子ニゲテー!と叫びたくな
ります(笑)

そんな可憐な舞姫と密会し、今度はラジャの娘を紹介されて「おおっ!」とよろめくソロル。
米沢ガムザもお嬢様本領大発揮なのかもうほとんど地で行けているのか(笑)
とにかく視線のキツイこと、怖いこと。
ソロルにはにっこり微笑み、ニキヤはキッと睨みつける。

ソロルといえば、婚約式のグランパドドゥの途中辺りからもう表情が変わってくる。
迷いです。
このソロルはやはりニキヤが好きです。
満面の笑みのガムザとは対照的。
「きっ!」と引き戻すガムザ、まだ戦いは終わっていない。
これでもかとガムザの大技は、さすが唯ちゃんはしれっと、涼しい顔して難なく決めます。

そして悲しみのニキヤ、花籠の踊りから、花籠に仕込まれた毒蛇の顛末。
音楽が今回素晴らしく良くて(バクラン先生は毎回来てほしい!)実に音楽と一体化した素晴らしい踊りです。
ソロルの心変わりの悲しみと、裏切ってしまった神様に、それでも祈り、ソロルの心を取り戻したいという、もういろいろな思いがこもっています。

そういう踊りの途中に米沢ガムザがソロルに手にキスさせるんですが、実に鬼!(笑)
まあそのときの勝ち誇った表情といったら!
ゾワゾワしますね。

ワディムソロルはもうシオシオで、そこに(いろいろ自信がついてきたのか)最近貫禄の出てきた貝川ラジャがのっそりと娘の横に座るわけです。
しがらみでがんじがらめのヘタレ戦士は毒蛇に噛まれた、ニキヤの最後の懇願にも応えられません。

ですからそりゃあもう、ニキヤが息絶えた瞬間「うわぁぁぁぁぁぁ~!!!」と頭抱えて逃げ出してもしょうがないというか、そうなるだろうそれは、と。

そして影の王国から顛末へ。
新国のコールドが尻上がりに良くなっていくのはなんだかもうお約束的で、これもどうかと思えど、ポワント音がパタパタ響く中にあって、絢子さんがほぼ無音で決めてくるあたりは本当にお見事です。
ソロルが顔をのぞき込もうとしても、フッと緩やかに回転して目があわない、その流れが切なく美しい。
絢子さんは本当にきれい。
輝いてます。
白いバレエの中ではほのかに。

そして4幕、ニキヤのベールに導かれながら、息絶えるソロルです。
4幕のニキヤもすでに影ですから、ニキヤというよりソロルの観た幻影、ととらえることもできるし、ニキヤの魂だってどこにいるのかわかりません。
実に余韻が深い。

惜しむらくは4幕の結婚式、主要5人にソロルの友人(同僚?)だけ、というのが寂しい。
女性陣は影のコールドに出払っているとしても、男性はいるわけですから、兵士も坊さんも引き連れてもっとソロルを追いつめてもいいのに。

ヴァリエーションは細田さんがいいです。
影の王国とか、幽体色というのでしょうか。
彼女の真ん中は本当に観たい。

寺田さん、この人はリラでもキトリでも壷娘でも幽体でもシンデレラでも同じだなぁ…。
自キャラが役にはまればいいのでしょうが、そうでないとすさまじくミスマッチです。

あとピンクチュチュ、ブルーチュチュ等々のヴァリエーションで新しく入った方々は、本当に笑顔が下品です。
変顔大会じゃないんだから…。

というわけで、あと2つのキャスト分はまた後日。
[PR]

by kababon_s | 2015-03-03 13:06 | 新国立劇場バレエ

新国立劇場バレエ団Dance to the Future「Third Steps」:「発表会」から「ミニ公演」へ

1月16日、18日に新国立劇場バレエ団Dance to the Future「Third Steps」を見てきました。
新国立劇場バレエ団の振り付けグループによる創作作品の発表で踊るのは団員だち。
前芸術監督のビントレーさんの発案によるもので、いわばビントレーさんの遺産ともいえるプロジェクトです。

そのプロジェクトも今年で3回目。
1回目は平日1日のみだったのが、2回目は2日間、3回目の今回は3日間と、小劇場ながら着実に日数が増えています。
そしてほぼ満席でした。

内容は厳選7作品と招待作として監修も務めた平山素子さんの1作品。
そしてそれぞれに振り付け者の「こころ」「気持ち」「想い」が伝わってくるような内容で、作品によっては非常に琴線にふれ、目頭が熱くなるようなものもありました。
振り付け者の思いがダンサーというフィルターを通って観衆の前に形として現れたような感じで、これは前回の「発表会」とは大きく違う点かと。

総じて濃かったですし、ミニガラ公演のように楽しめました。
これもやはり前回と大きく違う点です。
ダンサーは振り付け家のご指名なのか、本公演とは違う組み合わせも見られ、またダンサーさん同士のつながりも垣間見えるようで、そのあたりも含めていろいろ楽しかったですね。

とはいえ、もちろん間に挟まれた、平山素子さんが初めて振り付けた作品との差の大きさには驚きを隠せませんし、プログラム構成のどSっぷりというか、必死にStepを上がってきた仔獅子達を、谷底に突き落とすとすような印象も受けますが、でもおそらくこのプロジェクトは将来舞台に上げる作品を作るためのものでしょうし、これもまたプロの道、表現、芸への飽くなき追求でしょうか。
厳しいです。

そして、でもやはり、今回作品を発表した7人の振り付け家の卵達には、拍手を送りたい。
来年は中劇場にランクアップしますが、ぜひ続けていただきたいプロジェクトです。
それも何の制約もなく、テーマもダンサーの選択もなにもかも、自由に。
創作/創造の芽と意欲を摘み取ることがないように(と一抹の不安とともに言っておく)。

以下すべての作品の感想を。
( )内は振り付け者/音楽、敬称略。

●はなわらう
(宝満直也/高木正勝「Rama」)

2回見て、2回とも泣けた。
なんでしょう、人に勇気と励ましを与える作品というのでしょうか。
米沢唯ちゃんと福岡雄大君、そして6人の女性ダンサーの踊るこの作品は、優しい、白と桃色の色合いの中でまっすぐで素直で優しさと希望と、最終日には力強いエネルギーさえ感じられました。

でも色合いはシンプル。
どんなにカラー絵図を想像しても、色彩は白と桃色といった淡い単色にしかならない。
形のないエネルギー、形になる前の、生まれ出るまえのエネルギー?
ピュアです…。

冒頭で福岡君の後ろからひょっこり顔を出す唯ちゃんのいたずらっぽい笑顔の眩しいこと!
米沢・福岡ペアはこれまでいくつもの公演を見てきましたが、今回初めてちゃんとカップルに見えます。
どういう吸引力が働いたんだろう。

2人の周りを舞う6人の女性ダンサー達は花びらのよう。
花が命を終えたかのように一瞬力尽き、でもそれをたくましい大地の精のような雄大君がふっとささえ、花はまた命を取り戻す。

無限の輪廻、いのちの、大地の、無限の営みと人の思いでしょうか。
輪になってくるくる舞う花びらが可憐で、でも永遠です。
喜びです。
これもまた大地の、大地よりもっと広く無限の…何だろう、空間でもない、時空、スペースでもない、やはりなにもかもを織り交ぜた「いのち」の讃歌かもしれません。

いとおしいです。
言葉による表現が太刀打ちできない印象は久々(^_^;)

音楽といい、こういう作風は日本人的かもしれません。
そして宝満君は振り付けることが彼の「ことば」なのかもですね。
作らずにはいられない人なんじゃなかろうか。
宝満君独自の作風かもです。
春の研修所の発表会でも宝満作品が上演されるそうですが、興味津々。

●水面の月
(広瀬碧/久石譲「6番目の月」)

ポワントを履いた、広瀬さんと川口藍さんによる女性2人の踊り。
月の光と陰、でしょうか。
前回気恥ずかしいほどにどストレートな内面表現の作品を作ってきた広瀬さんですが、今回は詩的なオブラートにくるみ、また一歩Stepを上がったんだなぁという印象でした。
時折音楽とシンクロするポワントの動きが心地よさも感じます。
「これが広瀬だ」という表現までもう少し、と言うところでしょうか。

●Chacona
(貝川鐵夫/バッハ「シャコンヌ」)

1回目から評価の高い貝川さんですが、また見応えのある作品でした。
曲はバッハのシャコンヌ。
これまでもクラシックを使ってきましたが、普段相当聴いているのでしょうか。

踊りは女性1人(堀口さん)に男性3人(輪島さん・田中俊太朗君・奥村君)。
衣装は昨シーズンに一線を退かれて登録ダンサーになっている千歳美香子さん。
ストイックななかに物語や心の動きや、時折エロティックなものまでにじみでてくるようでした。

また貝川さんの作品はそのとき選ぶダンサーさんの魅力が実によく出ます。
前回のフォリアも雄大君の力強さや絢子さんの堅実なエレガントさがよくでていましたけど、今回も堀口さんの身体の美しさ、輪島さんの逞しさと地に足の付いた地道な力強さに目を惹かれます。
特にダウンライトが当たると輪島さんのきれいな筋肉の陰影がくっきりでて、光る汗共々非常にウツクシイ!
ドキドキします(//∇//)
輪島・田中・奥村の男性3人が順にマッチョ>細マッチョ>華奢という配列も面白かった。

男女のペア、男性同士のペア、あるいは3人、4人と入れ替わりながら、しかも今回は上への空間も使った立体的な動きも印象的でした。

貝川作品はいよいよ来シーズン、本公演で上演されますが、こうして世に出る作品が次々生まれてほしいなぁと思います。
というか、そういう公演をもっとやってくださいよ、公演数少なすぎだから。

●Revelation
(平山素子/「シンドラーのリスト」)

ザハロワも踊ったという平山さんの初の振り付け作。
これをど真ん中にぶち込んでくる辺りが、なんともどSな構成。
そしてまたこれがデビュー作だとすれば、平山素子ってどれだけすごいんだよ、と言わざるを得ないです。

暗闇に椅子1脚と女性1人の苦の内面を振り絞るような作品で、今回は小野さん(16日)、本島さん(18日)が踊りました。
どちらも圧巻でそれぞれの色がよく出ていたんですが、小野さんは新たな一面を見た、というのでしょうか。
こんな踊りも、激情を絞り出すような踊りもできるのか。

本島さんがまた素晴らしい…というより、ただただ圧倒されました。
踊る女優・本島美和。

女としての色気に持ち前の美しさ、さらに蓄積された人生経験の厚さ・重さも感じられて鬼気迫る者があります。
平山素子×本島美和による世界。
これが「作品」であり「舞台」か…。

●The Lost Two in Desert
(高橋一樹/グレゴリー・プリヴァ「Retournelle」)

男女ペアの踊りで、踊ったのは振付者の高橋君と盆子原美奈さん。
盆子原さんは普段コールドにいるので、まじまじと見るのはおそらく初めてですが、バレエダンサーさんですから細くてキレイなんですが、でもふくよかで健康的なプチお色気が漂う独特のタイプですね。

作品はペアが変わると雰囲気ががらっと変わりそうなおもしろさがある。
盆子原さん&高橋ペアは健康的で、そのままフィギュアスケートのリンクにいてもおかしくない、アスリート的な味わいで、その無色さ加減がデフォルトといえるかも。

これがそれこそ絢子&雄大ペアだったらキレッキレの鋭さと持ち前のムードが出てきそうだし、五月女&(例えば)福田君のようなバリバリのコンテスタイルだったらまた全然色が変わりそうです。

また音楽的に一番ツボったのがこの作品。
マルティニーク島生まれのジャズ・ピアニストで、グルーシン兄弟を思わせる、空気の間を流れていくようなピアノは非常に好みです。
思わずCDを買ってしまったのですが、マルティニーク島で1902年に町を壊滅させた火山噴火の、唯一の生き残った囚人(牢にいて助かった)の伝説を元にしているCDの1曲だそう。
こういう音楽の趣味、センスが見えるところもまた面白いです。

●Andante behind closed curtain
(マイレン・トレウバエフ/ダン・クレアリー「Andante in steel」)

マイレンによる湯川さんのソロで、一番インパクトがありました。
清濁も美も醜もなにもかもを表現することができる湯川さんというダンサーのすごさが表現されている。

湯川さんの、同時にマイレンのバレエ人生というのでしょうか。
愛情や苦しみ、やるせなさ、悲哀、歓喜や絶望、怨念までもうすべてがこもって胸に迫り、こみあげてくる。
これを見ただけで、この公演に行ってよかったと思えるほどです。
そしてマイレンと湯川さんの絆、苦楽をともにして歩んできた2人のバレエ人生と信頼関係、友情等々の思いが伝わってきて嗚咽レベルの感動でした。

万雷の拍手の中で現れる湯川さん。
衣装は黒いジゼルのよう。
舞台には椅子が一つ。
踊りながら客席を見据えるような湯川さんの目は、芸一途のアーティストの真摯な強烈な眼差し。
なんだか怨念籠っています。
でも籠るんだろう。
籠るでしょう。
魂ですから。

片足のポワントを脱ぎ、首に巻きつけ去っていく振りは強烈なインパクト。
芸術を追求する、バレエの道は華やかなライトと歓喜とともにいかに修羅の道であったか…。
それでもその道を歩み続けてきた情熱に、心から敬意を表したいと思います。

●Phases
(福田圭吾/スティーブ・ライヒ「New York Counterpoint:Fast」、バッハ&グノー「アヴェ・マリア」)

コンテンポラリーらしいスピード感溢れる踊りならこの人、という色がすでにある福田君の作品。
「福田組」とも言ってもいいような、丸尾、五月女等々コンテの得意(であろう)人たちがダンサーに名を連ねています。

今回は2つの音楽の融合をテーマに据えたのでしょうか。
アヴェ・マリアのパートは寺田&菅野ですが、寺田さんはもとより菅野さんが古典とは違ういい魅力で、一瞬菅野さんとわからなかったほど。
菅野さんの新しい一面が見えてこれもこの公演の面白さのひとつです。
つーか、やっぱり福田君だと寺田さんの魅力がよく出るわ(笑)

音楽の融合はとても自然で、よくあるブツ切りのつなぎ合わせでなく、うまくいっていたと思うのですが、なぜそれをやりたかったんだろう…??

とはいえ、普段ギュルギュル踊る福田君ゆえ、そういう人が振り付けるとダンサーにも非常にスピーディーなものが求められるんだなぁと、しみじみ。
パリオペのヌレエフの運動会みたいな振り付けもヌレエフは自然に普通にやっちゃうからそうなるんでしょうが、やはり振り付けって振り付け者のテクニックが出るんだなぁ。

●Dancer Concerto
(小口邦明/ブラームス「ピアノ協奏曲第2番Op.38第2楽章」)

「こうくるかー!」とびっくりのシンフォニック・バレエ。
目指すところはバランシンかショルツか、衣装の感じからしたらやはりバランシンでしょうか。
ブラームスに乗っての男女4人ずつ、8人の群舞です。

小劇場なので若干満員御礼的な、スペースの問題もありましたが、それにしたってこういう作品に挑んでくる小口君の意欲にはまず、拍手です。
個人的にはこういうシンフォニック・バレエは大好きで、しかも(濃ゆめの)イケメン小口君は昨今どうしても気になるダンサーさんなので、心の中で大ブラヴォーでした。
踊り的にも代わる代わる真ん中で踊る流れは実に自然ですし、よく音楽に乗っています。
何より特に男の子達――小口君、(パーマでイメチェンの)林田君、小柴君、原君共々、実によく踊る。
気になる若手揃い踏みで眼福至福(*^▽^*)

女性陣のなかでも細田さんははやり美しく、独特のオーラがぐんぐん育っていますね。
細田&林田ペアや小口君の主演なんてぜひ見たいものです。
ずっと後ろで頑張ってきた生え抜きのダンサーさん達の主演は、長年応援してきたファンの喜びでもあります。
「俺たちだって踊れます!!」というアピールも伝わってくるようで、がんばれ!と大いにエールを送りたくもなりました。
がんがれ!
[PR]

by kababon_s | 2015-01-25 23:30 | 新国立劇場バレエ

新国立劇場バレエ団「シンデレラ」:充実の上田スペシャル

12月27日、新国立劇場バレエ団「シンデレラ」上田公演に行ってきました。
a0024385_3415292.jpg

東京・初台での小野さんの日に行き損ねていたこと、個人的に上田に行きたかったし友達いるし、ということもあり、この機会にと(笑)
でも旅公演は楽しいですね。
早朝の上田は氷点下ですが晴天にダイヤモンドダストがちらちらと舞ってて、実にキレイ。
「シンデレラ」の演目にふさわしい朝でした。

いつもと違う風景、違う雰囲気のなかで、そして初めてバレエを見るであろうお客様も多い公演で、会場の反応を見るのは楽しいです。
ブラボーこそ飛ばないものの、みなさん真剣に見入っている感じで、でも笑うところはクスクス笑ってる。
そして思いっきり拍手する。
温かいです。

さらに上田のホール、サントミューゼは今年秋にオープンしたばかりの、こけら落とし公演のひとつです。
新国さんのブログでもちらっと出ていましたが、設計は初台のホールと同じということで、なるほどアウェイ感がほとんどありませんん。
これは居心地いいわ。
初台に比べるとちょっと狭い舞台ではありましたが。
何より旅公演でフルオケですよ!
(現地のチラシ↓では告知されていたんですね。知らぬは遠征客ばかりなりw)
a0024385_3421795.jpg

てっきり録音だと思っていたので、これはうれしい驚きでした!

というわけで公演。

小野さん、やっぱりいいです。
新国の演目、やはり小野さんと米沢唯ちゃん両方を見ないとなーんか物足りない。
そして絢子さん、シンデレラはすごく合いますね、やはり。
清楚で空気をしっかり読んで、自分の立ち位置をわきまえたシンデレラはすごく小野さんらしい。
東京で見た公演もそれぞれよかったのですが、絢子さんが入るとジグゾーパズルの継ぎ目がなくなりきれいな一枚の絵になるような、そんな感じです。

姉ズは古川&高橋、パパはマイレン。
冒頭からテンションMAXで絶好調の姉ズです。

休憩のときの後ろの席のお嬢さんたち。
( ´^∀) 「お姉さんたち、男の人だけどー」
(∀^` )「ここまですごくする必要あるのかなー」
( ´^∀) (∀^` )「ねー」
というようなことをいってましたが、ほんとに今回はいつにも増してパワフル(笑)
でも何度も見ているうちに、私としてはこの兄貴な姉ズがだんだんリアルに姉に見えてきて困ってました(^-^;
ポワント履いているわけではないのに、つま先立ちのトトトトト……という動きや音がポワントみたいだったりで、女性の振りが様になってきてるというのか…(笑)

ともかくそこにお約束のダンス教師、仕立屋、靴屋、(待ってましたの)宝石屋・前髪ウザオ等々が登場し、もう男性陣達のどたばたもパワー全開。
ウザオはすさまじい、全身でウザウザ。
小口君、あんなイケメンなのに見事なウザオで、でも動き一つひとつはキレッキレです!
すさまじいお支度&お出かけの大騒ぎのあと、台風一過の如く残されるシンデレラの「ぽつー…ん」感がハンパないです。

そして次に登場する細田仙女がまた美しいこと!

冬の精で見たときはクールビューティーと思いましたが、仙女はほのかに温かさも感じられて、また踊りが堅実。
彼女を見ていたらガラスのクレアを思い出しました(わからない方は画像検索してください(^^;))。
デフォルト透明で、役に応じていろんな体温を持てる人かもですね~。

四季の精は春から順に丸尾、堀口、奥田、寺田さん。
舞台は一人分の奥行きが足りなくて、秋の奥田さんが横から走っての登場でしたが(^^;)
やっぱり堀口さん、今回はいいです。
あの長い手足をこれほど雄弁に感じたことはないです。

とまあ、美しい仙女や四季の精にほぉ~(*^_^*)っとしているところにきりりと、しかし美しく星の精達が登場。
透明な澄んだ音がしそう。
素晴らしい揃い方で、ワルツに至っては曲とともに否応なしに盛り上がります。
そして華麗な馬車の登場と、まさに主役の微笑みの絢子姫、奥村君が御者やってるー!?なんて笑いながらも、気がついたらどぅわーっ!と泣いてましたわ(笑)
いやぁ、素晴らしい1幕。

2幕はまず八幡道化のすごさ。
今回の道化、皆さんそれぞれによかったですが、八幡君はやはり格別です。
オペラグラスの狭い空間に閉じ込めて見ちゃいかんですね。
自在に空間を舞ってます。
なんて自由なの…!

雄大王子は気合いがノーブル。
なによりはやり踊りの面では安定感があり、安心して見ていられます。
王子の4人のお付きですが、江本さんの動きがなめらかだなぁと。
ぶった切れないですね、江本さんの踊りって。
動きが全部なめらかに繋がってて、いいですね~(*´꒳`*)

シンデレラ絢子姫の登場はもう息をのみます、舞踏会場のお客たちとともに。
キラキラだー。
てか絢子姫のヴァリを見守る雄大王子、ニヤニヤしすぎだわw

オレンジの踊りの姉ズは1幕でテンションMAXだと思っていたのに、さらにパワーアップ!
あの足の振り上げの高いこと、パワフルなこと!
限界突破!?
時にはおネェらしく、しかし男性が演じるゆえのところは男性らしくっていうんでしょうか。
ターザン古川にパゴダ道化の高橋、足の上げ方も息ぴったりな見事なオレンジです。
「やりすぎ?」と言っていた後ろのお嬢さん方もクスクス笑いながら思い切り拍手でした。
よかったよかった(*^_^*)

12時の鐘が鳴るところで緞帳一枚降りてきますが、ここで一瞬拍手が出かけたのはご愛敬。
音楽のスリリングさ、鐘とともにジャンプの道化、この展開は何度見ても、ほんとに見事ですね。

そして3幕。
絢子さんのポワントワーク、実にお見事。
姉妹(笑)が列になってドレスを脱ぐところはほほえましくて好き。
そのあと古川さんのごっつい身体で「あぁ~すっきりした~身体かゆい~」とやる(今やお約束の)マイムがまたどうしても笑える。

そこへまた嵐のようにウザオ(笑)やら仕立屋やらが登場し、そして王子。
雄大王子だけはギャグに乗らずに品格キープ路線ですね。

王子がだめならダンス教師!と迫る古川姉。
教師逃げて~~~!と思わず叫びたくなるダメ押し小芝居に、高橋姉を慰めるように笑かそうとする道化がこれまた微笑ましいです。

クライマックスの仙女と星の精の、マジカルステッキ(スイマセン)に明かりが灯っていくシーンは本当に好き。
おとぎ話の夢ですね。
永遠の時、永遠の幸せを象徴するようなラストシーンはいつもほっこりと、感動的です。絢子雄大の寄り添う2人の幸せそうなことったら(*´꒳`*)

というわけで、2014年を締めくくるにふさわしいすばらしい、実に充実の上田公演でした。
初台と上田、勝手に姉妹館…じゃないですが、ホールの設計者が同じというご縁もあることですし、また上田って意外と余裕で東京から日帰りできることもわかりましたので、これは今後も定期的に上田公演やってもいいんじゃないでしょうか。
蕎麦も美味かったですし(違うw)

2014年もこれを持って観納めです。
新国ダンサーさん、お疲れさまでした。
そしてありがとうございました、感謝。
上田をはじめ、長野のお客様にも感謝。
来年の新国は1月のDance to the Future。
プロモ動画が実にかっこいいんですが(↓)、これも楽しみです。
http://youtu.be/-8jeGYGORXE
[PR]

by kababon_s | 2014-12-29 23:33 | 新国立劇場バレエ

新国立劇場バレエ団「シンデレラ」:東京から上田へ、すさまじく期待の舞台

新国立劇場バレエ団「シンデレラ」、20日ソワレ(米沢&菅野)、21日(寺田&井澤)を見てきました。
何度も上演している作品で、しかし何度もやってるからこそ素晴らしい完成度で、本当に震えましたね。
見てよかった!
前回の「眠り」からたった1ヶ月しか経っていないのにダンサーさん達は一回りもふた周りも成長しているし、舞台上では随所で楽しげに小芝居が炸裂して隅々まで人が生きている。
しかもまだ伸びしろまで感じさせられ、頼もしいやらうれしいやらで、何度ジワジワきたかわかりません。
プロコフィエフの音楽は美しいし、振り付けはアシュトンなのでストーリーに破綻がないし、温かさいっぱいでこんなに幸せでいいのか、と思える舞台でした。

また総じてこの「シンデレラ」は悲壮感がない。
ポジティブで前向きで、彼女なりに家族を愛して自分の立場で生きている。

今更的な話をすれば、このアシュトンのシンデレラは一幕、義理の姉ズがシンデレラを置いて舞踏会に行くまで、また三幕の王子と出会うまでの部分は、ほとんど男性ダンサーによる舞台なんですね(笑)
女性ダンサーはシンデレラと1幕の洋服屋の女性2人という。

これは考えてみればすごいことだなぁと、一人で感心しています。
特に稽古場リハーサルを想像すると、男の子たちがどたばたワイワイやっているところにポツーン……とシンデレラが座っているわけですね。
もちろん「シンデレラ」としてのリハーサルをしているんでしょうが、でも一方でワイワイしている男子を眺めているうちに、姉ズ等々に対しても愛情がわく(または呆れる?)……というか、心が広くなるかもしれないです(笑)

( ゚д゚)ハッ!!これがアシュトンのポジティブ・シンデレラの理由の一つ!?
メイキング・オブ・シンデレラなんて動画あげてくれないかしらね、新国さん。
すごく楽しそうだわ。

ともかく総じてパワフルな姉ズやしょぼしょぼなパパに加えて、仕立屋だのダンス教師や宝石屋(←特に「前髪ウザオ」的小口宝石屋は今回のヒット!)など、それぞれ独自に役を考えているようで、それがうまくかみ合い、掛け合いコントのような舞台ができあがっているのかと思うと、男の子たちどれだけ仲がいいんだ、と微笑ましくなるわけです。
しかもみんな踊れるし。
こういう細かいところの積み重ねが、舞台やストーリーに奥行きを加えているんだなぁと改めて、思わせられます。

余談ですが、こういう男の子たちのドタバタのなかで、ヴァイオリンを弾くためだけに舞台に衣装を付けて上げられたリアル・ヴァイオリニスト(であろう)方々が、真顔で淡々と仕事をこなしている様子がとても異世界で、でも不思議とマッチしていて微笑ましかったです。
プログラムには彼らの名前も載せるべきではなかろうか。

というわけで、以下各日の感想。

●安定米沢シンデレラ&菅野王子

20日ソワレは米沢シンデレラと菅野王子の回。
唯ちゃんはなんだか演技の雰囲気がちょっと変わったでしょうか?
特に1幕と3幕の、変身前のシンデレラの感情表現が大きくなった感じです。
かといってオーバーアクションでもないし、いろいろ考えているなぁ、彼女は。
面白いです、実に。
ただ王子と絡むと今までの唯ちゃんなので、このあたりはパートナーシップとか、一人じゃできない部分なんかがあるのかもしれません。

とはいえ、菅野王子とは何度も組んでいるだけあって、安心して見られますし、やはりお互い余裕があります。
菅野王子、顔はリーマンでも、身のこなしや目線、動き一つひとつは、やはりこの舞台の「王子」ですし、踊りも堅実です。

古川&高橋姉ズはのっけからパワー全開。
大柄ででっかい古川兄貴が姉貴で大股でドカドカ歩き、すらり系の高橋君との掛け合いも絶妙。
この姉ズについつい目が奪われ、小口宝石屋を見落としました、不覚。
輪島パパが気の弱いおどおどしたパパで、実に姉ズに振り回されています。
パパに甘える唯ちゃんシンデレラは実にかわいい。
ぺたーっとお膝にもたれかかって幸せそうで、ほんとにカワイイ。

今回びっくりしたのは堀口仙女。
非常に腕の動きが雄弁で、この人こんなに上手かった??と失礼ながら目を疑いました(笑)
妖精たちの仕切っぷりといい貫禄さえ感じられ、これなら彼女もリラの精できたよな、とつい思ってしまいます、しつこいようですが。

堀口さんに限らず、四季の精もそれぞれにお見事。
五月女さんは彼女なりの言語がしっかりできあがりつつあるし、冬の精の細田さんはクールビューティーもいけますね。
彼女の主演もぜひ近々見たいところです。

今回キャスト変更で1回だけの登場だった奥村道化が見られたのはラッキー。
奥村王子の日はチケット取っていなかったので、これは幸運でした。
そしてまた道化があっちこっちで(いい意味で)好き勝手にやって場を盛り上げている。

今回カテコで目を奪われのが前述の小口宝石屋。
ひっきりなしに長くてうざい前髪を気にしてお辞儀をしてはかきあげて……を繰り返していて「前髪ウザオ」と密かに命名したほどにウザウザなウザオだったわけですが、これは小口君が考えた役作りなんでしょうかね。
こういう細かいところの積み重ねがいいです。
こういう伝統はぜひ大事にしてほしいものです。

●庶民派シンデレラと新人王子

21日は寺田シンデレラと鳴り物入りの新人・井澤王子。
どちらも初役でこの日一度きりですが、健闘した、というのが一番合うかも。
舞台の上のその他の方々に支えられて踊りきった、という二人ですね。
同時に、舞台上の人々すべてが本当にそれぞれに大切なんだと、当たり前のことを改めて実感しました。

正直井澤君より寺田さんの方が心配だったのですが(苦笑)、彼女なりに踊りきったという感じですか。
彼女の明るいキャラのよく出た庶民的なシンデレラですが、変身後はやはり王子が新人でガッチガチなせいか、シンデレラの方が堂々としていてお姉さんみたい(笑)
シンデレラが王子を見る目がリラの精の姉貴の如しだったりで、そういうところの演じ分けは一層の精進なのかもですが。
でも福田道化のサポートが愛いっぱいで、道化の掲げるヴェールの美しさはもうほっこり。
実に幸せな「シンデレラ」だなぁ。

姉ズは山本さんとこの日緊急復活の野崎さん。
シンデレラの上演なんてもう相当に前から決まっていたのに新しい姉ズを仕込めなかったのかよ、というのはおいといて。
でも一時的に復活してくれた野崎さんには感謝です。
そしてやはり同じドタバタでも山本姉は品があります、ドタバタしていても。
堂々としていていちいち笑えます。
ツボや呼吸の間がお見事。
素敵です。
釘付けです。

王子の4人の友人はジャンプも着地もやわらかく丁寧で上品で揃いっぷりも見事。
この4人の男の子たちだっていつ王子を踊ってもいい子ばかりなんですよね。
いつか見たいものです。

星の精は大和隊長なんと60回目という一番星。
そしてコールドが美しいこと!
星の精というきらびやかさと柔らかさ、同時に時の精でもある無情感と硬質感が素晴らしくマッチしていて見ているだけで溜息です。
よくぞここまで揃えてきたものです。
感涙ものです。

お父さんはマイレンですが、あの姉ズのパワーの前にはマイレンパパもおどおど(笑)
本島仙女は貫禄ですし、やはり彼女は美しいです。
美人だなぁ。

笑ってしまったのはカテコの時、山本姉の羽扇が本島仙女の顔をばさっ!と一瞬覆い隠し、その後間髪入れずに本島さんが彼女ならではの眼力炸裂で山本さんに強烈にガンとばしたこと。
と思いきや、反対側では八幡ナポレオンがヅラをとばして笑いをとっているし(^-^;
怖いものなどなにもない的ベテランさんたちのコントが炸裂する余裕と絶妙の呼吸に、ダンサーさん達の雰囲気の良さを感じました。
寺田さんは両側にイケメン王子と圭吾君従えてこれ以上ないくらい幸せそうな満面の笑顔。
温かいです。
シアワセいっぱいです。

その噂のイケメン新人王子・井澤君ですが、超緊張でしたね、やはり。
とにかく踊りこなすのに精一杯で、しかし彼なりにやれることはやったという感じでしょうか。
自分のキャラや王子の掘り下げ、サポートとか課題は山積みですが、お教室から今年入団でいきなり王子とか、事前のごり押し押し売り宣伝はどうよと思えども、健闘したと言っていいかと。
というか彼も相当にプレッシャーだったでしょうね。
「眠り」の4人の王子をやっていた時の方がリラックスして、のびのびしていたように思えます。

でもなによりやはり彼はルックスがいいです、やはり。
どう客観的に見ても。
足長いし、細いし、ノーブル系だし、あつじー無きあとノーブル王子不足の新国にはいなかったタイプです。
出てきた瞬間、やはり目を引きます。

このイケメ&ルックスなら、別にあんなに事前のごり押し宣伝をしなくても、普通に場数を踏んでいけば絶対に出てくる、王子を踊らざるを得ないタイプだと思うだけに、逆に新国運営サイドの売り方に世間知らずというか、KYさというか、ファンの気持ちのわからなさを思い切り感じますが(今に始まったことではないですが)。

ただ周りの思惑や売り方と、ダンサー個人はやはり別に考えたいなぁというのが個人的な思いです。
カンパニーという枠があるにしても、芸術、踊り、もの書きにしても(さり気に混ぜ込むな、ですが(^-^;)、どんなきっかけであれチャンスを得るのは大事なことですし、このチャンスを得るのって本当に大変(本当に大変だよ)。
どんな形であれ、チャンスを掴みたい。
きっかけを得たあと、それを伸ばしていけるか、評価につなげることができるかどうかは本人次第ですし。

そういう意味では井澤君はプロのバレエ人生でかなり特異な出方をしたタイプかと思いますが、今後どう新国に馴染んでいくのか、どこまで自分の色を出し、自分で考え役を作り芸を伸ばしていくのか、それとも……なのか、静かに見ていきたいと思っています。

いずれにしても2日間、非常に完成度が高く、しかもまだまだ伸びる、まだまだテンションあげられる、と思える素晴らしい舞台でした。
見に行けなかった23日東京千秋楽の評価も素晴らしいようで、この状態でさらに月末27日に上田市で旅公演があと1日、あります。

この上田、実は参戦しますが(恐ろしく寒いという現地情報(^-^;)、今回の集大成になると思うと実に楽しみです。
期待と期待と期待でワクワクが止まりません。
間違いなく素晴らしい舞台になることは断言できますので、上田市はもとより近郊の皆様、ぜひ足をお運びください(*´▽`*)
[PR]

by kababon_s | 2014-12-25 23:53 | 新国立劇場バレエ

新国立劇場バレエ団「眠れる森の美女」:いろいろ気づくシーズン開幕

新国立劇場バレエ団、新制作「眠れる森の美女」の8日(初日)、9日、16日(千秋楽)を観てきました。

主演は初日米沢唯&ワディム・ムンタギロフ、9・16日が小野綾子&福岡雄大。
9日はフロリナと青い鳥が唯ちゃんに井澤駿君ということで取ったチケでしたが、残念ながら井澤君がケガで降板。
始まる前からいろいろ噂の新人君ですが、とにかくプロとしての舞台を観なければなにも言えん、と思っていただけに残念でした。

ともかく、新制作ということですが、もうすでにいろいろなブログさんでも書かれていますが、プロダクション的には「今回の問題点(特に衣装や冗長さ)を手直しして、ちゃんとダンサーさんに寄り添ってくれる指揮者を呼んで、次はもっといいものにしてね」というところでしょうか。
とにかく指揮者のテンポがなんか気ままというか好き勝手というか、でれ~っと思ったらつんのめりそうとか、どうも終始逆撫でされているような猫の気分だったので。

またプロダクションは現代風に短く…という話だったのに、ふたを開けてみたらオーソドックスな冗長バージョンと変わらない3時間半の長丁場。
でも「きれいに踊る」だけではない新国ダンサーさんだからこそ最後まで観ていられるし、やはり楽しめるのです(以前某バレエ団で観た冗長オーソドックスバージョンは席に座っていること自体が拷問だったので)。

でも冗長とはいえ、追加された王子とオーロラが出会う「目覚めのパドドゥ」は実に情緒的で美しく、これがあるからオーロラと王子が恋に落ちて結婚する場面に説得力が増す。
しかも今回見た2組のキャストは実に情緒的に、情感たっぷりに踊ってくれたので感動もひとしおの、実に美しい場面でした。
踊りに加えて物語性も紡ぐことのできる新国だからこそ、こういう心理描写に深みを増す演出を加えることはよかったと思います。

さらにこの「目覚め」から休憩を挟み、オリジナルな振り付けを加えた3幕は(いろいろあれど)やはり見応えありました。

猫はコミカルだし、赤ずきんと狼は結構大変なことをしてて今までにみた「赤ずきん」のなかではかなり面白い。
親指トムはあれを踊れる男の子がいる新国だからこそ、でしょう。

特に宝石は男性1人、女性3人という組み合わせで、音楽にあれこれ手を加えているのは??ではあれど、振付は結構大変そう。
というかこの宝石はやはり好きです、衣装以外は(笑)
特に女性3人の色彩、なんとかならんかと。
もうちょっと色味が落ち着いていればいいのですが。

最大の触れ込み、カラボスをポワントをはいた女性役にした演出ですが、最後までストーリーに生かしきれなかったのが残念無念というか、あああやっぱり…というか。

つまり、冒頭でリラVSカラボスを象徴させる演出が、結局なにも生きず、哲学もストーリーも何もないまま終わってしまった。
2幕のリラとカラボスの対決も、もっと踊りの対決があるのかと思いきや、意外にあっさりカラボスが退場してしまい、ロットバルトが勝手に死んでいく白鳥を思わせられ、がっかり感の方が強かったり。

ただカラボスの乗り物のスパイダーマシンは結構ツボでしたし、衣装がやはりいいです。
これを着こなせる人ってそういない。
本島・湯川という華やかで(いろいろな意味で)大きなお姉さま方のいる新国ならではだと、やはり思います。

そしてこういうカラボスだからこそ、対するリラのキャストにはもっともっと気を使ってほしかった。
謎のゲストは最後まで謎ですし、寺田さんはがんばったと思うのですが、やはりあのカラボスに対抗するにはやはりまだまだ小さい。
もっとほかに適役がいるだろうと思うのですが、青い鳥とフロリナも含めて、キャスティングには大いに疑問の残るところです。

プロローグの「同じ色の妖精」も、同じ色だからこそ、今回新旧取り混ぜて配役されていたダンサーさんの「差」が実に明確。
新しい人たちは「うっ…」と思わず引くようなニパっとした作り笑顔なのですぐわかる。
新国ならではの「品」というのが、実は培われていたんだと改めて知る思いです。
そういう意味ではまあ、今後の精進に期待、というところでしょうか。

●改めていろいろ気づく新シーズン開幕祭り

ともかく初日の主演は米沢&ワディム組。
カラボスが本島さんに、リラがゲストの瀬島さん。
無敵のお嬢様×ロシア産の英国王子×眼力美女×コテコテ関西母ちゃん、というお祭りみたいなキャストでどうなるんだと思っていましたが、結局関西リラだけ浮いてた舞台でした。

あとは非常に素晴らしく、特に唯ちゃんとワディムのペアは、1週間しか合わせる時間がなかったとは思えないほどの、素晴らしい息の合い方です。
ワディムもゲストとはいえ、実に新国の舞台になじんでいて違和感ありません。
相手の身長が高いせいか、何より久々に唯ちゃんがのびのびと踊っていて実に良いですね。
以前厚地君と踊っていたときのように手足がすーっと延びててより雄弁に見えます。
そういえばワディムも西洋人にしては肩幅がそんなに広くなく、背が高くてなんとなくあつじーっぽい。
この身長とノーブルさを併せ持った人は残念ながら新国にはいないので、ワディムを連れてきたことについては大原さん、すごい仕事をしたと言わなければ。
そして新国に足りないのは「あつじー」なんだ、と改めて実感しました。

また唯ちゃんのオーロラは実にシアワセそう。
このプロダクション、プロローグで愛され祝福されて生まれたというところがひしひしと伝わってくるんですが、そのまま16歳になり、もうどれだけ愛されて幸せなの?というような輝きです。

1幕はそのお嬢様が突然結婚を言い渡され、恋という感情も謎のままに「えー…結婚??」という戸惑いと、いきなり目の前に現れたイケメン4人衆に囲まれドキドキの、女の子の恥じらいみたいなないまぜな感覚が伝わってきます。
かわいいです。
それでいて鉄板のローズ・アダージョ。
お見事。

唯ちゃんのオーロラはまた特にお父さん好きですね。
貝川王様が貫禄があって、今回実にいい王様なんですが、やりとりがとても微笑ましい。
王妃の楠本さんが下々の踊りを頷きながら見る様子は美智子妃のようでした。

2幕のワディム王子はノーブルでアンニュイ。
狩り場でも一人沈んでる。
盛り上げようとする貴族や友人ですが、その友人役でフル出場のマイレン、いい味です(泣)
この人のどんな役でも入魂のプロ魂、役作りといい本当にこれは新国の宝です。
そういえば新加入の子だとは思うのですが、小芝居なしの立ちんぼ多発で残念でした。
今回特にベテラン男性陣の配役が残念すぎるものが多くて、見ていて切なくなるくらいだったのですが、もっと彼らの踊りや役作り、芝居の間や小技なんかを若い者に見せてやってほしい。
このところはもっと指導陣がしっかりたたき込んでほしいもんです。

とまれ、なんだかアンニュイな王子がリラに導かれてオーロラの幻影を見て彼女を見初め、救いに行く。
目覚めのパドドゥでゆっくり近づいていく二人の心が実に美しいです。

「恋って何…??」という答えの出ぬまま眠りに落ちてしまい、100年たってその続きと答えを知るという、オーロラのストーリーに改めて気づかされます。
100年たっていても、オーロラにとってはまさに人生の、16歳のストーリーの続きであり、昨日のことでしかないわけです。
また幻影のオーロラが幻影なのか、幽体離脱したオーロラなのか、オーロラ自身もひょっとしたら夢で王子とあっていたんじゃないかと思わせられる辺りがすごいなぁと。
いやいや、「眠り」なんて何回も見ているはずなのになぁ…。
恐れ入ります、米沢唯。
そして王子の心情が描かれるからこそ、その後の結婚式の幸せ感はこの上ないのです。

そして本島カラボスはやはり美しい。
舞台での美しさと演技力は、パワーアップしているように見えます。
美しさ故の存在感というのでしょうか。
4人の手下がまた楽しそうで、本島さんの演技力共々この一団を見ているだけでとても楽しい。
だからこそ、対するリラのキャストが残念無念。
本島・湯川・長田のエピーヌ三人衆でリラとカラボスを回してもよかったのに。
これだけ多彩でキャラの違うダンサーさんがたくさんいるのに、そういうところを全く見ていないとしか思えない。
首脳陣はいったい本気で考えているのか、お話をどれほど理解しているのか。

●ノスタルジーに未来の夢は見られない

その謎のキャストの最たるところがリラの精ですが。

最初に断っておきますが、個人の趣味はさておき(←強調)、基本的にはリラの精を踊ったゲストの瀬島さん(貞松・浜田バレエ団)はやはりすごい人だろうと思います。
独特の存在感、いちいち関西弁が聞こえてきそうな振りにしても個人の「言語」を持っている方だというのは、今回よくわかりました(繰り返しますが、それが個人の趣味に合うかどうかはまた別の話です)。

このリラのゲストの件についての最大の問題は、新国の首脳陣が自団のダンサーの実力を信頼していない(わかっていない)こと、キャスティングにセンスがないこと、そして何より新国ファンの気持ちをまったく!!わかっていないことではないかと(そういう意味では、瀬島さんはある意味気の毒です)。

つまり新国ファンは(少なくとも私の周りでは)、リラにゲストなどまったく!望んでいなかった、ということです。

ファンとしてはやはりバレエ団のダンサーによるリラが見たかった。
そしていないわけなじゃないんです。
むしろ瀬島さんより(荒削りでも)新国の舞台に合う方はたくさんいる。

私は単なる見る専の観客ですから好き勝手に申しますが。

たとえば長田さんは今回オーロラでしたが、リラは主役並に踊れる人であることを考えれば、「パゴダの王子」でエピーヌ・デビューをした長田さんはリラにぴったりだったと思うし、それこそ先にも書きましたが、湯川・本島・長田でリラとカラボスを回してもよかったし、堀口さんだってダイアナやミルタ、白鳥もやっているわけですから加えてもよかったかと。
そしてオーロラの3番目にはフレッシュな、たとえば細田さん、奥田さん等々の抜擢があったら面白かったのに。

もちろんダンサーさんすべてがパーフェクトではないし、役不足なところだってあるでしょう。
でも新国ファンはそれでも、「どちら様?」というよくわからないダンサー(しかも3月のNHKバレエの饗宴で「この人がリラかよ……」的げんなり感もすでに強く植え付けられていた)よりは自団の、将来の可能性や片鱗、きらめきを感じさせてくれる人の方が断然、よかったわけです。

そして実際瀬島さんがどうだったかと言えば、出てきた瞬間紛々と漂うセピア色の世俗臭。
お好み焼きの紅ショウガのような真っ赤な口紅をはじめアナクロなメイクはまるで「昭和」のおっかさんで、スタイルもスーッと足の伸びたお嬢さん方の中では残念ながら前時代(美的感性が昭和のままで止まっているノスタル爺な方には美しいのかもですが)。
笑ってても眉間に縦皺、演歌な振り、こってこてのアクの強すぎる押せ押せ演技もドン引きでしかない。

バレエは「現実を忘れる夢舞台」のはずなのに、瀬島リラの登場とともに一気に現実に引き戻されるわけです。

観光で言えば昭和は「レトロ」「ノスタルジー」のキーワード。
さびれた温泉街や赤い円柱のポストが立つ昔の街角で、そこに感じるのはセピア色の郷愁であって、キラメキや未来ではありません。
ビントレー監督時代までに蓄積してきた(未完成でも)新しいものを生み出そうとするダンサーさんたちと、セピア色のノスタルジーな異言語に、残念ながら化学反応は起きませんでした。

まあでも結果的に新国には新国の「言語」と世界が、それもやはり質もレベルも高いものがまだあるんだということを気づかせてもいただきました。
( ゚д゚)ハッ! まさかそれを観客にしらしめるために瀬島さんを生け贄にしたのか!?(←超イヤミ)

とはいえ瀬島さん自身はお子さんを産んでまだ現役で活躍されているダンサーさんで、やはり人生のキャリアやバイタリティのある方だと思います。
お客には見えない部分で、新国ダンサーさん達のプラスになるものがあれば何よりですが。

ともかく。
新国首脳陣に声を大にして言いたいのは、もう噛み合わない変なゲストはいらないから、もっと新国のダンサーさんたちに経験を積ませてあげてください、ということです。
ただでさえ上演日数が少ないんだから。
このゲストのために貴重なオーロラ枠・リラ枠が取られ、長田さんの日程が平日1回のみになってしまったと思うと悔しいです、やはり。

絢子さんの舞台は長くなりましたのでまた後日。
[PR]

by kababon_s | 2014-11-23 01:11 | 新国立劇場バレエ