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東京バレエ団「ベジャール・ガラ」:日本男児の“ボレロ”

6日から始まっていた「ベジャール・ガラ」東京公演の楽日でした。
シルヴィ・ギエムが「ボレロ」を踊るということで文字通りプラチナチケット。
特に「ペトルーシュカ」「ドン・ジョバンニ」と抱き合わせの6日、7日のチケットは掲示板でも「求む!」の告知ばかり。
初日6日の、首藤さんが踊る「ペトルーシュカ」が見たかったのですが、こちらは手に入らず(-_-;)
7日が取れただけでもラッキーだったかもしれません。
結局この公演は7日、9日(「中国の不思議な役人」首藤さん@中国の役人)と11日(「中国の不思議な役人」首藤さん@ニセ娘、後藤さんの「ボレロ」)を見てまいりました。

ベジャール追悼ガラは昨年から始まっていましたが今回で一区切り。
昨年からこのシリーズにお付き合いして思ったことは、ベジャール先生、とてつもなくすごい遺産を東京バレエ団もとい、日本の、日本の男性・男の子ダンサーに残して行ってくれたということです。
大いなる遺産です。

とにかく男性密度が高い、クオリティの高い作品の数々。
「West meets East」とでも言いましょうか。
アジアのカンパニーに振り付ける、またアジア人が踊ることによって味わいが一層に深まる作品もあります。
日本人にしか踊ることができない「ザ・カブキ」のような素晴らしい作品も作ってくれました。
日本もの、中国もの、インドもの…。
世界的に高名なクリエイターでも日本と中国と韓国の文化・服飾の違いをちゃんと理解している人などほとんどいませんが、ベジャール氏は日本は日本、とちゃんと理解してくれていた、数少ない、希少なクリエイターだったと思います。
そんな人が、日本のカンパニーのために、数々の作品を残してくれたわけです。
…なんてありがたいことでしょう。

思えば「トゥシューズに画びょうが…Σ(゚д゚lll)」という漫画を読んでいた頃は、バレエは女性だけのもので、男性ダンサーなど本当に稀有な存在でした。
海外カンパニーの男性群舞を見るたびに「こんな男性だらけの舞台、絶対日本のバレエ団では見られない」と思い、またうらやましくも思っていたものでした。

それがどうでしょう。
いまや30人も40人もの、ある程度以上のクオリティを持った日本人だけの男性ダンサーが舞台を埋め尽くしている。
昨年末の「ザ・カブキ」はもとより、今日の後藤さんのボレロ。
本当に舞台にいるのは日本の男の子だけです。

あの世界に名だたる「ボレロ」の名舞を、日本の男の子だけで踊っている…。

私の記憶違いでなければ、「ボレロ」をレパートリーとして踊るのを許されているのは少なくとも今は本家のモーリス・ベジャール・バレエ団と東京バレエ団だけだったかと。
仮にもういくつかあったとしても、非常に限られたカンパニーしか踊ることはできなかったはずです。

これがどれほどすごいことか。

ギエムの「ボレロ」はある意味素晴らしくて当然です。
次元が違います。
男でも女でもなく、でも女王様であり神々しい巫女のようなギエムの踊りは本当に素晴らしい。
2回見ましたが、それぞれその日最高のクオリティを見せてくれ、溜息が出る思いでした。

でも今日の、日本初演の後藤さんの「ボレロ」は、まさに芸の神の降臨を待ち、そして最初はやわらかく繊細ながらも、中盤から終盤にかけては内からにじみ出てくるような秘めた力強さも加わった、日本男児の、日本男性の「ボレロ」。
日本の男の子ダンサーたち、希望を持ちなさい。
こんな素晴らしい作品をベジャール先生は日本に残してくれました――!
がんばれ、男の子たち!
そんな思いが込み上げてくるような、後藤さん、渾身の「ボレロ」でした。

後藤さんだけでなく、今日「ギリシアの踊り」を踊った長瀬君も、体は華奢ですが腕や体が伸び伸びとしていていて非常に私的には好み。
将来楽しみなダンサーです。

そして何より首藤さん。
「中国の不思議な役人」の中国の役人にしても、今日のニセ娘にしても、さすが!と思わせられる身のこなし。
動きの一つ一つに無駄がなく、すべてが流れるように繋がっていく…。
溜息ものです…(*´Д`*)

思えば首藤さんは日本におけるベジャール作品の第一期生ともいうべき人。
今回は追悼ガラということで特別参加で踊ってくれましたが、この首藤さんをはじめ、後藤さん、木村さん、平野君、中島君や長瀬君…と、様々な世代の男性ダンサーの共演を堪能した今回の公演です。
男が力を発揮してこそ、また日本のバレエもより高いレベルへと進めるのです。
ありがとう、ベジャール先生。
そして、がんばれ、男の子たち!

by kababon_s | 2009-02-11 23:06 | Ballet