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ボリショイバレエ「明るい小川」:コルホーズとソ連は時の彼方へ

ソヴィエト、ボルシェヴィキ、メンシェヴィキ、コルホーズ、ソフホーズ、ココム、コメコン、カーゲーベー…。

時代の流れとともに過去のものとなったソヴィエト。
そしてこの「明るい小川」はロシアの過去の時代、コーカサスの集団農場コルホーズを舞台とした抱腹絶倒コメディ・バレエです。
もちろん日本では本日初演。

いやいや、笑った笑った。
笑って泣いた。
このエンタメ性かつ芸術性がボリショイの神髄です。
もうこの時代を笑い飛ばせるようになったのか、ロシア。
しかも音楽はソ連時代の音楽といえばやはりこの人、というショスターコヴィチ。
ハラショー!

舞台はまず幕が開くと内幕にでかでかと描かれた鎌とハンマー!ヮ(゚д゚)ォ!
オフィシャルブログ参照ください)
そしてロシア語の、なにやらスローガンらしき言葉が飛び交っています。
なんてアヴァンギャルドなんだソ連!

お話はコルホーズ、つまりは集団農場にバレリーナカップルが慰問団(!)として訪れたところ、主人公・ジーナのダンナが美人の女性バレリーナに懸想する。
そこへ別荘(ダーチャ)の年寄り夫婦が絡み、いい年してそれぞれが男女のバレリーナにこれまたそれぞれ懸想して逢引きを迫る。
傷ついた若妻と呆れた村の一同&慰問のバレリーナカップルが「旦那も色ボケ年寄り共もからかったろうぜ!」というのが大筋です。

見どころは何と言っても2幕の「とりかえばや」。
女性バレリーナが男性に、男性バレリーナが女性に扮して色ボケ老夫婦をそれぞれからかうんですが。

ここがアレクサンドロワ&フィーリンの実力&演技力ばっちりのナイスペアならでは。
シルフィードに扮する、要は女性の衣装を身につけたフィーリン様がもう!!…麗しゅうございます…((((;゚Д゚))))

ナイスおかま。
動きがいちいち素敵過ぎ。
ポワントまではいちゃって、なんて楽しそうに踊るんでしょう(*^_^*)
今秋ボリショイを離れたフィーリン様ですが、これを踊りたくてわざわざゲストとして来日されました。
これがボリショイで見る最後のフィーリンです。
そう思うと腹抱えて笑いながらも泣けてきます・゚・(つД`)・゚・

アレクサンドロワとの息もぴったり!
先日アレクサンドロワの「白鳥」も見ましたが、どうしたってフィーリンと踊るこの「小川」の方が生き生きしているし、とっても彼女らしいんですよね。
ああ、これがボリショイ最後のアレクサンドロワ&フィーリンか…と思うと再度また泣き笑いです。

こんな抱腹絶倒コメディ・バレエが、それでも上演当初は反体制として批判され、以来お蔵入りになっていたとか…。
これがダメなら何がよかったのか。
ソ連という時代って、本当に一体なんだったのでしょうか。

時代の流れとともに過去となった「ソヴィエト」。
どうしたってボリショイもといロシア人にしか演じることのできないこの演目です。

1935年以来封印されていたこの「小川」を再演したのは2006年のことだったとか。
体制音楽家と言われたショスターコヴィチも、実は反体制の間で苦しんだ音楽家として脚光を浴びています。
でもまだ20年も経っていないんですよね、ソ連が崩壊してから…。
それなのに、もう半世紀も昔のようなことに感じてしまうのは何故でしょう。
時の流れ、人の意識転換の早さは激流の如し、です。

by kababon_s | 2008-12-09 23:58 | Ballet