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K-Ballet『くるみ割り人形』:何かを成し遂げた「夢」

K-Balletは初めてです。
なかなかチケットが買えなかったり、日にちがあわなかったり、高かったり。
この「くるみ」も昨年見たかったのですが、チケットが手に入らず、今回2年越しの鑑賞が実現。
もちろん「クマテツ」が踊る舞台で。

で、熊川哲也版「くるみ割り人形」。
この作品、いろいろなバージョンがありますが、一般的にプリンシパルは1曲だけ踊る「こんぺいとう」。
私的には、この作品は大好きでたまらないのですが、この「1曲だけのプリンシパル」がどうも納得いかないわけです。
さらに。
「“お話の主人公としての”クララの存在感が欲しい」
「ドロッセルマイヤーはステキなオジサマであってほしい」

こうした部分にナットクでき、お話を見事に作り上げているのがとにかく大満足……というかもう、感涙ですね。
あの「くるみ割り」をここまで深いストーリーを持ったお話に仕立てあげた熊川氏にはもう、感服です。

「金平糖」を踊るプリンシパル・マリー姫・人形の国のプリンセスがネズミの王様の魔力でネズミに、王子はくるみ割り人形に変えられる。
人形の国のドロッセルマイヤーがその魔法を解く「純粋な少女」を探しに、人間界へ行き、そこでクララに出会う、という導入。

このドロッセルマイヤーが実にステキ(#^.^#)
「オジサマ」でありミステリアス、魔法使いのような、でもダンディな方であるのが私の理想なのですが、今回は花マルです!
「うわ~これだよ、コレ(だんだん!)」という素敵さです。
これでぐぐっと引き込まれてしまいます。

お話の筋もぶれることなく、お馴染みのクリスマスパーティーで、客人として入り込んだドロッセルマイヤーが人形劇で、マリー姫と王子に降りかかった災難を説明します。
人形の国で何が起こっているのか。
クララにとって現実と夢の世界との距離が次第に近づいていくところがわかります。
夜、ネズミがくるみ割り人形を襲う場面とか、ときおりマリー姫の幻影が現れるところも緊張感が盛り上がり、いい演出……!
ためらいながらもネズミに拉致されたくるみ割り人形を助けるため、柱時計の「通路」に飛び込むクララが、いとおしいです。

1幕の見せ場のひとつでしょうか。
粉雪の妖精たちのコール・ドがこれまた美しい。
日本人は体こそ小さいですが、協調性とか人と合わせることがやはり得意なのでしょうか、コール・ドは本当にキレイ。
そこらの欧州カンパニーよりはずっと素晴らしいです。
途中で拍手が沸き起こるコール・ドは初めて見ました。

2幕は人形の国。
ネズミの王様に魔法をかけられ、灰色仮面になってしまった人形たちがコワイです。
「苦しむ人形たち」がよく現れていて、だからこそ、クララの力によって魔法が解かれたあとの喜び――「花のワルツ」が一層の歓喜と幸せに満ち溢れたものになってて……ナミダです。

そうなんです、本来2幕の人形の踊りのラストを飾る「花のワルツ」が最初のほうに来るんですね。
この「くるみ割り」は導入部分から音楽が編曲されています。
序曲の部分でも、マリー姫がネズミにされてしまうプロローグが入るため、例のネズミが襲ってくるところの曲がちょっと導入されていたりします。
そういうところでも、すごく音楽まで深く掘り下げられ、練られているんだなぁと感じるわけですが。

「花のワルツ」からお馴染みの人形たちの踊り。
王子と金平糖のパドドゥ。
でもって!
にゃんと、クララとドロッセルマイヤーのパドドゥ
もうツボ*・゜゚・*:.。..。.:*・゜(n‘∀‘)η゚・*:.。..。.:*・゜゚・* !!!!!
このドロッセルマイヤー、人形たちの踊りの間もずっとクララをエスコートしているわけですが。
これ、シアワセすぎません?
いや……タマラン。
このときの音楽ってなんだ?

そしてクライマックス。
夢のような宴があっという間に暗転し、王子も姫も去り、暗闇に一人取り残されてしまうクララ。
この展開……まさに夢から現実への急直下です。
すご!
「くるみ」の屋台骨であるテーマは「夢」、つまり少女の「どり~夢」ですが。
このリアリティある容赦ない演出!

そして。
目覚めたクララの枕元にあるのはマリー姫と王子の人形です。
この演出がまたニクイ!
自分の存在が誰かをシアワセにした、何かを成し遂げた「夢物語」です。
一生の宝物です。
よかったね、クララ。

すごく深みのあるストーリー展開に加え、セットの見事さ。
ネズミ達もリアルで、つぶらな瞳がキュート(#^.^#)
いわゆるよくある被り物の「頭だけネズミ」じゃなくて、全身リアルな着ぐるみネズミなんです。

振り付けも熊川氏だからこその男性舞踊のダイナミックさ。
こんなに踊れる日本人ダンサーが、これだけいたのか!
改めて、氏のバレエ界に対する貢献度の高さにも感服します。

何より、やっぱり熊川哲也はすごい……!
彼の踊りはTVやVTRでは見ましたが、やはり生で見るのは違う!
見てよかった……!
チケット高いけど、それだけのクオリティはしっかりあります。
これは来年も見たい……!
バレエや舞台のDVDとかは他人の目を通して作られているので、あまり見ようとは思わないのですが、今回に限り、買ってしまいそうです。

by kababon_s | 2006-12-21 23:39 | Ballet