ヌレエフ版「白鳥の湖」:げに奥深き「白鳥」

パリ・オペラ座のバレエ見てきました。
ヌレエフ版の「白鳥の湖」。
いや、何度も思いますが。
本当に奥が深いですね、この作品。
ヌレエフ版をナマで見るのは初めてですが、いやもう、もう一度みたいです。

「古典」という土台があり、そこに「王子の影」にスポットを当て、キャラを一層引き立てたのがこのヌレエフ版です。
家庭教師=ロッドバルト=王子の影、です。

本家「白鳥」は王子と白鳥にされた姫・オデットとの恋物語ですが。
これはいわゆるママンと家庭教師が全て、外界に興味がなく、娘にも興味がなく、下手すれば男にしか興味がないかもしれない王子のお話。
初めてホレた娘はロッドバルトの魔力で白鳥に変えられた姫。
それでも息子を心配するママンが花嫁候補を連れてきますがロッドバルトと白鳥そっくりの黒鳥にコロリとだまされ、悲劇へ……という筋書き。

とにかく家庭教師=ロッドバルトの存在感が見事です。
悪魔的家庭教師はなにやらロマノフ王家のラスプーチンの如く、宮廷内を牛耳っているかのような雰囲気さえ伺えます。
王子とのパドドゥがあったり、王子の2回目のヴァリアシオンをロッドバルトが踊ったり……。
クライマックスのオデットと王子、3人の踊りは圧巻。
絶対的な支配力さえ感じました。

これを見ていて連想するのがエイフマンの「チャイコフスキー」。
この作品では「白鳥」の王子はチャイコフスキーのはかない夢、幻想、あこがれの象徴として登場します。
このエイフマン版の王子はまさにチャイコフスキーの切ない人生、満たされない思いの象徴のように感じられてしまうのです。
考えてみればチャイコフスキーの男好きはいまや定説。
ヌレエフのこの解釈はかなりこの作品の作曲家の人生をついているのだなぁという気がしてなりません。

しかし解釈ひとつでいくらでも掘り下げることのできるこの「白鳥」。
例えばではママンをもっと掘り下げたらどうなるんだろう。
エイフマンの「チャイコフスキー」のパトロン夫人になるんでしょうね。

いやもう、本当に永遠の古典の名作としてこれだけ支持を得ている理由というのが何度見ても納得させられます。
コールドの美しさも絶対的ながら、バリエーションやアンサンブル、どれをとっても見ごたえがありますし、何より二幕の黒鳥とのグラン・パドドゥは本当に圧巻です。
なによりやはりチャイコフスキーのこの音楽。
情景からメイ・ポールのワルツという、たった最初の2曲でもう、「これでもか!」というくらいに引き込まれます。
クライマックスのような盛り上がりがイントロに来るうえに、最後までハイテンション・ロマンティックでぐいぐい引っ張ります。
いやもう、本当にこの人はすごい!
チャイコフスキーもバレエも好きな人間にとっては、彼の音楽がナマで聞ける上、踊りも見れてしまうのだから本当にたまりません。

そしてオペラ座。
コールドが見事です。
草木染のような渋淡い衣装が上品で、かえって品格を感じさせてくれます。
ただ今日の公演は主演のエトワールが捻挫で急遽プルミエールのお嬢さんに変更されていました。
妙に気合の入ったオデットだと思ったらそういうわけだったんですね。
でも幕間にちゃんと芸術監督が出てきて「……というわけで今日は主役が代わっています」と挨拶するところは、さすがオペラ座です。

でも今日はなにやらやたらと舞台がキュッキュと音を立ててて耳障りでした。
小さい白鳥が1羽コケてるし、ロシアの兵隊さんももつれて転んでました。
そういや欠場のエトワールも捻挫とか。
東京文化劇場、シアターのメンテナンスしているんですかね。
大丈夫なんでしょうか?
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by kababon_s | 2006-04-24 23:18 | Ballet