新国立劇場バレエ団Dance to the Future「Third Steps」:「発表会」から「ミニ公演」へ

1月16日、18日に新国立劇場バレエ団Dance to the Future「Third Steps」を見てきました。
新国立劇場バレエ団の振り付けグループによる創作作品の発表で踊るのは団員だち。
前芸術監督のビントレーさんの発案によるもので、いわばビントレーさんの遺産ともいえるプロジェクトです。

そのプロジェクトも今年で3回目。
1回目は平日1日のみだったのが、2回目は2日間、3回目の今回は3日間と、小劇場ながら着実に日数が増えています。
そしてほぼ満席でした。

内容は厳選7作品と招待作として監修も務めた平山素子さんの1作品。
そしてそれぞれに振り付け者の「こころ」「気持ち」「想い」が伝わってくるような内容で、作品によっては非常に琴線にふれ、目頭が熱くなるようなものもありました。
振り付け者の思いがダンサーというフィルターを通って観衆の前に形として現れたような感じで、これは前回の「発表会」とは大きく違う点かと。

総じて濃かったですし、ミニガラ公演のように楽しめました。
これもやはり前回と大きく違う点です。
ダンサーは振り付け家のご指名なのか、本公演とは違う組み合わせも見られ、またダンサーさん同士のつながりも垣間見えるようで、そのあたりも含めていろいろ楽しかったですね。

とはいえ、もちろん間に挟まれた、平山素子さんが初めて振り付けた作品との差の大きさには驚きを隠せませんし、プログラム構成のどSっぷりというか、必死にStepを上がってきた仔獅子達を、谷底に突き落とすとすような印象も受けますが、でもおそらくこのプロジェクトは将来舞台に上げる作品を作るためのものでしょうし、これもまたプロの道、表現、芸への飽くなき追求でしょうか。
厳しいです。

そして、でもやはり、今回作品を発表した7人の振り付け家の卵達には、拍手を送りたい。
来年は中劇場にランクアップしますが、ぜひ続けていただきたいプロジェクトです。
それも何の制約もなく、テーマもダンサーの選択もなにもかも、自由に。
創作/創造の芽と意欲を摘み取ることがないように(と一抹の不安とともに言っておく)。

以下すべての作品の感想を。
( )内は振り付け者/音楽、敬称略。

●はなわらう
(宝満直也/高木正勝「Rama」)

2回見て、2回とも泣けた。
なんでしょう、人に勇気と励ましを与える作品というのでしょうか。
米沢唯ちゃんと福岡雄大君、そして6人の女性ダンサーの踊るこの作品は、優しい、白と桃色の色合いの中でまっすぐで素直で優しさと希望と、最終日には力強いエネルギーさえ感じられました。

でも色合いはシンプル。
どんなにカラー絵図を想像しても、色彩は白と桃色といった淡い単色にしかならない。
形のないエネルギー、形になる前の、生まれ出るまえのエネルギー?
ピュアです…。

冒頭で福岡君の後ろからひょっこり顔を出す唯ちゃんのいたずらっぽい笑顔の眩しいこと!
米沢・福岡ペアはこれまでいくつもの公演を見てきましたが、今回初めてちゃんとカップルに見えます。
どういう吸引力が働いたんだろう。

2人の周りを舞う6人の女性ダンサー達は花びらのよう。
花が命を終えたかのように一瞬力尽き、でもそれをたくましい大地の精のような雄大君がふっとささえ、花はまた命を取り戻す。

無限の輪廻、いのちの、大地の、無限の営みと人の思いでしょうか。
輪になってくるくる舞う花びらが可憐で、でも永遠です。
喜びです。
これもまた大地の、大地よりもっと広く無限の…何だろう、空間でもない、時空、スペースでもない、やはりなにもかもを織り交ぜた「いのち」の讃歌かもしれません。

いとおしいです。
言葉による表現が太刀打ちできない印象は久々(^_^;)

音楽といい、こういう作風は日本人的かもしれません。
そして宝満君は振り付けることが彼の「ことば」なのかもですね。
作らずにはいられない人なんじゃなかろうか。
宝満君独自の作風かもです。
春の研修所の発表会でも宝満作品が上演されるそうですが、興味津々。

●水面の月
(広瀬碧/久石譲「6番目の月」)

ポワントを履いた、広瀬さんと川口藍さんによる女性2人の踊り。
月の光と陰、でしょうか。
前回気恥ずかしいほどにどストレートな内面表現の作品を作ってきた広瀬さんですが、今回は詩的なオブラートにくるみ、また一歩Stepを上がったんだなぁという印象でした。
時折音楽とシンクロするポワントの動きが心地よさも感じます。
「これが広瀬だ」という表現までもう少し、と言うところでしょうか。

●Chacona
(貝川鐵夫/バッハ「シャコンヌ」)

1回目から評価の高い貝川さんですが、また見応えのある作品でした。
曲はバッハのシャコンヌ。
これまでもクラシックを使ってきましたが、普段相当聴いているのでしょうか。

踊りは女性1人(堀口さん)に男性3人(輪島さん・田中俊太朗君・奥村君)。
衣装は昨シーズンに一線を退かれて登録ダンサーになっている千歳美香子さん。
ストイックななかに物語や心の動きや、時折エロティックなものまでにじみでてくるようでした。

また貝川さんの作品はそのとき選ぶダンサーさんの魅力が実によく出ます。
前回のフォリアも雄大君の力強さや絢子さんの堅実なエレガントさがよくでていましたけど、今回も堀口さんの身体の美しさ、輪島さんの逞しさと地に足の付いた地道な力強さに目を惹かれます。
特にダウンライトが当たると輪島さんのきれいな筋肉の陰影がくっきりでて、光る汗共々非常にウツクシイ!
ドキドキします(//∇//)
輪島・田中・奥村の男性3人が順にマッチョ>細マッチョ>華奢という配列も面白かった。

男女のペア、男性同士のペア、あるいは3人、4人と入れ替わりながら、しかも今回は上への空間も使った立体的な動きも印象的でした。

貝川作品はいよいよ来シーズン、本公演で上演されますが、こうして世に出る作品が次々生まれてほしいなぁと思います。
というか、そういう公演をもっとやってくださいよ、公演数少なすぎだから。

●Revelation
(平山素子/「シンドラーのリスト」)

ザハロワも踊ったという平山さんの初の振り付け作。
これをど真ん中にぶち込んでくる辺りが、なんともどSな構成。
そしてまたこれがデビュー作だとすれば、平山素子ってどれだけすごいんだよ、と言わざるを得ないです。

暗闇に椅子1脚と女性1人の苦の内面を振り絞るような作品で、今回は小野さん(16日)、本島さん(18日)が踊りました。
どちらも圧巻でそれぞれの色がよく出ていたんですが、小野さんは新たな一面を見た、というのでしょうか。
こんな踊りも、激情を絞り出すような踊りもできるのか。

本島さんがまた素晴らしい…というより、ただただ圧倒されました。
踊る女優・本島美和。

女としての色気に持ち前の美しさ、さらに蓄積された人生経験の厚さ・重さも感じられて鬼気迫る者があります。
平山素子×本島美和による世界。
これが「作品」であり「舞台」か…。

●The Lost Two in Desert
(高橋一樹/グレゴリー・プリヴァ「Retournelle」)

男女ペアの踊りで、踊ったのは振付者の高橋君と盆子原美奈さん。
盆子原さんは普段コールドにいるので、まじまじと見るのはおそらく初めてですが、バレエダンサーさんですから細くてキレイなんですが、でもふくよかで健康的なプチお色気が漂う独特のタイプですね。

作品はペアが変わると雰囲気ががらっと変わりそうなおもしろさがある。
盆子原さん&高橋ペアは健康的で、そのままフィギュアスケートのリンクにいてもおかしくない、アスリート的な味わいで、その無色さ加減がデフォルトといえるかも。

これがそれこそ絢子&雄大ペアだったらキレッキレの鋭さと持ち前のムードが出てきそうだし、五月女&(例えば)福田君のようなバリバリのコンテスタイルだったらまた全然色が変わりそうです。

また音楽的に一番ツボったのがこの作品。
マルティニーク島生まれのジャズ・ピアニストで、グルーシン兄弟を思わせる、空気の間を流れていくようなピアノは非常に好みです。
思わずCDを買ってしまったのですが、マルティニーク島で1902年に町を壊滅させた火山噴火の、唯一の生き残った囚人(牢にいて助かった)の伝説を元にしているCDの1曲だそう。
こういう音楽の趣味、センスが見えるところもまた面白いです。

●Andante behind closed curtain
(マイレン・トレウバエフ/ダン・クレアリー「Andante in steel」)

マイレンによる湯川さんのソロで、一番インパクトがありました。
清濁も美も醜もなにもかもを表現することができる湯川さんというダンサーのすごさが表現されている。

湯川さんの、同時にマイレンのバレエ人生というのでしょうか。
愛情や苦しみ、やるせなさ、悲哀、歓喜や絶望、怨念までもうすべてがこもって胸に迫り、こみあげてくる。
これを見ただけで、この公演に行ってよかったと思えるほどです。
そしてマイレンと湯川さんの絆、苦楽をともにして歩んできた2人のバレエ人生と信頼関係、友情等々の思いが伝わってきて嗚咽レベルの感動でした。

万雷の拍手の中で現れる湯川さん。
衣装は黒いジゼルのよう。
舞台には椅子が一つ。
踊りながら客席を見据えるような湯川さんの目は、芸一途のアーティストの真摯な強烈な眼差し。
なんだか怨念籠っています。
でも籠るんだろう。
籠るでしょう。
魂ですから。

片足のポワントを脱ぎ、首に巻きつけ去っていく振りは強烈なインパクト。
芸術を追求する、バレエの道は華やかなライトと歓喜とともにいかに修羅の道であったか…。
それでもその道を歩み続けてきた情熱に、心から敬意を表したいと思います。

●Phases
(福田圭吾/スティーブ・ライヒ「New York Counterpoint:Fast」、バッハ&グノー「アヴェ・マリア」)

コンテンポラリーらしいスピード感溢れる踊りならこの人、という色がすでにある福田君の作品。
「福田組」とも言ってもいいような、丸尾、五月女等々コンテの得意(であろう)人たちがダンサーに名を連ねています。

今回は2つの音楽の融合をテーマに据えたのでしょうか。
アヴェ・マリアのパートは寺田&菅野ですが、寺田さんはもとより菅野さんが古典とは違ういい魅力で、一瞬菅野さんとわからなかったほど。
菅野さんの新しい一面が見えてこれもこの公演の面白さのひとつです。
つーか、やっぱり福田君だと寺田さんの魅力がよく出るわ(笑)

音楽の融合はとても自然で、よくあるブツ切りのつなぎ合わせでなく、うまくいっていたと思うのですが、なぜそれをやりたかったんだろう…??

とはいえ、普段ギュルギュル踊る福田君ゆえ、そういう人が振り付けるとダンサーにも非常にスピーディーなものが求められるんだなぁと、しみじみ。
パリオペのヌレエフの運動会みたいな振り付けもヌレエフは自然に普通にやっちゃうからそうなるんでしょうが、やはり振り付けって振り付け者のテクニックが出るんだなぁ。

●Dancer Concerto
(小口邦明/ブラームス「ピアノ協奏曲第2番Op.38第2楽章」)

「こうくるかー!」とびっくりのシンフォニック・バレエ。
目指すところはバランシンかショルツか、衣装の感じからしたらやはりバランシンでしょうか。
ブラームスに乗っての男女4人ずつ、8人の群舞です。

小劇場なので若干満員御礼的な、スペースの問題もありましたが、それにしたってこういう作品に挑んでくる小口君の意欲にはまず、拍手です。
個人的にはこういうシンフォニック・バレエは大好きで、しかも(濃ゆめの)イケメン小口君は昨今どうしても気になるダンサーさんなので、心の中で大ブラヴォーでした。
踊り的にも代わる代わる真ん中で踊る流れは実に自然ですし、よく音楽に乗っています。
何より特に男の子達――小口君、(パーマでイメチェンの)林田君、小柴君、原君共々、実によく踊る。
気になる若手揃い踏みで眼福至福(*^▽^*)

女性陣のなかでも細田さんははやり美しく、独特のオーラがぐんぐん育っていますね。
細田&林田ペアや小口君の主演なんてぜひ見たいものです。
ずっと後ろで頑張ってきた生え抜きのダンサーさん達の主演は、長年応援してきたファンの喜びでもあります。
「俺たちだって踊れます!!」というアピールも伝わってくるようで、がんばれ!と大いにエールを送りたくもなりました。
がんがれ!
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by kababon_s | 2015-01-25 23:30 | 新国立劇場バレエ