ギエム「HOPE JAPAN」:日本人のための「ボレロ」を生で見られる、おそらく最後の機会

福島でギエムが踊るというニュースが飛び込んできた。
「HOPE JAPAN」で…!?
なんということだ…! 大丈夫なのか…!?
てか、いいのか??
いいんですか、ギエム!? 本当に!?

公演の目玉は2005年以来「もう踊らない」と封印していた、ベジャールの「ボレロ」。
日本のツアーために、日本人のためだけに、今回封印を解いて踊るという。

ツアーはこの10月19日の東京を皮切りに、愛知、兵庫、富山、倉敷、広島、福岡に加え、岩手、そして福島で行われます。

人の趣味はそれぞれですけど、今回ばかりは、出来るだけ多くの人に見てもらいたいと心底思うので、言います。

「バレエ見てみたいかも」
「ボレロはおもしろそう」
「(ボレロは)機会があれば見てみたかった」

ちょっとでもそう思ってた方、絶好の機会ですから、ぜひ会場に足をお運びください。
彼女の思いに、日本人として拍手を送ってあげてください。
一生ものの、永遠の思い出になる「ボレロ」が見られるはずです。


  ×   ×   ×   ×    ×


でもバレエファン以外には「ギエムって誰よ?」ですよね。

なもんで、バレエ好きの人には釈迦に説法ですし、私が語るのもおこがましいけど、敢えて「ギエムって誰」から説明しますと。

シルヴィ・ギエムはパリ・オペラ座バレエ団の元エトワール。
現在世界各地のバレエ団でゲストとして踊るほか、現代バレエ作品など幅広いジャンルで、ダンサーとして世界を飛び回る、バレエ界ではもう押しも押されぬカリスマダンサーです。

a0024385_18621.jpg(←)ロレックスの「シックス・オクロック」という広告を見た方もいるんじゃないかと思いますが、彼女がギエムであります。

彼女がスゴイのはその実力やカリスマ性もさることながら、この「シックス・オクロック」に象徴される180度開脚で、バレエ界の美的感覚に革命を起こしたことなんです。

つまりギエムが出てくるまで、バレエ界では180度開脚…というか足を高々と上げることは「お下品」であり、禁じ手だったのですが、それを「美しいもの」として、ガラリと変えてしまったのがギエムなのであります。
もちろん昔ながらのポーズも上品でキレイだが、今や足を高々と上げるのは当り前なんですよ。

一人の人間の存在が、世界の美的感覚を根底から変えてしまったということが、どれだけ凄まじい力であるか。

「シルヴィ・ギエム」という存在が、世界を変える力を持つ人なのであります。

そのギエムが、日本に心を寄せ、今回、おそらく周囲の「やめとけ」忠告も散々あったろうに、それでも福島でも踊るという…!

これがどれだけ日本にとってすごいことであり、ありがたいことであるか…!

そもそも震災が起こった3.11からすぐに彼女は「HOPE JAPAN」として発起人の一人となり、パリのシャンゼリゼ劇場でチャリティー公演を行ってくれました。
ケンゾーがポスターを描き、名だたるアーティストが名を連ねたこの公演はBSでも放送されたから、見た人もいるんじゃないかと思います。
ギエム本人のオフィシャル・サイトのTOPは「HOPE JAPAN」のポスターです。

あの原発事故以来、海外アーティストの来日キャンセルはいまだに続いています。
ル・リッシュもオーレリーも来ない。
ドイツ系の公演はバレエもオペラもクラッシックも含め、軒並み壊滅状態と言われています。
ルグリ様の公演も中止の危機に追い込まれたのは記憶に新しいところ。
ついまたザハロワにヴヴァーロフのキャンセルも発表され、ボローニャ歌劇場の出演者もキャンセルが相次いでいる状態です。
ノイマイヤーバレエ団の振付指導者も来なくなり、来春に予定されていた東京バレエの新作公演もキャンセルになってしまいました。


でも仕方がないのです。

ダンサーやオペラ歌手は身体が資本であり、宝だもの。
無理に来てくれなんて言えないし、むしろ「来なくていいから…! 気持ちだけで十分だから…!」と切なく思うこともある。
そういう現実は重々わかっているところに、「外タレのバレエ見たかったら日本人が欧州に来い!私は帰りたくないから!」というようなことを平気で言う、欧州在住の日本人ダンサーだって、正直いるんです。

そんな状態のなかで、「本人の強い意思で」福島公演まで実現させたギエムには、もうどれだけ感謝すればいいのか。
涙止まらんよ…・゚・(つД`)・゚・
どうしてそこまでしてくれるんだ、ギエム、あなたって人は……!

「私は日本と、日本の人々を本当に長い間愛してきましたし、今や私自身を少し日本人の一員のように感じている」

また「ボレロ」解禁に寄せても、こんなメッセージが掲載されていました。

「日本を心から愛していたベジャールの魂を日本へ連れてくるためです。
もし彼がまだ生きていたら、必ず日本のために何か行動したでしょうから…」


これほどまでに日本に心を寄せて、そして実際に行動してくれる人がいるということが、本当にありがたいし泣けてくる。

と、同時にやはり「身体が資本のダンサー」ゆえに、正直私は恐ろしくも切なく、しかし何としても彼女のまっすぐな思いに、バレエ好きの一人として、やはり応えたいと思うのです。

彼女のこの思いに報いることはただ一つ、公演に行くことだけなんです。
(そして、ささやかながら自主広報も)

もちろん私は東京分はAプロBプロ両方見るよ。
チャリティーの皮切り公演だって、行きますよ。
お金と時間がウハウハあるなら地方公演だって行って、そして一つでも席を埋めたいですよ、ホントに…!。
でも悲しいかな、それは地方巡業は残念ながら、無理。

「ボレロ」だって、おそらくギエムが踊るものを生で、それも日本で見られるのは、おそらく、最後の機会です。

ついでに言えば、ベジャールのあの有名な「ボレロ」は、誰でも踊れるものではないのです。
「ボレロ」はモーリス・ベジャール・バレエ団(BBL)が許可したバレエ団しか踊ることができず、さらに真ん中の赤いテーブルで踊る「メロディ」と呼ばれる役は、BBLが指名したダンサーしか踊れない。
つまり世界広しといえど、「ボレロ」を踊れるバレエ団は限られ、また「メロディ」を踊る人もバレエ界の中にはほんのわずかしかいないのです。

そして東京バレエ団は「ボレロ」を踊ることを許されたバレエ団のひとつであり、ギエムは「メロディ」を踊ることを許された、希少なダンサーです。
「ボレロならギエム」と言われた彼女がボレロを封印したのは、あまりに「ギエムのボレロ」「ボレロならギエム」が有名になりすぎてしまったのもあったでしょう。

そんな彼女が、「日本のために」「封印を解いて」「わざわざ踊る」。

これが素晴らしくないはずない。
私はギエムをはじめ、ボレロは数種見ていますが、やはり彼女のボレロは彼女だけのもの。
女神様のように神々しく、またしなやかで力強くもあり…と、何度見ても新たな感動があります。

ボレロ以外のプログラムも、例えば「白の組曲」なんかパリ・オペラ座で踊られている顔見世全員登場用のプログラムですが、全員白のコスチュームで、短いヴァリエーションがいくつも続く、華麗で楽しい作品です。

そのほかギエムのための作品、東京バレエの日本人ダンサーのためにベジャールが作った作品もあります(地域によって内容が違うようですが)。
でも、仮に「ボレロ」だけしかわからなくても、それだけで十分に、価値はあります、ええ。
お勧めです、ホントに。

地方公演の情報はこちら。
http://www.nbs.or.jp/blog/news/contents/topmenu/hope-japan-tour.html
●11月3日(木・祝) 愛知県芸術劇場
●11月5日(土) 兵庫県立芸術文化センター
●11月7日(月) オーバードホール(富山)
●11月9日(水) 倉敷市民会館
●11月11日(金) 広島市文化交流会館
●11月13日(日) 福岡サンパレス

岩手特別公演の情報はこちら。
http://www.nbs.or.jp/blog/news/contents/topmenu/hope-japan-tour-1.html
●10月31日(月) 岩手県民会館大ホール

福島特別公演の情報はこちら。
http://www.nbs.or.jp/blog/news/contents/topmenu/hope-japan-tour-2.html
●11月1日(火) いわき芸術文化交流館アリオス 中劇場


東京皮切り特別公演の概要はこちら
http://www.nbs.or.jp/blog/news/contents/topmenu/hope-japan.html
●10月19日(水) 東京文化会館

シルヴィ・ギエム・オンステージ(東京)
http://www.nbs.or.jp/stages/1110_guillem/index.html

すごいです、東京皮切り公演は(ただ値段も高い(泣笑))。
英国ロイヤルのダウエルはじめ、ルグリ様がウィーンから駆けつけてくれ、和太鼓、和楽器、日舞のコラボに、声楽の藤村実穂子さんまで来てくれます。
ルグリ様は本当に日本の友達だった…!(感涙)
藤村さんは今年5月にケント・ナガノが青学オケを振った時にも2泊4日で本拠地ドイツから駆けつけてくれた方。
また来てくれるのかと思うと、これも泣けます…!

とにかく。
もう日本では満足のいく外タレ公演が見られなくなりそうだと思っていただけに、ギエムのような人がいてくれる、ということは素直にうれしい。
本当に、できるだけたくさんの人に見てもらいたいと、今回ばかりは心底思います。
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by kababon_s | 2011-09-02 23:06 | Ballet