カナダ・ケベック(2):ケベック料理とはカナダの伝統料理にて

「どうせ太るんなら、納得いくもの食べて太る方がイイ!」
…という誠にごもっともな、同行のお嬢さんの一声で出かけて行ったのが「ケベック料理」の店でした。
いわゆる「伝統的なカナダ料理」を挙げるなら、この「ケベック料理」になるのではないでしょうか。

行ったお店はケベックシティの旧市街の中にある、ケベック料理専門店「オ・アンシャン・カナディアン(Aux Anciens Canadien)」
(正確に発音すると「オ・ザンシャン・カナヂアン」)
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建物自体が17世紀の入植当時の民家を塗り直し、少しばかり拡張したという、実は北米でも最古の部類に入る歴史的建物。
値段はディナーで大体C$50(約5000円弱)。
美味しいし、「ケベック料理とは何か」を体験するうえでは、お勧めのお店の一つです。

で、その「ケベック料理」とはなんぞやというと、一口で言えば狩猟料理。
ウサギ、イノシシ、キジ、野鴨や鹿、そしてバイソン(笑)を煮込んだシチューやミートボール、これらのひき肉を詰めたミートパイですね。
それから煮込んだ豚足。
これらに豚バラ肉またはベーコンにラード、コマ切れ野菜をメープルシロップを加えて煮込んだベイクド・ビーンズや豚の塩漬け、茹でたジャガイモなんかが付け合わせで出てきます。

単品もあるんですが、今回頼んだのは「ケベック料理・お試し盛り合わせ」!
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メニューには「Assiette du degustation quebecoise/Quebec Taseting Platter」とあります。
これで2人分と言われましたが、日本人の胃袋なら3人でも十分シェアできますよ。
「サン・ジャン湖地方のジビエのミートパイ(Tourtière du Lac St-Jean au gibiers/Lac St-Jean meat pie made with wild meat)」にはバイソンの挽肉が使われていましたが、臭みもなく、濃厚なビーフパイを食べているような感じでした。
かなり上品に、今風の味付けにしてあるとは思いますが、まったく当時の味だとかなり臭みが強いと思います。

で、狩猟料理。
カッコ良く言えばジビエなんですが、平たく言えば開拓時に、家の周辺をうろうろしていた動物たちを狩って食べた、というものですね。

実際、店内には開拓時に使っていた鍋釜や食器とともに、鉄砲なんかが飾られているんですが、料理共々眺めていると、当時の狩猟生活が伺えるような気がしてきます。

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と同時に17世紀当時の、おそらく故国フランスとは全く異なる過酷な大自然の中で、大地を開拓しながら、それでも土地の材料で故郷の家庭料理を作ろうと努力したんだなぁ。
なんだか当時の苦労を思うと、ホントに涙ぐましい思いです。

「入植範囲や戦争侵略範囲の広さは、その国の食文化と大いに関係がある」というようなことを書かれていたのは、ロシア語通訳者であった故・米原万里氏の『旅行者の朝食』だったと思うのですが。
そこでは「食にこだわらない国ほど植民地を拡大し、戦争でどんどん領土を広げて行けた」というようなことが語られていました。
なるほど、英国が北米大陸、インド、東南アジア、中国と植民地を拡大して行けたのもさもありなん、と妙に納得したのですが(笑)

その食へのこだわりが反映されたかどうかはともかく、英仏が覇権を争った北米での植民地戦争もフランスの大敗に終わり、1763年のパリ条約でフランスは北米の植民地から撤退することになりました。
その時の王・ルイ15世は、北米に入植したフランス人と現地で生まれたフランス系の人々約6万人も、土地共々英国に割譲してしまいます。
現代なら、人民だけは政府の飛行機で迎えに行かなきゃ人権問題になるところですが、当時はそんな感覚など、当然ありません。
もちろん逃げられる人はフランスに帰ったでしょうが、すでに100年近く住みついたフランス人庶民やその子孫は逃げることもできないし、またすでに新大陸の「ヌーベル・フランス/新フランス」が故郷でもあったわけです。

これが結果的に「残されたフランス人」の、北米における独特な文化圏を生むこととなるわけですが、この点はまた後ほど。
引っ張りまくりで恐縮ですが、ホント語り始めると長いんですよね、この件は(^_^;)

話がちょい逸れましたが、結局、料理という分野では、食にこだわるフランス文化を引き継ぐ「ケベック料理」が、いわゆる「カナダの伝統料理」として残るわけです。
ついでに言えば、カナダ土産人気ナンバーワンのメープルシロップも、7割はケベック州産です。

とはいえ、現在ではケベックの食もすっかりアメリカ化されており、「いかにもアメリカ」といった風の、ボリュームばっかりのとんでもないハンバーガーやサンドイッチ、ステーキなども一般的な料理として、普通に出てきます。
もちろん一般家庭では、今でもベイクド・ビーンズなどは作られていますけど。

ちなみに「オ・アンシャン・カナディアン」、ランチをやっている時もありますが、不定期にディナーのみになったりしますので、時間は確認した方がいいかもしれません。
夏のピークシーズンは要予約です。
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by kababon_s | 2011-05-22 23:18 | Travel/City