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英国バーミンガム・ロイヤル・バレエ「眠れる森の美女」:リュリとルイ王朝

英国バーミンガムの「眠れる森の美女」。
ロホ&マッケイです。
やはりこの時期だから思ってしまいます。
「来てくれてありがとう~!!」

このバレエがプティパ&チャイコフスキーによる「ルイ14時代のフランス・バレエへの、そして宮廷音楽家リュリへのオマージュという意味もある」と知ったのはインターネットラジオのクラッシック番組「OTTAVA」ででした。

そうかー!
ルイ王朝ならば、ローズアダージョで銃士スタイルの求婚者が出てきたって全然おかしくないし、むしろ自然じゃないか~!と思い、今回は音楽もフランス宮廷絵巻へのオマージュテイストも楽しむつもりで、結構楽しみにしておりました。
しかもロホだし。
ロホは何回か立て続けに出張でチケットを処分したので、今回は間に合ってよかったなぁ。

で、英国バーミンガムのラ・ベル。
ピーター・ライト版は初見ですが、他との大きな違いは、リラの精が踊り無しのマイム役であることです。
またカラボスは本当にキレイな女性の、これもマイム役。
白のリラの精VS黒のカラボス、という対称性をがっちり出してます。
いやあ、二人とも存在感ある。
というか、上手いということですね、マイムが。
カラボスは男性が演じる醜い魔女、というのはもうあまりないのかな?

舞台はプロローグからもう豪華絢爛。
金と黒をベースにしたどっしりとした衣裳&舞台が宮廷的高級感たっぷりといいますか。
フランス…というよりは英国チューダーチックのような気がしないでもないですが、でもこの重たい色合いが醸す華やかさは、さすがロイヤルの国と言いますか。
見ていて落ち着きます。
プロローグというよりは、もう完全に「第一幕」というくらい濃厚。
これだけでもう華々しい宮廷絵巻です。

1幕のオーロラの誕生日と2幕の王子登場→オーロラの目覚めが、休憩なしでぶっ続け。
今回のローズアダージョは銃士スタイルかな??と思いきや、王子たちのかつらがモーツァアルトだ(笑)
むー、時代はルイ14世というよりは、アントワネット様か??

でも今日はロホは絶好調のよう。
上品でたおやかで、ぐぐっと抑えたなかにちらちら見え隠れする、彼女らしいラテンの情熱…というのでしょうか。
とにかくお話しもとっても大事にしていて、オーロラの清楚な可愛らしいヲトメゴコロ~♪が良く伝わってきて、もうカワイイ~!!

ローズ・アダージョは超スローテンポでがっつり見せてくれました。
あの立派なおみ足、微動だにしない。
ぶらぼー!
いやああ~、見応えあるローズ・アダージョであったのことよ!

2幕の王子は100年後ゆえに、乗馬服の女性…そうか、アントワネット様の時代に100年足すと、大体シシィの時代になるわけだ。
日本で言うと、サムライの時代から一気に明治の洋装時代って感じでしょうか。

森の奥に迷い込んでいく王子の演出が、なんか臨場感があって素敵です。
ピーター・ライト版は王子のキスで目覚めた後に、オーロラと王子のパ・ド・ドゥが入ってくるんですね。
これはまた余韻があっていい感じです。

3幕はシシィ時代の結婚式かと思いきや、アントワネット様の時代に逆戻り。
いや、時系列云々よりも、これが「ルイ王朝時代へのオマージュ」なわけだ!
色合いが今度は一気に桃色&白系になり、豪華絢爛ベルサイユ、といった雰囲気です。

またライト版は、宝石の代わりに男女2人ずつによるパ・ド・カトル。
これもこれでいい感じです。
女性の衣裳、スモークがかったブルーのチュチュの裏側…というか中側が黒というのが、おしゃれでステキでした。

童話は猫と青い鳥と赤ずきん。
なんかふと、木村和夫さんのフォーチュン王子が見たいなぁ、なんて思ったりして(^_^;)

三幕のグラン・パ・ド・ドゥ、これは大好きだ(#^.^#)
とにかく楽しくてシアワセだ。
マッケイ、指先からつま先までピシっと筋の通ったキリリとした動きで、ハリがあって丁寧で素敵です。
すごく感じがイイ。

ロホも誕生日の時の「ウレシハズカシドーシマショ」というオーロラから一転して、「この人!」に巡り合った、でも少女の香りを残しながらの女性の踊り。
いやあ堪能しました。

最後の曲「アポテオーズ」が、まさにチャイコフスキーがリュリに捧げたという、ルイ王朝時代のオマージュと言える最たるものなのだとか。
このアポテオーズに乗って、この豪華絢爛宮廷絵巻の宴会バレエも幕を閉じるわけです。
金の紙吹雪の中でのグランド・フィナーレ。

世界で初めてバレエ学校を創設したルイ14世。
自分の趣味とはいえ、ここからバレエ文化が始まったと考えると、このプティパ&チャイコフスキーの仕事は、実に奥深いものがあるなぁと思えます。
てか、このバレエもホントに奥が深い。
短縮版もいろいろ出ている昨今ですが、がっつりぎっしり詰まった全幕、というのはこれはこれで見応えがある。
長い長い、と思いながらも、ついつい見に行ってしまう所以でしょうか。

英国バーミンガム、次は吉田都さんの「真夏の夜の夢」と「ダフニスとクロエ」です。

by kababon_s | 2011-05-21 23:47 | Ballet